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アバゴの巨額買収で動きだす半導体再編!焦点の日本メーカーは?

出口戦略が待っているルネサス、アナログの台風の目はセイコーインスツル
 半導体業界で再編の動きが活発化している。米アバゴ・テクノロジーは、米ブロードコムの買収を決めた。買収額は約370億ドル(約4兆6000億円)と半導体業界で過去最大。巨額な投資の背景には半導体において、研究・開発と製造プロセスの両面で、必要となる資金が大きくなっていることがある。再編のうねりは日本の半導体メーカーにも押し寄せてくる。注目はルネサスエレクトロニクスと、セイコーホールディングス(HD)の動きだ。
 
 【世界6位に躍進】
 アバゴは2016年3月末までに買収手続きを終える計画で、買収後の社名は「ブロードコム」とする。売上高規模は約150億ドルで、世界6位につける。アバゴのホック・タン社長兼最高経営責任者(CEO)は、「有線と無線通信向けの半導体でリーダー的な地位を獲得できる」との声明を発表した。
 半導体業界では世界規模で再編が加速している。パワー半導体トップの独インフィニオン・テクノロジーズは、米インターナショナル・レクティファイアーを約30億ドルで1月に買収した。また車載半導体などで強みを持っているオランダ・NXPセミコンダクターズは、米フリースケール・セミコンダクタを約118億ドルで15年内に買収する計画。
 
 【投資負担が増大】
 スマートフォンの高機能化や車のIT化を背景に、半導体には一層の小型化や省エネ化を図った製品を低コストで生産する進化が求められる。重くなる投資負担に耐えるには規模の拡大が不可欠となっており、「M&A(合併・買収)を模索するのが半導体企業のトップの仕事」(国内ファンド幹部)になっている。
 
 日本の半導体業界で再編の軸となるのはルネサスエレクトロニクスだ。9月末には同社の株式の69%を保有する産業革新機構のロックアップ(株式を売却できない期間)が解ける。大手半導体商社幹部は「NXPは、(買収を決めた)フリースケールのほかルネサスにもアプローチしていた」と明かす。今後、ルネサスを巡る動きはさらに活発化する。
 
 また新たに注目すべきは、電源ICなどのアナログ半導体分野でも再編の動きが出てきたこと。セイコーHDが、傘下のセイコーインスツル(SII)の同事業を分社化し、日本政策投資銀行と設立する新会社に移管することを決めた。15年10―12月に設立するこの新会社では「積極的に同業他社との連携を探っていく」(中村吉伸セイコーHD社長)。
 
 アナログ半導体は、搭載する完成品ごとにカスタマイズするケースが多く、「いまだに匠(たくみ)の技が必要」(業界関係者)。多くの日本メーカーが競争力を維持し、安定収益を上げており、再編とは距離を保ってきた。
 
 【3年後では遅い】
 しかし今後、国策で半導体産業の振興を図る中国が、アナログ半導体分野でも競争力を高める可能性がある。「3年後では遅い。今、動きださないと優位性を維持できない」(中村社長)という危機感がセイコーHDの背中を押した。
 
 統合により巨大化する欧州の半導体メーカーと、台頭する中国半導体メーカー。日本メーカーは両陣営に対抗していけるか。再編を主導できるかが、勝敗を分けるポイントの一つになる。
日刊工業新聞2015年06月01日 電機・電子部品・情報・通信面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
ルネサスは再編を繰り返し、ようやくリストラの効果が出始めたばかりなのでタイミングはなかなか難しい。CEOが代わるが、、セイコーインスツルが目指すは「日の丸・アナログ」だろう。

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