台頭する格安スマホ、災害時に弱点。警報音鳴らず

回線混雑時にMVNOだけがつながりにくくなる

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 スマートフォンは災害時に家族と連絡を取ったり、防災情報を得たりするライフラインになる。ただ格安スマホは大手キャリアの回線を借りて提供するため、大手キャリアの基地局が災害で停止し通信障害が起きれば同様の障害が発生する。さらに格安スマホは、災害時の影響について特有のリスクも抱えている。

 2016年6月、インターネットイニシアティブ(IIJ)は格安スマホ向け端末(SIMフリー端末)について、自治体が災害時に発信する「防災緊急速報」に反応するか実験した。シミュレーターを使って緊急速報の疑似信号を11機種に送ったが、その結果に愕然(がくぜん)とした。「警報音が正常に鳴動したのは、わずか1機種だった」(IIJ)―。

 防災緊急速報には気象庁の「緊急地震速報」と、台風・河川氾濫の情報などを含む「自治体防災情報」の2種類がある。緊急速報は基地局から電波が届く範囲のスマホに一斉に情報を送り、スマホの契約がキャリアでも仮想移動体通信事業者(MVNO)でも関係なく届く。ただ、その情報を受けたスマホは端末の機能によって反応しないケースがある。

 IIJの実験では緊急地震速報で多くのSIMフリー端末が鳴動したものの、自治体防災情報にはほとんど反応しなかった。この理由についてIIJの堂前清隆技術広報担当課長は「緊急地震速報は広く開示された国際規格に基づく信号情報が使われているが、自治体防災情報は大手キャリアがそれぞれ管理する独自の信号情報が使われているためだ」と説明する。
                 

 多くのSIMフリー端末メーカーは開示情報を基に緊急地震速報に対応する端末を提供しているが、自治体防災情報の信号情報は開示されておらず対応できていないという。

 また、災害時はMVNO特有のリスクもある。MVNOのデータ通信サービスはMVNO独自の設備を経由するため、キャリアの設備とMVNOの独自設備との接続回線が混雑した場合は、MVNOだけがつながりにくくなる。

 MVNOは接続回線の容量に応じてキャリアに利用料を支払うことから、格安スマホの低価格を維持するため、災害時などの急な通信量の増大に対応できる回線は確保できていないとみられる。

 さらにMVNOの独自設備とキャリアの設備の接続地点は「各社とも1―2カ所」(業界関係者)とされる。接続地点が1カ所の格安スマホは、その設備が停止した場合に全国でデータ通信できなくなる。

 格安スマホの利用料の安さに対し、災害時のリスクをどう捉えるかは利用者それぞれの判断だ。ただ災害時に初めてリスクが周知されるようでは、災害時に利用者の信用を一気に失いかねない。

 格安スマホは利用料の安さが注目され、市場で台頭している。ただ料金以外の特徴を含めて消費者の理解を進めなければ、大手キャリアが寡占するスマホ市場の変革者として、その存在を確立することはままならない。
(文=葭本隆太)

日刊工業新聞2017年4月19日

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

先日、フリーテルが「業界最速」表示を巡って消費者庁から景品表示法違反に当たるとして処分が下された。格安スマホ業者による同法違反は初めてだ。何ごとも急成長の裏には歪みが出てくるもの。淘汰への始まりだろう。

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