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今年のDRCは日本から5チームが参戦!“第二のシャフト”は生まれるか?

米国防総省主催の原発・災害対応ロボット競技会が現地5日に開幕
 【米カリフォルニア州=昆梓紗】米国防総省高等研究計画局(DARPA)の原発・災害対応ロボット競技会「DARPAロボティクスチャレンジファイナル2015」が5日(日本時間6日)、米国・ポモナ(カリフォルニア州)で開幕する。25チーム中、日本からは5チームが参戦。世界の精鋭と競い合う。車の運転、不整地の歩行など八つの課題(タスク)で、人型ロボットの限界に挑む。結果は6日明らかになる。

 日本から参加の5チームのうち、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「災害対応ロボット研究開発」事業の支援を受けた3チームが出場する。

 東京大学の稲葉雅幸教授らのチーム「NEDO―JSK」は、13年のプレ大会で優勝した「シャフト」を輩出した研究室。高出力モーター駆動の人型ロボットで挑む。シャフトの技術を応用し、前回を超える活躍ができるか注目される。

 東大の中村仁彦教授らのチーム「NEDO―Hydra」は、電気油圧で全身を動かす世界初のロボットで参戦。「構成部品や制御回路、すべてゼロから作った」(中村教授)。手や足にかかる力を計測でき、工具をつかむ力やバルブを回す力を測りながら、繊細な動きができる。

 産業技術総合研究所から出場するチーム「AIST―NEDO」は10年以上の運用実績のある「HRP―2」を改良。産総研の金広文男ヒューマノイド研究グループ長によると「不整地の走破、階段は成功率が高い。工具の扱いや車の運転などは成功に向け調整している」という。

 他国の出場ロボットでは、米ボストン・ダイナミクスが開発した人型ロボット「アトラス」の改良版で7チームが参加。日本チームとアトラスとの対決も見どころだ。

 日本は1998年から08年までの10年間、巨費を投じ人型ロボット研究で世界をリードしてきた。しかし東日本大震災の際に、ロボットが十分活用できなかったこともあり、用途ごとに特化した専用機の開発にかじを切った。

 日本で研究が下火になっているところに米国が同競技会を立ち上げ、アトラスを参加チームに提供。世界に人型の技術基盤を売り込み始めている。

 競技会でアトラス型が上位を占めることになれば、人型ロボの技術基盤を握られることになりかねないという危惧が日本の開発者にはある。プレ大会で優勝した日本発のシャフトが、米グーグルに買収されたことも日本にとって衝撃だった。

 今回、NEDOは急きょ予算を確保し参戦を決めた。NEDOの弓取修二ロボット機械システム部長は「世界最高峰のチームがアトラスに慣れ親しんだ。次に日本はどんな手を打てるのか」と模索する。
 競技の行方は実用に耐えうるロボット開発の最前線を見るうえでも、目が離せない。
 
  <DARPAロボティクスチャレンジ(DRC)>
 自然災害や原子力災害発生時に、人間の代わりに対応するロボットを開発するプロジェクト。車を運転し、工具を使いこなすなどヒト型ロボットの開発を目指す。競技会形式をとり、世界中の研究者を巻き込んだ。優勝チームには賞金200万ドル(約2億5000万円)が贈られる。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
昆編集長が現地取材を敢行!ニュースイッチでも適時レポートをアップします。

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