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星野リゾートの「脱デジタル滞在」を体験! 星のや軽井沢でデトックス(前編)

<記者レポート>強制的にPCやスマホと離れ、目と脳がクリアになる感覚を実感
星野リゾートの「脱デジタル滞在」を体験! 星のや軽井沢でデトックス(前編)

スマホとPCを預けてIT断ち

 MMD研究所が15~59歳の男女562人を対象に実施した「スマホ依存に関する調査」によると、約8割の人が「スマホ依存」を自覚していることが分かった。中でも「かなり依存している」と回答した割合が、28・5%と、現代人とスマホは切っても切れない関係にある。こうしたのPCやスマホを片時も離せない生活を送る現代人に向けて、ホテル大手の星野リゾートが提唱するのが、デジタル機器を預けて、豊かな自然で心身共にリフレッシュする「脱デジタル滞在」だ。一定期間、強制的にデジタル機器から離れる「デジタルデトックス」を「星のや軽井沢」で体験した。

 星のや軽井沢に到着するとまず、PCとスマホを預けることになる。新幹線の中でもメールをやり取りしていたPCとスマホは、専用のアタッシュケースに丁寧に入れられ、カギを自分で閉める。この「自らカギを閉める」という行為が大事で、カギを閉めた瞬間、デジタル機器との隔絶を実感できる。ここから本当の意味での「脱デジタル」が始まる。

 プログラムの最初は、視神経に関わる部位にアプローチする指圧マッサージ。PCやスマホを一日中使うと、姿勢が崩れ、目の疲れや頭痛を引き起こす。頭部を中心に全身を丁寧に施術することで、目の緊張を和らげ、姿勢の歪みを整える。指圧鍼灸師の舟田勝幸さんは「目の機能全般を調節し、目の力を高めるのが目的」と話す。舟田さんの施術は魔法のようで、自分の体が自分の体でないような不思議な感覚に陥る。同時に、目と脳がクリアになる感覚を実感する。

 部屋に戻ると、リビングのテーブルに香り袋とティーポットがいくつか置かれている。香り袋の中身は、白樺やウワミズザクラなど、星のや軽井沢の敷地内にある草木。視覚の次は、香りを聞く「聞香」で嗅覚を刺激する。「聞香」とは香木の匂いを嗅いで、どの香木かを当てる遊び。室町時代に京都で始まったものと言われている。

 脱デジタル滞在は「五感を研ぎ澄ます」ことが目的の一つ。星のや軽井沢では、聞香をベースにしたオリジナルの「軽井沢聞香」で嗅覚を研ぎ澄ます。京都の聞香と違うのは、香り袋の匂いを嗅ぎ、どの香り袋の草木から抽出したお茶かを、匂いや味から当てるという手法。白樺から抽出したお茶など飲んだことがなかったが、ハーブティーのような味で悪くはない。草木の匂いなど日頃意識したことがなかったが、それぞれ全く違って、新鮮な感覚を味わった。

 夕食はリゾート内の「嘉助」で信州の食材を生かした山の懐石を頂く。食事を待つ間、手持ちぶさたになると、ふとスマホを手に取りたくなる衝動にかられる。目の前のテーブルに座る男性は、眉間にしわを寄せてスマホをにらんでいる。昨日までの私もああだったのか-。手持ちぶさたではあるが、軽い開放感に浸れた。

 食事の後は、リゾートの中を散策する「夜の集落散歩」。星のや軽井沢は4万2000平方メートルの広大な土地に77の客室が点在し、敷地内の高低差は20メートルある。星のやではこの敷地一帯を「集落」と呼ぶ。照明が抑えられた集落で、聞香で香りを嗅いだ草木を実際に手に取りながら、ゆっくり歩く。集落内の「イチイの丘」で、寝転がって夜空を見上げると、静寂の中に虫の声だけが聞こえる。

 就寝前には、ストレッチしながら呼吸を整える「ゆるゆる深呼吸」。星のや軽井沢のオリジナルプログラムで、ゆっくりとした動きのストレッチをしながら、深く息を吸って吐く。この深く吸って吐くというのが、簡単なようでなかなかうまくいかず、知らず知らずのうちに、背中を丸めた姿勢で、呼吸が浅くなっていることに気づく。

 星のや軽井沢の客室にはそもそもテレビがない。広報の岩岡大輔さんは「五感を刺激し、リラックスしてもらうというがリゾートとしてのコンセプト。脱デジタル滞在プランはそれを際立たせたプログラム」と話す。贅沢な静寂の中で、スタッフが私のためにセレクトしてくれた本を読みながら、明日のトレッキングに備えて早めに就寝した。

 ※後編は6月6日に公開予定
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高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
滞在中、頭ではスマホとPCがないと分かっていても、ふと「あの単語を検索したい」「あの件はどうなったっけ」と無意識にデジタル機器を探す自分がいて、中毒というのはこういうことなんだと実感しました。こういう機会でもないと、デジタル機器を絶つというのは難しいと思うので、利用してみるのも手かなと思います。

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