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「セメダイン」の驚くべき実力。溶接やボルト接合を接着剤に!

開発担当役員に聞く「技能の伝承は時間がかかる。接着剤は誰でも同じ水準の仕上がり標準化に最適」
「セメダイン」の驚くべき実力。溶接やボルト接合を接着剤に!

セメダインが力を入れる導電性接着剤

 セメダインは1923年に家庭用接着剤の販売を開始。現在は工業用に限らず建築用にまで幅を広げている。溶接作業やボルトによる接合を、接着剤に代えていくことを提案している。製品の開発を担当する秋本雅人執行役員技術本部長兼開発部長は「従来は接着剤を信頼しない方も多かったが、現在世代交代が進み、思い込みがなくなってきている」と実感を語る。接着剤市場の展開について話を聞いた。

 ―現在の開発状況は。
 「工業用は紫外線(UV)を通さない素材にも使える接着剤“SX―UVシリーズ”を開発した。接着剤を塗り、UVを当ててから接着するため、素材を選ばず使える。また導電性があるうえ柔らかく、フレキシブルなものに使える“SX―ECAシリーズ”を開発。ウエアラブル端末など、動きのある部位を接点で接合できる。建築用は拭き取り、はがしが簡単で、リフォームしやすい床用接着剤“フロアロック110”を開発した」

 ―ソリューションの提案も行っていますね。
 「放熱ないし耐熱ソリューションを提案している。熱伝導特性をもつ接着剤を組み合わせ、ICチップやヒートシンクなど電子機器の熱くなる部分の熱を放熱できる構造を提案している。また高熱に耐えられる接着剤や放熱特性をもつ接着剤などを組み合わせ、エンジン周辺など高耐熱が要求される機器部品の機能接着を提案している。燃費向上に貢献できる」

 ―海外市場に関してはどうですか。
 「海外は工業市場のみならず、建築市場にも注力している。これまで建築物は地域によって工法が違うため、建築用接着剤は海外では売れないと思っていた。しかし中国で行われた床国際展示会『DOMTEX』に行ってみて、日本の建築は技術的に進んでいることが分かった。国ごとにカスタマイズすれば日本の技術を買ってくれると感じた。建築をグローバル化できれば膨大な市場がある。現地の工法を理解し、技術を提案していく」

 ―接着剤の将来をどのようにみていますか。
 「現在少子高齢化が進んでおり、労働者人口が減少している。匠(たくみ)の技を持つ人は減っているが、技能の伝承は時間がかかる。作業を簡単にして標準化する必要がある。接着剤は塗って接着するだけで誰でも同じ水準の仕上がりにでき、標準化に最適。今後各方面でニーズが高まるとみている」

 【チェックポイント/地域ごとに製品開発】
 社名にもなっている家庭用接着剤「セメダインC」のイメージが強いが、現在は売上比率の8割以上を工業用と建築用が占めている。単純に接着強度を上げるのではなく、「軽量化」「標準化」など明確な目標を定めた製品開発を行う。

 今後は建築用接着剤の海外展開をはじめ、用途とともに地域に合った製品開発を進める。技術力を高めれば、海外の家庭用・工業用市場も進出の余地がある。「セメダイン」ブランドをどこまで海外に定着させられるか、注目していきたい。
 (聞き手=門脇花梨)
日刊工業新聞2015年06月02日 モノづくり面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
熱を伝える接着剤や、高熱に強い接着剤など、接着剤の高機能化が進んでいることが興味深い。溶接やボルトといった機械的な接合を接着剤に切り替えることができれば、作業工数やコスト削減、軽量化にもつながるなど期待は大きい。秋本さんが「従来は接着剤を信頼しない方も多かったが、現在世代交代が進み、思い込みがなくなってきている」と語るが、やはり接着部分の強度への信頼性を啓発していくかが課題だろう。

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