ニュースイッチ

佐賀の田んぼに太陽光パネル!“米と発電の二毛作”

提唱者の福永博氏に聞く「国内水田の30%が設備を導入すれば国内発電量のおよそ2割を供給できる」
佐賀の田んぼに太陽光パネル!“米と発電の二毛作”

福永博建築研究所所長・福永博氏

 ―“米と発電の二毛作”とはユニークな発想ですね。
 「いかにして自前でエネルギーを生み出すかというのがこの本のテーマ。シルバーや農家がエネルギーを生み出す計画を提案している。米と発電の二毛作は一番独自性が強い。水田で米を作り、同時に太陽光発電をして売電する。水田に約3メートルの高さの足場を組んで、ワイヤを張り、空中にたくさんの太陽光パネルを設置する」

 「稲の生育は妨げない設計だ。試算では、国内の水田の30%がこの設備を導入すれば、国内発電量のおよそ2割を供給できる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の共同研究事業にも採択された。実際に佐賀市三瀬村の水田で遮光率などの実証実験を行っている。4月から毎週木曜日に現場公開も始めた」

 ―執筆のきっかけは何ですか。
 「子供の頃、『油の一滴は血の一滴』『軍艦や戦車も油がないと動かない』と、父からよく聞かされた。父は製油会社に勤めており、太平洋戦争中は、松の幹に傷を付けて“松根油”という油を集めて備蓄していた。父の話から私は、資源が乏しい日本で油がいかに重要かを考えさせられた。この頃からエネルギー問題について何か対策はないか、という思いをずっと抱いてきた」

 ―シルバータウンによるエネルギーづくりはどういうイメージですか。
 「シルバータウンによるエネルギーづくりは、福岡県甘木市に私が設計したシルバータウンで“互恵社会”を目指した街づくりが進行中だ。この街のコンセプトは『働・学・遊』。豊かな自然の中で暮らすアクティブシニア世代が農業や陶芸などの仕事に従事し収入を得て自立する暮らしを提唱した。これからの社会が必要とする福祉のモデルケースになると思う」

 ―エネルギーで自立して国を守ると書いています。
 「かつて日本が戦争をしなきゃいけなかった原因のひとつは油を止められたことにあった―というのが父の感想だった。エネルギーで自立することこそが争わない社会をつくることにつながると考えている」
 (文=勝谷聡)

 【プロフィル】
 福永博建築研究所所長・福永博(ふくなが・ひろし)氏
 1968年福岡大工学部建築学科卒。一級建築士。88、98年福岡市都市景観賞。95年福岡県建築文化大賞ほか多数受賞。福岡県出身。69歳。
 「米と発電の二毛作」(海鳥社刊)
日刊工業新聞2015年05月25日 books面「著者登場」より
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
「二毛作」という概念がユニークです。

編集部のおすすめ