ドイツ見本市で見せたニッポンのデジタルインダストリー技術
強みを発揮、次ぎはバリューチェーン全体の広がりに期待
ドイツのハノーバーで開催中の国際情報通信技術見本市「CeBIT(セビット)2017」。現地時間24日までの5日間の会期中、延べ20万人の来場が見込まれる世界最大級の展示会だ。今回、日本は初めてパートナー国として参加。日本貿易振興機構(ジェトロ)が企画する展示場「ジャパン・パビリオン」には過去最大規模の約120社・団体が出展し、IoT(モノのインターネット)やロボットなど“旬”の技術をアピールしている。
日立製作所のブースでは、人の嗜(し)好や動作にロボットが反応する実演が人気だ。顔認識や視線特定の技術を応用。不規則に配置された消しゴムから来場者の好む物を選びロボットが渡している。
利用するのはすしを模した消しゴム。多関節ロボットが、すし職人の役を演じ人の前に配膳していく。顔認識で性別や年代を特定し、その情報を基に計8種のすしネタからその人が好みそうな3種を抽出。モニターに表示した後、視線の動きから最も好きな1種を推定する仕組みだ。
さまざまな機器でデータを共有し動作に反映させるためのデータ流通ルール「データプロファイル」を活用。複数メーカーの機器が連携するスマート工場の実現に必要な技術だという。
NECは、欧州の製造業向けに金属部品などの個体識別が可能な画像処理技術「ガジル」を提案している。ネジなどの表面に現れる模様の微妙な違いを見分け、世界に一つしかない部品として認識することが可能。トレーサビリティー(生産履歴管理)の高度化などに寄与できるという。
スマートフォンのカメラがあれば、位置決め用のアダプターを取り付けるだけで利用できる。ネジの頭部を撮影し、データを個体情報としてクラウドに蓄積する仕組み。原則として「完全に同じ模様は存在しない」(第一製造業ソリューション事業部)としている。
福島市の生産拠点に同技術を導入済みで、ブースでは動画で活用状況を紹介し、実用性を訴求している。
IoTのソラコム(東京都世田谷区)と人工知能(AI)のプリファード・ネットワークス(PFN、同千代田区)。ベンチャー2社がタッグを組み、CeBIT2017で脚光を浴びている。端末側でデータ処理するPFNのエッジコンピューティング技術により、ソラコムが用いるクラウドへの負担を軽減することが可能だ。
ブースでは、通行人の属性データをPFNのエッジ技術で処理し、分析された情報だけを送信する状況を披露。カメラの撮影映像から、写っている人の年齢と性別を推定。数秒ごとに各属性の合計人数を分析により情報化し、ソラコムのクラウドに送る仕組みだ。元の画像データより、サイズを100分の1以下にできるという。
NTTは製造業向けのエッジコンピューティング技術を紹介している。IoT領域で協業するファナックのパラレルリンクロボットをブースに設置。稼働状況を「見える化」し、データを現場側でリアルタイムで処理できることをアピールしている。
チョコレートの箱詰め作業を想定し、ロボットを高速に運転。直近24時間の稼働実績を常に分析し、モニターで確認できるようにした。さまざまなプロトコルで集められるデータを統一的な手法でアプリケーション(応用ソフトウエア)に送ることに、独自技術を適用している。多方面の企業と組み価値を生み出すパートナー戦略の一環。このほか、松竹との連携による歌舞伎関連の展示も注目されている。
川崎重工業のブースでは、同社製ロボットとソフトバンクのコミュニケーションロボ「ペッパー」の連携が注目されている。ペッパーの親しみやすさで来場者の興味を引き、その上で産業用ロボットの動作性能を見せつける戦略だ。また、初公開のロボットコントローラー「Fシリーズ」も積極的にアピールしている。
ペッパーと小型多関節ロボ「MC004N」が連携する実演では、検査の自動化例を紹介。ペッパーが作業内容を伝達するとMC004Nがそれに従い、対象物を検査機にセットする仕組みだ。
また、MC004Nの制御用にFシリーズを初めて展示。ペッパーなど周辺機器と無線通信できる点や、省スペースが売りだ。
三菱電機は、レーザーとカメラを併用する地図データ作成技術「三菱モービルマッピングシステム(MMS)」を欧州で初めて出展している。専用のユニットを取り付けた自動車を走らせると、走行経路の3次元地図が自動的に作成される仕組み。自動運転を安全化できる技術として、提案している。
車の上部に取り付ける専用ユニットはレーザースキャナーや高精細カメラなどで構成。道路面などを計測し、点群データを得られる。これにカメラで取得した色情報を組み合わせ、カラー化することも可能だ。
レーザーを使わない他方式に比べ、データを高精度化できるのが特徴。飛行ロボット(ドローン)などにも応用していく考えだ。
(ハノーバー=藤崎竜介)
『スマートファクトリーJapan』
製造現場や生産管理の先進化や効率化を目指す「スマートファクトリーJapan 2017」を2017年6月7日(水)〜9日(金)の日程で、東京ビッグサイトにて開催。本展示会は、製造工場においてスマートファクトリーを実現するうえで、欠かすことのできない「IoT」や「インダストリー4.0」を搭載した生産管理・システムをはじめ、製造設備・装置、その他、生産工場に関する技術・製品を展示公開いたします。
また、昨年まで「クラウドコミュニティ」という名称でセミナーセッションを中心に企画展を実施してまいりましたが、時代の潮流に合わせてID獲得型フォーラムとして「IoT・AI Innovation Forum」を同時開催いたします。
【出展者募集中】>
【日立製作所】好みのすし、ロボが選別
日立製作所のブースでは、人の嗜(し)好や動作にロボットが反応する実演が人気だ。顔認識や視線特定の技術を応用。不規則に配置された消しゴムから来場者の好む物を選びロボットが渡している。
利用するのはすしを模した消しゴム。多関節ロボットが、すし職人の役を演じ人の前に配膳していく。顔認識で性別や年代を特定し、その情報を基に計8種のすしネタからその人が好みそうな3種を抽出。モニターに表示した後、視線の動きから最も好きな1種を推定する仕組みだ。
さまざまな機器でデータを共有し動作に反映させるためのデータ流通ルール「データプロファイル」を活用。複数メーカーの機器が連携するスマート工場の実現に必要な技術だという。
【NEC】スマホ画像で個体識別
NECは、欧州の製造業向けに金属部品などの個体識別が可能な画像処理技術「ガジル」を提案している。ネジなどの表面に現れる模様の微妙な違いを見分け、世界に一つしかない部品として認識することが可能。トレーサビリティー(生産履歴管理)の高度化などに寄与できるという。
スマートフォンのカメラがあれば、位置決め用のアダプターを取り付けるだけで利用できる。ネジの頭部を撮影し、データを個体情報としてクラウドに蓄積する仕組み。原則として「完全に同じ模様は存在しない」(第一製造業ソリューション事業部)としている。
福島市の生産拠点に同技術を導入済みで、ブースでは動画で活用状況を紹介し、実用性を訴求している。
【ソラコムとプリファード・ネット】VB2社が連携
IoTのソラコム(東京都世田谷区)と人工知能(AI)のプリファード・ネットワークス(PFN、同千代田区)。ベンチャー2社がタッグを組み、CeBIT2017で脚光を浴びている。端末側でデータ処理するPFNのエッジコンピューティング技術により、ソラコムが用いるクラウドへの負担を軽減することが可能だ。
ブースでは、通行人の属性データをPFNのエッジ技術で処理し、分析された情報だけを送信する状況を披露。カメラの撮影映像から、写っている人の年齢と性別を推定。数秒ごとに各属性の合計人数を分析により情報化し、ソラコムのクラウドに送る仕組みだ。元の画像データより、サイズを100分の1以下にできるという。
【NTT】多方面の企業と価値創出
NTTは製造業向けのエッジコンピューティング技術を紹介している。IoT領域で協業するファナックのパラレルリンクロボットをブースに設置。稼働状況を「見える化」し、データを現場側でリアルタイムで処理できることをアピールしている。
チョコレートの箱詰め作業を想定し、ロボットを高速に運転。直近24時間の稼働実績を常に分析し、モニターで確認できるようにした。さまざまなプロトコルで集められるデータを統一的な手法でアプリケーション(応用ソフトウエア)に送ることに、独自技術を適用している。多方面の企業と組み価値を生み出すパートナー戦略の一環。このほか、松竹との連携による歌舞伎関連の展示も注目されている。
【川重重工】「ペッパー」との連携披露
川崎重工業のブースでは、同社製ロボットとソフトバンクのコミュニケーションロボ「ペッパー」の連携が注目されている。ペッパーの親しみやすさで来場者の興味を引き、その上で産業用ロボットの動作性能を見せつける戦略だ。また、初公開のロボットコントローラー「Fシリーズ」も積極的にアピールしている。
ペッパーと小型多関節ロボ「MC004N」が連携する実演では、検査の自動化例を紹介。ペッパーが作業内容を伝達するとMC004Nがそれに従い、対象物を検査機にセットする仕組みだ。
また、MC004Nの制御用にFシリーズを初めて展示。ペッパーなど周辺機器と無線通信できる点や、省スペースが売りだ。
【三菱電機】レーザーも使い地図データ作成
三菱電機は、レーザーとカメラを併用する地図データ作成技術「三菱モービルマッピングシステム(MMS)」を欧州で初めて出展している。専用のユニットを取り付けた自動車を走らせると、走行経路の3次元地図が自動的に作成される仕組み。自動運転を安全化できる技術として、提案している。
車の上部に取り付ける専用ユニットはレーザースキャナーや高精細カメラなどで構成。道路面などを計測し、点群データを得られる。これにカメラで取得した色情報を組み合わせ、カラー化することも可能だ。
レーザーを使わない他方式に比べ、データを高精度化できるのが特徴。飛行ロボット(ドローン)などにも応用していく考えだ。
(ハノーバー=藤崎竜介)
製造現場や生産管理の先進化や効率化を目指す「スマートファクトリーJapan 2017」を2017年6月7日(水)〜9日(金)の日程で、東京ビッグサイトにて開催。本展示会は、製造工場においてスマートファクトリーを実現するうえで、欠かすことのできない「IoT」や「インダストリー4.0」を搭載した生産管理・システムをはじめ、製造設備・装置、その他、生産工場に関する技術・製品を展示公開いたします。
また、昨年まで「クラウドコミュニティ」という名称でセミナーセッションを中心に企画展を実施してまいりましたが、時代の潮流に合わせてID獲得型フォーラムとして「IoT・AI Innovation Forum」を同時開催いたします。
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日刊工業新聞2017年3月23日