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業績低迷の百貨店、「化粧品だけ」好調のなぜ?

目的がはっきりした商品を開発したメーカーの努力。他の領域にも参考に
業績低迷の百貨店、「化粧品だけ」好調のなぜ?

伊勢丹新宿店の化粧品フロアを訪問したファッションモデルのケイト・モスさんとコーセーの小林一俊社長

 2016年の全国百貨店売上高は、36年ぶりに6兆円を割った。17年に入ってからも低迷は続き、売上高は1月まで11カ月連続で前年同月比マイナスだった。そんな中、唯一売り上げを伸ばしている商品部門が「化粧品」だ。22カ月連続で前年を上回っている。訪日外国人客による免税売上高の増加が主な要因だが、「国内のお客さまの需要も維持している」(近内哲也日本百貨店協会専務理事)。消費が落ち込む中、なぜ化粧品だけが売れるのか。

 日本百貨店協会の近内専務理事は化粧品が好調な理由について、推測だと断った上で「化粧品市場は5年くらい前まで、基礎化粧品の売れ行きに苦しんでいた。

 だが、科学などの価値を持ち込むことで効果の高い商品、目的がはっきりした商品を開発した」と分析する。好本達也大丸松坂屋百貨店社長も「我々ではなく、メーカー側の努力。会員制交流サイト(SNS)の使い方を研究している」と話す。

 資生堂が百貨店で販売している美容液「アルティミューン」は14年9月の発売から2年間で、約250万個を売り上げた。発売から1年後、2年後の売り上げがともに前年を超え、「リピートのお客さまだけでなく、新規顧客も増えている」(魚谷雅彦社長)ことからも、商品力の強さがうかがえる。

 容量50ミリリットルの商品で消費税込みの価格が1万2960円と高価だが、魚谷社長は「技術革新と、香りなど感性に働きかける部分がマッチした」と話す。

 百貨店ではカウンターで接客することにより、差別化が可能だ。資生堂の同じく百貨店ブランドである「イプサ」も、「肌診断の結果をもとに(提案を)カスタマイズしている」(同)ことで、好調を継続している。

 百貨店サイドも化粧品に注目する。松屋は銀座インズ(東京都中央区)内で5月をめどに、化粧品のセレクトショップ「フルーツギャザリング」を設ける。

 20―30代前半女性をメーンターゲットに、約20ブランドを集積する。京王百貨店新宿店(東京都新宿区)は婦人服フロアの一部を改装し、ナチュラルコスメなどの売り場を3月16日に開く。

 2月27日にはさくら野百貨店仙台店(仙台市青葉区)を運営するエマルシェ(同)が破産し、翌28日には西武筑波店(茨城県つくば市)と同八尾店(大阪府八尾市)が閉店した。

 3月にも三越千葉店(千葉市中央区)などが閉店を予定するなど、百貨店業界を取り巻く環境は厳しい。近内日本百貨店協会専務理事は、商品の価値を見つめ直して消費者をつかんだ化粧品業界の事例は「他の領域にも参考になる」と語る。
                

(文=江上佑美子)
日刊工業新聞2017年3月3日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
う~ん、メーカーの努力と言ってしまったら身も蓋もないが・・。対面とか雰囲気、1階という場所など百貨店に一番はまる商材であるのは間違いない。個人的に行くのは食品売り場だけ。結構混んでて各社が力を入れてるのが分かる。

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