IoT時代へ、事業構造転換を急ぐコニカミノルタの危機感
「印刷という仕事の価値は落ちていってしまう」(山名社長)
コニカミノルタは3月28日、産業用センサーメーカーの独SICK(ジック)と戦略的アライアンスを締結したと発表した。コニカミノルタの3次元(3D)レーザーレーダーに、工場や物流の自動化システム構築を支援するジックのソフトウエアプラットフォームを実装する。これにより工場の自動化システムに3Dレーザーレーダーを組み込むことが容易になる。こうした協業により、レーダーの利用拡大を狙う。
同社の3Dレーザーレーダーは、広角かつ高精度に3Dで動態を認識できる。アライアンスを通じ、レーダーの量産に向けた生産力とセンシング技術の強化も進める。また、新しいセンサーやセンサーソリューションの共同開発も行う。ジックのプラットフォームは自動化ソリューションに必要なソフトをセットにしたもので、目的ごとのアプリケーション(応用ソフト)開発を支援している。
コニカミノルタがオフィス用のIoT(モノのインターネット)プラットフォーム(基盤)事業に参入する。今秋、サーバー機能を持つIoT端末「ワークプレイス・ハブ」を投入する。アプリケーション提供型の事業モデルの構築が目的だ。主力のオフィス向け複合機で伸びしろが限られる中、次なる収益源として期待される。
「紙の使用量が減っていく流れは止められない」―。新プラットフォームの構想は、山名昌衛社長の危機感から生まれた。現状では連結売上高の6割近くが複合機中心のオフィス向けの事業。持続的成長のための収益構造転換が迫られている。
これに対する同社の答えが、プラットフォーム方式のビジネスだ。オフィスの業務改善につながるアプリをインターネットなどで提供し、対価を支払ってもらう。ハードウエア依存型のビジネスからの脱却が目標だ。
新プラットフォームの専用ハードとしてオフィス設置型サーバーのワークプレイス・ハブを今秋投入する。アプリをダウンロードして運用するIoT端末であり、ネットワーク、セキュリティー、クラウドなどITシステムを一元管理する機能も特徴。大企業の管理負担を軽減するほか、中小企業のIT導入を促すことも狙いだ。
サーバー機能だけの機種に加え、複合機の機能を兼ね備えたタイプも用意し、複合機の事業で世界中のオフィスとつながりがあることを生かす。既存の強みを残しつつ事業モデルをIoT時代に最適化することが、新戦略の目標。顧客にどれだけ受け入れられるかが、見どころだ。
―IoTプラットフォームを立ち上げる背景は。
「考え始めたのは2014年に社長に就任して直後のこと。当社の売り上げの大部分はオフィス向けの複合機だが、印刷の機能は年々使われなくなっている。世界中の200万社近くに当社の製品を使ってもらっているのに、印刷という仕事の価値は落ちていってしまう」
―着想の経緯は。
「IoTの時代で何が大切なのかと考えた。そこで思い当たったのが、顧客側ではITシステムの管理にとても困っていることだ。我々のプラットフォームが世の中に求められていると確信した」
―実際に、どのように開発しましたか。
「開発を主導したのは、世界5地域に置く『ビジネス・イノベーション・センター』。アイデア自体は、英国の同センターで生まれた。5カ所ともトップは社外から招いた人材だ」
―開発は今までにない流れで進みました。
「当社は日本の製造業として、ハードウエアから新しいものを作っていくやり方が身に染み付いている。確かに技術的には優れているが、顧客が望む価値からは距離があると言わざるを得ない。ハードありきの開発から転換するため、手法を抜本的に改めた」
―どう収益に結び付けていきますか。
「既に複合機のビジネスでは、使った分だけ対価を頂くという仕組みができている。これを紙以外の領域に広げていくことになる。IoT時代への対応で重要なのは、今持っている強みをベースに進化することだと思う」
【記者の目】
IoT戦略の核となるのが、サーバー機能を持つ端末「ワークプレイス・ハブ」。プラットフォーム型の思想から生まれた新機軸だ。オフィスを効率化するアプリケーション(応用ソフト)の実行に加え、クラウドやセキュリティーなどITシステムの一元管理も同端末で可能にする。今後はプラットフォームを売り込み、継続的にサービスを提供していくことが求められる。顧客支援の体制や人材をさらに充実させたいところだ。
(聞き手=藤崎竜介)
同社の3Dレーザーレーダーは、広角かつ高精度に3Dで動態を認識できる。アライアンスを通じ、レーダーの量産に向けた生産力とセンシング技術の強化も進める。また、新しいセンサーやセンサーソリューションの共同開発も行う。ジックのプラットフォームは自動化ソリューションに必要なソフトをセットにしたもので、目的ごとのアプリケーション(応用ソフト)開発を支援している。
コニカミノルタがオフィス用のIoT(モノのインターネット)プラットフォーム(基盤)事業に参入する。今秋、サーバー機能を持つIoT端末「ワークプレイス・ハブ」を投入する。アプリケーション提供型の事業モデルの構築が目的だ。主力のオフィス向け複合機で伸びしろが限られる中、次なる収益源として期待される。
「紙の使用量が減っていく流れは止められない」―。新プラットフォームの構想は、山名昌衛社長の危機感から生まれた。現状では連結売上高の6割近くが複合機中心のオフィス向けの事業。持続的成長のための収益構造転換が迫られている。
これに対する同社の答えが、プラットフォーム方式のビジネスだ。オフィスの業務改善につながるアプリをインターネットなどで提供し、対価を支払ってもらう。ハードウエア依存型のビジネスからの脱却が目標だ。
新プラットフォームの専用ハードとしてオフィス設置型サーバーのワークプレイス・ハブを今秋投入する。アプリをダウンロードして運用するIoT端末であり、ネットワーク、セキュリティー、クラウドなどITシステムを一元管理する機能も特徴。大企業の管理負担を軽減するほか、中小企業のIT導入を促すことも狙いだ。
サーバー機能だけの機種に加え、複合機の機能を兼ね備えたタイプも用意し、複合機の事業で世界中のオフィスとつながりがあることを生かす。既存の強みを残しつつ事業モデルをIoT時代に最適化することが、新戦略の目標。顧客にどれだけ受け入れられるかが、見どころだ。
山名社長インタビュー
―IoTプラットフォームを立ち上げる背景は。
「考え始めたのは2014年に社長に就任して直後のこと。当社の売り上げの大部分はオフィス向けの複合機だが、印刷の機能は年々使われなくなっている。世界中の200万社近くに当社の製品を使ってもらっているのに、印刷という仕事の価値は落ちていってしまう」
―着想の経緯は。
「IoTの時代で何が大切なのかと考えた。そこで思い当たったのが、顧客側ではITシステムの管理にとても困っていることだ。我々のプラットフォームが世の中に求められていると確信した」
―実際に、どのように開発しましたか。
「開発を主導したのは、世界5地域に置く『ビジネス・イノベーション・センター』。アイデア自体は、英国の同センターで生まれた。5カ所ともトップは社外から招いた人材だ」
―開発は今までにない流れで進みました。
「当社は日本の製造業として、ハードウエアから新しいものを作っていくやり方が身に染み付いている。確かに技術的には優れているが、顧客が望む価値からは距離があると言わざるを得ない。ハードありきの開発から転換するため、手法を抜本的に改めた」
―どう収益に結び付けていきますか。
「既に複合機のビジネスでは、使った分だけ対価を頂くという仕組みができている。これを紙以外の領域に広げていくことになる。IoT時代への対応で重要なのは、今持っている強みをベースに進化することだと思う」
【記者の目】
IoT戦略の核となるのが、サーバー機能を持つ端末「ワークプレイス・ハブ」。プラットフォーム型の思想から生まれた新機軸だ。オフィスを効率化するアプリケーション(応用ソフト)の実行に加え、クラウドやセキュリティーなどITシステムの一元管理も同端末で可能にする。今後はプラットフォームを売り込み、継続的にサービスを提供していくことが求められる。顧客支援の体制や人材をさらに充実させたいところだ。
(聞き手=藤崎竜介)
日刊工業新聞2017年3月27日、28日、29日)