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今日から全人代、中国がグローバル経済を訴える奇妙な光景

成長率「6.5%」は上振れ?下振れ?最大の波乱要因はトランプ政権
今日から全人代、中国がグローバル経済を訴える奇妙な光景

ダボス会議で演説する習近平国家主席(世界経済フォーラム公式ページより)

 中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が5日、開幕する。秋に指導部人事が決まる5年に一度の共産党大会を控え、大胆な改革は避け、安定を重視した政策を打ち出すとみられる。経済分野では2016年に「6・5―7%」としていた実質国内総生産(GDP)成長率の目標を何%に設定するのかが焦点になる。

 中国政府系のシンクタンクや国際通貨基金(IMF)などは、17年の中国の成長率を「6・5%前後」と予測する。

 全人代に先立ち各省、自治区、直轄市が発表した成長率目標を大和総研が分析したところ、16年は6・5―7%などと一定の幅を持たせた地方が8カ所あったのに対し、17年は2カ所に減少。中央政府の目標でも、17年はよりピンポイントで6・5%前後に設定される可能性が高いと分析している。

 足元の中国経済は、輸出と民間投資の弱さなどから下方圧力が強く、多くの中国専門家が17年は16年より成長率が低下すると見込む。しかし、富士通総研の金堅敏主席研究員は「昨年並みの6・5―7%になる可能性もある」と見る。

 根拠としては、四半期ベースのGDP成長率が直近の16年10―12月期は6・8%と、3四半期連続の6・7%からわずかながら上向き始めたことがある。

国内消費に明るさ


 ネット通販を中心に消費が前年比10%増と堅調な中、今後は人民元安から海外での爆買いを控え、その分を国内消費に回す可能性がある。

 さらに秋の党大会に向け「良い雰囲気を醸成する」(金主席研究員)には、成長率は下がらない方がよいとの見立てだ。

 上振れする見方がある一方、下振れリスクもある。最大の要因は中国の対米貿易黒字を公然と批判する米トランプ政権の誕生だ。大統領就任初日に中国を為替操作国に認定する公約は実行せず、足元は現実路線に修正されつつあるものの、依然として中国製品に45%などと高関税を課す可能性は消えていない。

 中国の輸出に占める米国の割合は18・4%と国別で最も高く、中国の貿易黒字約5000億ドル(約57兆円)のうち、半分が米国向けだ。米国への輸出が滞れば、中国経済の減速圧力が一段と高まるのは必須だ。

対米輸出、日本にも影響


 もっとも中国は韓国や日本、台湾などから部品・部材を輸入し、完成品にして米国へ輸出するケースが多い。中国の対米輸出が失速すれば、「日本や韓国なども大きな影響を受ける」(齋藤尚登大和総研主席研究員)恐れもある。

 欧州連合(EU)でも保護貿易の動きが台頭していることも気がかりだ。EU向けの輸出は米国に次いで多い。滞れば、輸出全体への影響は少なくない。

 中国は秋に党大会を控え、対外的に譲歩はしにくく、トランプ政権の出方次第では関係悪化がエスカレートしかねない。

 ただでさえ敏感な年に先の読めない米大統領が誕生し、「最も悪いタイミングでトランプが出てきた」と中国専門家の間でよく言われる。17年は中国経済にとって国内外で波乱の多い1年となりそうだ。
(文=大城麻木乃)
日刊工業新聞2017年3月3日「深層断面」から抜粋
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
今年1月のダボス会議で存在感を示した中国。保護主義に傾く米国に成り代わり「グローバル経済の重要性」を訴える様子は何とも奇妙に映りました。

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