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動き出す“呉・ルネサス”、日本中心からの脱却図る大改革

意思決定の迅速化へ組織見直し
動き出す“呉・ルネサス”、日本中心からの脱却図る大改革

米インターシルの買収について会見する呉社長(左)

 ルネサスエレクトロニクスが4月から大幅な機構改革に踏み切る。現在の事業本部は自動車向けとそれ以外の二つのみだが、より細かく顧客層を分類して三つにする。また同本部の権限を強化し日本の本社に縛られずに意思決定できるようにする。米インターシルの買収完了を契機に攻略市場の明確化と組織の融合を進め、日本を中心とした事業運営から脱却するのが狙いだ。「ワン・グローバル・ルネサス」をキーワードに、成長路線に乗るための基盤を固める。

 「インターシルとの相乗効果により、グローバルで勝ち抜ける営業利益率を達成する」―。ルネサスの呉文精社長兼最高経営責任者(CEO)は、20年に営業利益率20%以上という目標値を設定した。今回の機構改革は、それを実現するための布石だ。

 変化のスピードが速く大型の買収劇も相次ぐ半導体市場では、意思決定の速さが勝敗を喫する。そこで国や地域など場所を問わずに事業本部の機能を置き、日本の本社に縛られずに迅速に意思決定できる体制を敷く。「ビジネスを進める際に(本社が)障害とならない組織」(呉社長)が理想だ。

 まず4月1日付で自動車向けを担当する第一ソリューション事業本部を「オートモーティブソリューション事業本部」に変更する。非車載半導体を扱う第二ソリューション事業本部については、産業機器や家電、IoT(モノのインターネット)などを担う「インダストリアルソリューション事業本部」と、それ以外の「ブロードベースドソリューション事業本部」に分割する。

 ブロードベースドソリューション事業本部には米インターシルの大半の部隊が入る。アナログ半導体製品の豊富なラインアップを強みに、中小企業など攻略できていなかった層の取り込みを図る。インターシルの社名変更やブランドの統合は今後検討する。

 事業別の責任も一段と明確化する。7月1日には三つの事業本部にそれぞれ販売とマーケティング部門を移管。設計開発から販売まで一貫して統括する体制を整える。加えて、サプライチェーンを統括する「サプライチェーンマネジメント本部」も新設する。各事業本部に分散していた生産戦略や資材調達などの機能を集約し、生産から調達までの戦略を一本化する。

 前回、大きな機構改革を実施したのは、産業革新機構からの出資を受け入れた13年だ。この時は製品別の事業体制から用途別の体制に移行した。今回はさらに踏み込み、グローバルで戦う体制を敷いた。
(文=政年佐貴恵)
                  
日刊工業新聞2017年3月9日
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
13年から続いた構造改革を終え、17年12月期は成長回帰の1年目になる。今回の機構改革は、16年6月に就任した呉社長が自ら決定した大型施策になるだけに成果が問われる。新体制で、その手腕をどう発揮していくのか。“呉流・ルネサス”がいよいよ動きだす。

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