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「おそ松さん」に「スプラトゥーン」…佐賀コラボ成功の鍵は県職員

「おそ松さん」に「スプラトゥーン」…佐賀コラボ成功の鍵は県職員

山口知事㊧も浸かった「ガタバー」。SNSでの情報の拡散が追い風となった

 求められる自治体のブランディング力―。佐賀県が2015年7月に情報発信による地方創生プロジェクト「サガプライズ!」を始めて1年半が過ぎた。話題のアニメや商品と地域資源をコラボレーションさせたユニークな取り組みが話題を呼んだ。県はさらにコラボで得た広報手法を県内事業者に伝えて地域の魅力向上につなげようとしている。

 「サガプライズ!」は佐賀県の観光名所や特産物と都心の企業やブランドとのコラボを中心に展開する。プロデュースオフィスを東京・南青山に開設し県職員を4人派遣している。流行をリアルタイムで捉え、打ち合わせを効率的に行うためだ。プロジェクトは話題性や効果を見据えて決定し、年間4本のコラボを目標とする。

 これまではサブカルチャーと連動した企画が目立つ。主人公がイカの任天堂のゲーム「スプラトゥーン」と唐津市呼子町の特産品であるイカをコラボさせた「Sagakeen(サガケーン)」は、冬場に観光客数が落ち込むという地域の課題解決に貢献した。

 有明海の干潟から8トンの泥を南青山に持ち込み、泥に浸かって佐賀の地酒を楽しめる「ガタバー」、虹ノ松原など「松」に縁のある佐賀県唐津市とテレビアニメ「おそ松さん」とのコラボもある。

 これらの企画は地元の観光事情に詳しい県職員だからこその発想があった。「ガタバー」など写真を撮りたくなる“絵”があることも特徴。「インスタグラム」などの会員制交流サイト(SNS)での情報発信につながった。SNSをきっかけに佐賀県内での関連イベントに参加したのが、“初めての九州”という人も多い。事業は委託とせず県が主体性を維持する。

 県の担当者は「コラボ先と県がウィン―ウィンの関係を築けることが大事で、1対1の関係を大切にしている」と話す。「サガプライズ!」は情報発信と集客では完結しない。ファンを獲得するPR方法や浮かび上がった課題を地域にフィードバックするまでを想定している。そのため連動イベントを今後も佐賀県内で開くが、これからは地域資源をどのように打ち出すかが問われる。

インタビュー 佐賀県知事・山口祥義氏「志が集まる県に」


佐賀県知事・山口祥義氏

 ―プロジェクトの狙いは。
 「志を大切にして将来に対する夢や希望を持ってもらうことが目標だ。佐賀県民には謙虚さや愚直さがある。それを生かしながらもハレの文化を根付かせたい。おそ松さんコラボでは、あんなに若者が集まるとは思わなかった。佐賀を好きになってくれる人が増えて、志が集まる県にしたい」

 ―サガプライズ!で県が活気づきました。
 「佐賀の本質的価値をどう味付けするか。私たちは『サガデザイン』と呼んでいるが、要するに見せ方の問題だと思う。本来持っている本質的素晴らしさをいかに見てもらえるか。展開力が試されていて、中身を伴いつつアピールすることが重要だ」
(文=西部・増重直樹)
日刊工業新聞2017年3月9日
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
「サガプライズ!」は、前の知事が始めた企業コラボ事業「サガファクトリー」をベースにした施策と認識しています。しかし、モノ中心だった以前の施策から、ヒットコンテンツに“乗っかる”方向へ微妙に転換したことで、コラボの可能性が広がり成功したようです。ただ、山口知事も言っている「本質的素晴らしさ」は大前提。花火をあげつつも、実(じつ)のある佐賀の良さを失わないことが、永続的な発展には必要だと思います。

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