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進展型の小細胞肺がんを放射免疫療法で大幅に縮小、東大病院が成功

適切な抗体を作製、がん部分に集中させることで選択的な放射線治療が可能に
 東京大学医学部附属病院の百瀬敏光准教授のグループは、抗体と放射性物質を使った「放射免疫療法」で、マウスの肺がんを大幅に縮小させることに成功した。悪性の進展型小細胞肺がんは全身に広がっているため、ピンポイントの放射線治療が難しい。今回は適切な抗体を作製し、がん部分に集中させることで可能になった。

 東大の附属病院の百瀬准教授、藤原健太郎特任助教、先端科学技術研究センターの浜窪隆雄教授、児玉龍彦特任教授らとの共同研究による成果。肺がんは患者数が多く死亡率が高い。今回、他の臓器にまで広がる進展型の小細胞肺がんの治療法開発に取り組んだ。

 小細胞肺がんの細胞で多くつくられる膜たんぱく質「ROBO1」のモノクローナル抗体を作製。放射性同位元素のイットリウムで目印を付けた。これを投与すると血流により全身に運ばれ、抗体によってがんに集中する。そのためがん部分で選択的に放射線治療を行える。

 小細胞肺がんを移植したモデルマウスで実験したところ、がんの大きさは投与前に比べ約2割に縮小した。比較で生理食塩水を投与したマウスではがんが増大を続け、差が明確だった。副作用も一時的な造血機能低下など軽度ですんだ。ヒトの進展型小細胞肺がんの治療法につながると期待される。
日刊工業新聞2015年05月29日 科学技術・大学面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
先日、21歳のアイドルの方が肺ガンで亡くなった。肺ガンの死亡率はほかのガンに比べ高まっており、有効な治療法につながることを期待したい。

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