メキシコ投資、逆風下でも日系企業の進出を後押しする理由

30年前、きっかけはタイだった。日鉄住金物産「我々は最後までケアをする」

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リンテルの工業団地にはすでに約100社の日系企業が進出済みだ
 トランプ米大統領の政策で先行き不透明感が増しているメキシコ経済。それでも日鉄住金物産は、日本企業を対象としたメキシコ進出支援事業を予定通り立ち上げた。現地の工業団地開発会社の総代理店として、日本国内での準備から現地の視察や交渉、契約、その後の諸手続きまで全業務を日本人スタッフが手厚くサポート。しかも無報酬でサービスを提供する。これにより逆風下ながら、1社でも多く現地進出を実現させる構えだ。

 もともと同社はタイで30年近く工業団地事業を展開しており、多くの日系企業を誘致してきた。「タイがほぼ一巡したので、日系の進出が増えているメキシコでサポートできないかを考えた」(林邦亮インフラ事業推進部長)のがきっかけ。

 特にタイの次の進出先としてメキシコを挙げる企業が多かったことが決め手になった。「営業活動でタイへの進出企業に次の投資先を尋ねると、10人中8人がメキシコと答え、次もタイという人はゼロだった」(同)そうだ。

 しかも、タイ駐在者がその経験を買われ、そのままメキシコ進出を任されるという企業も多かった。「私がタイで一緒だった方がメキシコにも来られていた。これは我々の出番だと思った」と語る。加えて、タイに比べメキシコの裾野産業の集積は圧倒的に少ない。商機は十分にある。

 ただ、タイのようにいきなりの参入は困難と考え、まずは現地の工業団地開発会社と提携することにした。昨年3月に初めて現地を訪問。中央高原のバヒオ地区に照準を定め、現地企業4社と面談した。

 「各社と話をする中、当社を将来にわたるパートナーとして見てくれた」というリンテル(チワワ州)と相思相愛の関係に。自動車工場の近くに団地を多数持つ点も大きかった。昨夏に合意し、日本企業を対象とした総代理店契約を結んだ。

こういう時だからこそ、先行者利得を獲得


 リンテルは開発中を含め9団地を保有。総面積は約2300万平方メートルに及ぶ。すでに約100社の日系企業が入居済みだ。先行組の企業は現地の仲介業者を介して進出作業を行ったが、「今後は仲介業者と現地でしていたやりとりを日本でできるようになる。それに仲介業者は売ったら終わり。我々は最後までケアをする」と違いを強調する。

 操業後も商社機能を生かし、調達や物流面でのサポートを行う方針。さらに、タイの工業団地で好評を得ている情報交換会や悩み相談、ゴルフ大会といったソフト面でのサービスも検討している。
セミナーにはアルマーダ大使(左)も急きょ登壇し、進出を呼びかけた

 2月1日にはスタートアップとなる投資セミナーを都内で開催。“トランプ効果”で集客が不安視されたが、70人程度の予測に対し約180人が出席。盛況となった。

 急きょカルロス・アルマーダ駐日メキシコ大使も登壇し、「日本と経済連携協定を結んで以来、我々には200億ドルの対メキシコ投資に対する責任がある」と不安を打ち消した。

 現地に常駐する佐藤弘規マーケティングマネジャーも「こういう時だからこそ、先行者利得を獲得すべく進出して頂きたい」と強く訴えた。

日刊工業新聞2017年3月3日

COMMENT

神崎明子
デジタルメディア局
編集委員

2月28日のトランプ大統領の施政方針演説では、メキシコへの言及があまりみられなかったため、これまでの強硬路線から現実路線に転換しつつあるのではとの見方もあるようです。

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