ニュースイッチ

東京23区全建物の延焼影響度が分かる火災シミュレーター

東工大が開発、首都直下型地震の避難経路の見直しなど防災分野に活用
東京23区全建物の延焼影響度が分かる火災シミュレーター

グーグルマップ上でのシミュレーション(色が付いた部分は延焼の被害を受けた地域、東工大提供)

 東京工業大学大学院情報理工学研究科情報環境学専攻の大佛俊泰教授らは、東京23区内のすべての建物について延焼の影響度を評価できる火災シミュレーターを開発した。23区にある175万棟のうち特定の建物から出火した際に、どの程度燃え広がるのかを推計する。火災が広がる恐れのある地域や建物を重点的に不燃化することや、首都直下型地震の避難経路の見直しなど防災分野で活用する。
 
 木造や鉄筋コンクリート造による175万棟それぞれの燃えやすさと、延焼遮断帯などによる効果を総合的に解析する。出火元の建物から周囲への燃え広がりやすさと、周辺の建物から発生した火災にどう巻き込まれるかについて、1軒ごとに評価した。両方の影響度を地図上で一覧でき、火災リスクの高い地域や建物を特定できる。

 自治体にとっては、防災に関する施策の実施に活用できる。例えば、不燃化促進事業に対する補助金などを、一律ではなく費用対効果の高いところに重点的に配分する利用法が見込める。

 多くの利用者が情報を共有できるようグーグルマップ上でシミュレーションを行ったところ、避難経路ごとに火災リスクを確認できた。大規模災害で同時多発的に火災が起きた際に、消防車で対応できる地域を特定することや、延焼しやすい地点へ真っ先に配車するなど、対策を講じやすくなる。ただ放火など悪用のリスクもあるため、公開する予定はないという。

 災害時に地域住民が火災や建物の倒壊、道路の通行可否などに関して、グーグルマップを介して提供し合うことによって情報共有できる機能も設けた。これにより、消防車の配車や火災の把握が飛躍的に向上するとみられる。

 解析には東京都の都市計画基礎調査のデータを利用した。自治体が保有する建物に関する情報を組み込めば、他の地域でも延焼の影響度を評価できる。
日刊工業新聞2015年06月02日 科学技術・大学面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
公開する予定はないというが、住んでいる目黒区が気になる。

編集部のおすすめ