東芝が売却検討。スマートメーター子会社と描いた世界への足がかり

ランディスと連携し電力流通事業に風穴を開けるはずだったが・・

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2011年のメータリングヨーロッパの会場、東芝首脳陣とランディス社長(左、当時)
 東芝が、スマートメーターの海外会社のランディス・ギア(スイス)の売却を検討していることが明らかになった。売却額は2000億円超を見込でいる。同社は東芝は2011年、ランディス・ギアの全株式を23億ドルで買収。現在は東芝が株式の60%、官民ファンドの産業革新機構が40%を持つ。

 関係者の話として、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)やブラックストーンなどが取得に関心を示すとみられ、東芝はスイスの金融大手UBSを雇い、検討を進めているという。新規株式公開(IPO)の可能性もある。ランディス・ギアは世界30カ国以上で事業を展開、従業員数は5700人以上。一体、どんな会社なのか。

アンサルドと組み合わせ、買収効果高める


 5月、東芝が世界を驚かせた。スマートメーター(通信機能付きの電力量計)最大手のスイスのランディス・ギア買収に合意したからだ。産業革新機構の出資分も合わせると23億ドル(約1863億円)の大型案件。世界30カ国で事業を展開するランディスを傘下におさめたことで、スマートグリッド(次世代電力網)を核とした電力流通事業で世界に打って出る足がかりができた。

 電力流通は送変電部門とも呼ばれ、地場の企業が強い。東芝の電力流通部門は機器の輸出からスタートし、1990年代にアジアや中東に拠点を設けて本格的な海外展開を目指した。

 今では売上高の半分以上を海外が占める。しかし先進国への参入は難しかった。ランディス買収は、東芝が本気で欧米市場に挑戦する意思のあらわれだ。

 もちろんメーターがすべではない。ランディスほど注目されなかったが、東芝は3月にイタリアの重工業大手アンサルドグループの送変電設備部門を買収した。失敗に終わった仏アレバの同部門買収に比べれば小粒だが、小さいながらも欧州市場で戦う武器を手にしたことになる。

 すでに成果も表れている。アンサルドは9月末にローマ市の公社から電気自動車用充電の実証システムを受注した。蓄電池や太陽電池、スマートメーターを組み合わせてスタンドに電力を供給する。成功すれば100カ所以上の受注が見込めるという。

 東芝の執行役常務の横田岳志は「ランディスがなかったら(蓄電池などの機器があっても)『メーターはどうするんだ?』と言われてしまう。アンサルドと組み合わせることでシームレスに全部やれる。相手の信頼感が全然違う」と買収効果を語る。

 ランディス買収に伴って、東芝は15年度の電力流通関連の事業規模の目標を2000億円上乗せした。スマートメーターの顧客である各国の電力会社に向けてスマートグリッドを売り込む。

 執行役専務の渡辺敏治は「ランディス買収を海外展開につなげるのが、東芝にとって最も重要な海外戦略だ」と話す。

 実際の電力流通事業は国・地域ごとに戦略が異なる。省エネルギー型のスマートグリッドへの期待が強い欧州は、アンサルドのようなエンジニアリング系の協力企業を探し、開拓していく意向だ。米国は旧式の送電網が更新期を迎えており、潜在的な大市場という。

 これに成長市場であるBRICsへの取り組みが加わる。ロシアはサンクトペテルブルクに変圧器の製造・販売合弁を設立。中国は自国の電気機器メーカーが育ちつつある。東芝はこれに対抗するため、現地の電力会社と合弁企業を展開している。横田の言う「グローバルかつローカルなオペレーション」が飛躍のカギを握る。
(敬称略)
※内容、肩書は当時のもの

日刊工業新聞2011年10月26日

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

官(経産省)、東電、東芝の三位一体で歩んできたエネルギー事業モデルがどんどん崩れていく。産業革新機構の絡んだ中でも最も筋の悪いディールだろう。

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