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プリウス「PHV」に採用された炭素繊維メーカー、自動車開拓への本気度

三菱レイヨン、海外でのM&A攻勢は実るのか
プリウス「PHV」に採用された炭素繊維メーカー、自動車開拓への本気度

「プリウスPHV」に採用されたCFRP

 三菱レイヨンは、生産性を向上させた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)がトヨタ自動車が2月15日発売した新型「プリウスPHV」の骨格部材に採用された。バックドアの骨格部材に、シート・モールド・コンパウンド(SMC)と呼ぶCFRPが採用された(写真)。SMCは中間基材の一種で、数センチメートルの炭素繊維を含むシート状材料。2―5分程度のプレス工程で成形でき、連続した炭素繊維に樹脂を含浸した中間基材のプリプレグよりも複雑な設計を行える。

SMCの設計・開発強化


 三菱レイヨンは9日、米で航空機や自動車向け炭素繊維部品の設計などを手がけるジェミニ・コンポジッツ(ワシントン州)を買収したと発表した。炭素繊維事業の重点市場に位置づける北米で、設計や開発など川下領域を強化する狙い。買収額は非公開だが、3億円前後と見られる。

 三菱レイヨンの米炭素繊維製造子会社(カリフォルニア州)が、1日付でジェミニ社の全株式を取得し、完全子会社にした。

 ジェミニ社はシート・モールド・コンパウンド(SMC)と呼ぶ、数センチメートルの炭素繊維を含んだ樹脂シートを使った部品の設計や試作品開発を得意とする。

 三菱レイヨンは業界首位のSMC生産能力を持ち、航空機や自動車分野を開拓している。SMCの設計部門を強化し、部品開発を加速する。

日刊工業新聞2017年3月10日



独社の米工場買収。低価格増産へ


 三菱レイヨンは10日、独の素材大手SGLグループが米国に持つ炭素繊維工場を買収すると発表した。買収額は非公表だが、20億円以下と見られる。ラージトウと呼ばれる低価格の炭素繊維を増産し、風力発電用のブレード(羽根)など産業用途への供給力を引き上げる。米国子会社がSGLがワイオミング州に持つ炭素繊維製造会社を4月上旬に完全子会社化する。

 三菱レイヨンの炭素繊維生産能力は現在、年1万100トン。今回の買収で生産能力は同1000トン増え、大竹事業所(広島県大竹市)などで進める増産分と併せると、17年中旬の生産能力は同1万4300トンに高まる。

 また、需要動向を見ながら3000トン規模の生産設備の新設なども含め、取得工場への追加投資を検討する。

 同社はラージトウを中核に炭素繊維事業の拡大を進めているが、需要の伸びが想定よりも早く新たな生産拠点の確保が課題だった。

日刊工業新聞2017年1月11日


炭素繊維を使った自動車向け部材

東レへの挑戦権を巡る争いが激しく


 三菱レイヨンが炭素繊維事業で北米戦略の練り直しを迫られている。米国で合弁事業を計画していた同国最大の自動車向け複合材成形メーカーが競合の帝人に買収されるからだ。三菱レイヨンは米社の米ビッグスリーへのパイプを利用し、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を売り込む算段だった。一方、過去最大の買収額となる帝人も買収後の課題は山積みだ。業界首位の東レへの挑戦権を巡る争いが激しさを増している。

 三菱レイヨンの越智仁社長は16日に「(合弁事業は白紙になるが)大きな影響はない」と強調した。当初計画では米コンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックス(CSP、ミシガン州)と、CFRPなどを米国で製造する合弁会社を2016年内に設立するはずだった。

 「うちが自動車部品メーカーになるつもりはなく、ビッグスリーなどへサンプル品の供給基地がほしかった」(三菱レイヨン幹部)と、合弁事業の狙いはあくまで素材供給の接点づくりだった。

 同業他社幹部も「CFRPの自動車への拡販は、いかに自動車メーカーに近く技術力のある部品会社と組めるかにかかっている」と断言する。CFRPは量産性や成形性に課題が多い上、素材供給者である炭素繊維メーカーが自動車メーカーの部品ニーズを詳細に把握するのは困難だ。

 自動車分野は三菱ケミカルホールディングス全体の最重点領域の一つだ。歴史的に日系車メーカーに強く、米欧勢との取引は開拓余地が大きく残る。ビッグスリーや米テスラ・モーターズへの攻勢の足がかりとして、CSPとの合弁への期待はグループ内で小さくなかった。

 今後は米国で新たな合弁相手を早急に探して、戦略修正を最小限に抑えなければいけない。「米国には成形メーカーは他にもたくさんある」(同)と次の相手選びには困らないだけにスピード感が重要になる。

 一方、帝人もCSP買収額約840億円の妥当性には疑問の声が上がる。「最初は500億円と聞いていた」(業界関係者)とのうわさも流れる。中国や韓国の化学メーカーも今回の争奪戦に参加したと言われ、それが買収価格を高騰させた可能性は否定できない。

 帝人の鈴木純社長は13日の記者会見で「売り上げ推移、これからの成長性、当社との戦略の適合性の評価を入念に行い、買収金額は決して高くはないと判断した」と語った。外野の声を払拭(ふっしょく)するためにも、CSPとの相乗効果を早期に発揮して過去最大の買収の成功を証明しなければならない。
(文=小野里裕一、鈴木岳志)
                

日刊工業新聞2016年9月19日

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
去年にはランボルギーニと自動車向けCFRPの共同開発に向けた検討を始めることで合意した。新素材や加工時間短縮などの成形技術の可能性などを探るという。親会社である三菱ケミカルホールディングスの戦略にも注目。

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