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世界最高クラスの機械学習計算性能とうたわれる「AI橋渡しクラウド」とは何か

今年度2次補正予算で195億円がついた産総研の拠点整備
 産業技術総合研究所は人工知能(AI)技術を支える機械学習の超高速処理が行える、大規模な省電力クラウド基盤「AI橋渡しクラウド」を構築する。製造業をはじめ日本の産業が必要とする機械学習をアウトソーシングできる場として、2018年の稼働開始を予定。大企業との共同研究やベンチャー企業への技術移転も目指す。国は16年度2次補正予算で、同クラウドの構築を含む産総研の人工知能に関する研究拠点整備に対し、195億円を充てた。IBMやグーグルといったグローバル企業がAIの技術開発に血道をあげる中で、日本企業の産業競争力強化にどうつなげていくのか―。その狙いを探った。

 「10年前のAIはサイバースペースの中で進んできた。それがIoT(モノのインターネット)と連動することで実世界からデータが取れるようになり、AIの枠組みが一段と広がった」。こう説明するのは、産総研人工知能研究センターの辻井潤一研究センター長だ。IoTやビッグデータ解析といった技術の広がりを受け、AIがあらゆる産業と関わりをもち始めている。一方でITや金融、マーケティング、流通分野が強い米国など諸外国とは対照的に、日本は工場やサービス業の接客現場などに知の蓄積がある。高齢化社会の到来を受け医療・介護サービスの高度化も課題となっている。

 こうした状況下で、辻井センター長は「日本のAIは、ブームのわりに小粒になってきている。海外は骨太だ」と指摘する。実際に海外ではアマゾンやグーグルなどがビッグデータやAIを活用したサービス展開に舵を切っている。「今までのAI研究は、賢い人間みたいなものをつくるという方向に偏っていたが、人工知能が産業競争力の基盤になるという冷静な議論になってきていいのではないか」(辻井センター長)。日本ではAIが①サービス業、医療・介護、交通インフラ②基礎科学③モノづくり、産業用ロボットなどの各分野と融合していくとの青写真を描く。

 具体的には医療用画像診断支援、工場内の作業自動化、深層学習の進化、自然言語処理の高度化などへの用途が想定される。このAIクラウド基盤を機械学習をアウトソーシングする場として、大企業からベンチャー企業まで日本の産業が共同利用できる環境を整備していく。




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日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
日本国内では、このような機械学習の基盤を自前で構築する投資余力がある企業は、限られているとみられます。ポイントは文字通り民間との橋渡し。企業とうまく連携して、現場の知をAIに落とし込めるような取り組みが進めば、日本の産業競争力はさらに高まっていくのではないでしょうか。

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