ゴーン流ガバナンスは変わるのか!?ルノーの影響と幹部人事から透ける課題

他社から外国人引き抜き相次ぐ。仏政府の影響力が増し日産とルノーの利益相反は?

  • 0
  • 0
ゴーン社長はトヨタ系幹部だったシラチ氏について「確かな実績を持ち日産の各ブランドを強化する」とコメント
 「経営陣の国籍は多様だ。グローバル競争が激化し、競合企業からヘッドハントの的になっている。人材を確保し続けるには一定の報酬は必要」。23日の日産自動車の株主総会でまた聞かれるであろう。役員報酬の水準についての株主質問に対し社長兼最高経営責任者(CEO)カルロス・ゴーンが最近使う決まり文句だ。

 【成功体験】
 確かに日産の経営陣は国籍多様で日本企業のなかでの外国人登用は群を抜く。最高意思決定機関エグゼクティブコミッティー(EC)は10人中5人、取締役は9人中4人、執行役員は50人中20人が外国籍だ。提携先の仏ルノーからの派遣役員もいるが、海外採用から本社役員になったかまたは競合企業出身が多い。最近は高級ブランドのトップが米ゼネラル・モーターズに引き抜かれた後任に、BMW日本法人の元社長ローランド・クルーガーを迎え入れた。人材争奪戦の渦中にいることの証左だ。

 ゴーンがここまで多様性を重視するのは成功体験があるからだ。「リバイバルプランの成功は多様性があったから」(同)。危機下の日産にゴーンが送り込まれたのは16年前。中期計画「日産リバイバルプラン」を断行しV字回復を果たした。「新しい視点で改革を行う必要がありそれを実現できたのが多様性だ。外国人や若手でチームを作り改革を起こした」(同)と振り返る。

 【部下を尊重】
 多様性の文化は意思決定プロセスにも根付き「いつも会議は侃々諤々(かんかんがくがく)だ」(幹部)という。4月には初の女性専務執行役員として星野朝子が国内事業ナンバー2に就任。明朗快活な星野の昇格は意思決定プロセスを活性化しそうだ。

 ゴーンが根付かせた多様性に富む意思決定プロセスはゴーン自身も頼りにする。「他人の意見をよく聞き重要な判断を委ねることも多い」と別の幹部は話す。「コストカッター」との異名をつけられ世間的には独断的なイメージがあるが現実の行動はそれを払拭する。

 例えば新興国事業の戦略ブランド「ダットサン」投入を巡ってECで最終的な議論をした際ゴーンは不在だった。だが投入が決まると投入国へ自ら出向いて訴求している。部下が下した決断を尊重して率先する。

 ルノーCEOも兼務するゴーンはまかり間違えば両社のガバナンスを問題視されかねない。現にかつて危機下の日産をルノーが救済したが、今はルノーの業績が低迷し立場が逆転しているのに、資本関係が不均衡なままだとの指摘は多い。

 同幹部によれば「ルノーとの関係があるからこそ意思決定の透明性やガバナンスに特に気を遣っている」という。そんな気遣いが判断を委ねる姿勢につながっているようだ。

 【仏政府の影響力】
 そのルノーとの関係がゴーンの目下の悩みの種だろう。ルノー株主総会で仏政府の議決権が増えることになった。仏政府の影響力が増し、日産とのバランスが崩れかねないとゴーンは反対したが、かなわなかった。仏政府の動き次第では多様性を重んじるゴーン流ガバナンスに影響が出かねず動向が注目される。(敬称略)

 副社長に異例のトヨタ系幹部を招へい
 日産自動車は3日、トヨタモーターヨーロッパのシニア・バイス・プレジデント、ダニエル・シラチ氏(50)を副社長に迎え入れる人事を発表した。7月15日付。トヨタグループ幹部を日産本社の役員に迎え入れるのは珍しい。自動車業界の人材争奪戦が激化している。

 シラチ氏は、日産でグローバルマーケティング・セールスを統括する副社長に就任する。最高意思決定機関であるエグゼクティブ・コミッティー(EC)のメンバーも務める。93年に仏ルノーに入社。伊フィアットを経て、12年からトヨタモーターヨーロッパのシニア・バイス・プレジデントを務め、6月3日付で退職した。カルロス・ゴーン日産社長は「確かな実績を持つ自動車業界の優秀な幹部だ。日産の各ブランドを強化する」とのコメントを発表した。

 日刊工業新聞では現在、「ガバナンス改革・企業の選択」を連載中

日刊工業新聞2015年06月03日/04日1面&3面

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
執行役員 DX担当

基本的にゴーン氏がすべての決定権を持つ構造は16年前から何も変わらないし、蜜月だった外国人幹部も何人から離れたいった。それが「日産」の個性といえばそうれまでだが、ルノー、仏政府の関係は、株主や日本政府もシリアスに考えないといけない。

関連する記事はこちら

特集