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黄色い蓄電池が街のエネルギーをコントロール

14年春、街のスマートグリッドが稼働、柏の葉スマートシティ
黄色い蓄電池が街のエネルギーをコントロール

大型蓄電池

 東京・秋葉原から電車で30分ほどの距離にある「柏の葉キャンパス駅」。駅前にできた新しい街「柏の葉スマートシティ」(千葉県柏市)で5月中旬、国内最大のリチウムイオン蓄電池システムが稼働した。真新しいビル群に電力を送り、街全体の電力需要が一時的に増えても電力会社から供給を受ける電力を増やさない。これまでビルや工場など建物単位で運用してきたピークカットを大型蓄電池の活用で街全体に広げた。蓄電池で街にスマートグリッドを構築した初めての事例だ。

 柏の葉スマートシティは三井不動産が進める都市開発事業。店舗、マンション、オフィス棟が次々に稼働しており、2023年に全体が完成すると2万6000人が暮らす。設置した大型蓄電池には街にある太陽光発電がつくりすぎた場合にその電力を充電し、街全体の電力需給のバランスを保つことで系統を安定化させる役割もある。

 【非常用電源に】
 充電容量3800キロワット時はリチウムイオン電池としては国内最大。家庭380世帯が1日に使う電力をためられる規模で、災害時は非常用電源にもなる。
 蓄電池を供給した日立製作所には東日本大震災以降、自治体の避難所で非常電源となる小型蓄電池の引き合いが増えた。工場やビル向けにも増えているが、街全体の需給調整を担うスマートグリッド向けは初めて。蓄電池を製造した日立化成の椎木正敏Li事業推進部長は「都市開発や電力会社向けに中・大型が増えてくる」と確信する。

 すでに九州電力は長崎県の壱岐島と対馬、鹿児島県の種子島、奄美大島の4島に大型蓄電池によるスマートグリッドを構築した。いずれも風力や太陽光発電の出力が変わると瞬時に蓄電池の充電と放電を切り替え、電力系統の周波数の乱れを抑える。
 実証ではあるが実際の系統を使った本格的スマートグリッド。離島以外でも東芝が東北電力から世界最大級の蓄電池を受注し、普及段階に入った。

 【コスト課題】
 ただ、蓄電池の高コストが課題だ。蓄電池の容量でコストが決まるが、まだ最適な容量がわからず、手探りの状況だ。伊豆・小笠原諸島の離島への蓄電池導入を検討する東京電力は「再生エネの出力の半分」と見る。壱岐島では九州電力から委託を受けた三菱電機が出力変動を予測し、先回りして充放電を制御する実証に取り組む。制御法を確立できれば蓄電池の小容量化が可能という。
 
 コストを最小化できる容量がわかったとき、普及に勢いがつきそうだ。

※「スマートコミュニティJapan2015」が6月17日に開幕します(会場=東京ビッグサイト)。昨年の「スマートコミュニティJapan2014」で掲載したスマートコミュニティーの事例を随時紹介していきます。
日刊工業新聞2014年06月10日 1面
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
柏の葉スマートシティは電力融通が特徴です。平日の日中、オフィス地区はたくさんの電力を使い、隣の「ららぽーと柏の葉」(商業施設)は電力が余りがちです。そこで商業施設からオフィス地区へと電力を送って街全体として電力を使いすぎないようにします。蓄電池も電力の需給調整で活躍しています。表も見てみてください。スマートグリッドの実用化が始まっています。本田技術研究所のNAS電池は実際に見ましたが巨大でした。

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