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ブームは去ってない!?3Dプリンター、18年までの年成長は倍々ゲーム

人気機種は?今後の技術革新は?
 3Dプリンターはもともと市場が大きくないこともあるが、ガートナーの予測でも伸びが極めて大きい。2013―18年までの年平均成長率は106.6%。このように成長率が100%を超える製品はあまりない。

 うち10万―20万円前後の低価格帯の機種の人気が一番高い。日本、中国、韓国、欧州と、あらゆる国のメーカーが参入し、製品の数も増えている。米国の3Dシステムズとストラタシスが2大メーカーで、M&A(合併・買収)を繰り返して大きくなった。

 今後期待できる技術革新は材料の改善だろう。電導性材料やセラミックス、貴金属を扱ったり、金型を作ったりできる機種もある。日本は国家プロジェクトとして、金型を作る3Dプリンターを開発しているが、日本の得意とするモノづくりのノウハウを生かすのが目的だ。金属用3Dプリンターでは松浦機械製作所が大手商社と組んで北米への展開を画策しているように、日本メーカーの製品を海外に売り込む動きも出てきている。

 医療系も重要分野だ。体に埋め込むインプラントなどのほか、臓器のモデルを作って手術の練習に役立てられる。中国、韓国、インドなどでも国家プロジェクトが走っており、技術革新が起こる余地はまだまだある。

 個別の機種では、米HPが16年に発売予定の工業用3Dプリンター「マルチ・ジェット・フュージョン」に注目している。独自のサーマルインクジェット技術を使って材料パウダーの薄い層を何層も積み重ね、高速かつ高精度に立体物を作り出す。さまざまな素材にも対応できるという。

 3Dプリンターの大きな利点はモノづくりのスピードを速められることにある。製品のアイデアを思いついてから1日で実際のモノを手にすることができる。ビジネスでの主用途は試作品作製だが、補聴器を持ち主個人個人の耳の形に合わせてカスタマイズする例もあり、GEやボーイングはすでに補修部品を3Dプリンターで作り、実際に使っている。在庫を持たなくて済むようになる。

 さらに裾野を広げるには、学校などでの教育がカギを握る。こうした技術に小さい頃から慣れ親しんでいれば、手で作れないような複雑な形状でも、3Dプリンターならどうやってできるか、発想が出やすくなる。

 こうしたアプローチでも米国は先進的。政府主導で例えば、地域の図書館に導入し、自由に使えるようにしている。市場が伸びる一方で、何でも作れる万能の利器であると思いがちであるが、実際には何もかも3Dプリンターで作れるわけではない。何を作るのか、何に使えるのかを常に考えながら、利用する必要がある。

 さらに、武器作製や特許侵害など、間違った使い方をされることのないように監視する仕組みも必要になってくる。

 ※「テクノロジーウオッチ!進むデジタル化」は日刊工業新聞で水曜日に連載中
 ◇ガートナージャパンリサーチ部門主席アナリスト 三谷智子さん
日刊工業新聞2015年05月27日 電機・電子部品・情報・通信面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
一般の人が3Dプリンターをもっと気軽に使えるようになるためには、データ作成ツールや3Dスキャンなどの技術革新も必要になってくると思います。将来、紙のプリンターくらい誰でも簡単に使えるようになったら面白いですね。

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