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分社化経営からバーチャルカンパニーへ。アイシン精機が「攻め」にピボット

伊原保守社長インタビュー「電動化でシナジーは必ず出る」
 ―4月にグループ会社と四つのバーチャルカンパニー(VC)を始めます。
 「歴史的にアイシン精機グループは分社化経営で、意思決定を早くするために専門知識のプロ集団の会社をつくってきた。だが、自動運転やコネクティッド(つながる車)、電動化などに対応するには、効率化を含めて今までと違うやり方をしないと競争には勝てない。分社化の良きDNAも入れ、開発を主体に連携を取りながら徐々にまとめていきたい」

 ―どのような効果を見込んでいますか。
 「例えば、電動化では商用車の自動変速機(AT)を手がけるアイシン精機と乗用車のATのアイシン・エィ・ダブリュ、手動変速機(MT)のアイシン・エーアイが集まった格好で将来的なハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)に対応する。知見を集めてコア技術をうまくまとめたほうが、各社が個別に取り組むよりも良く、シナジーは必ず出る」

 ―バーチャルでグループ本社も設けます。
 「グループ各社の人事や経理、総務、法務、広報などの部門は業務集約による効率化を目的にグループ本社に統合する。グループ本社は各VCを統制・制御する組織というよりも、各社の共通機能を1カ所に集め、効率化を推進する組織。VCの中には全機能が入ると思っているが、ある機能の中の一部は全体でやった方が良い。例えば、調達の中でも集中購買したほうが良い部品もある」

 ―2016年度は研究開発費1700億円の計画ですが、先進分野の開発を積極化していく中で今後の状況は。
 「いくら必要になるか(各部門に)聞いたらとんでもない数字が出てきた。割り振りは決めていないが(自動運転など)先進分野に相当振らないといけない。数年は(研究開発費の増加を)覚悟している」

 ―働き方改革や人事制度の見直しは。
 「ダイバーシティー(多様性)を含めてしっかり進めていく。グループ主要6社は労働組合や初任給のほか、賃金体系も課長までは一緒だが管理職になるとバラバラ。全体のプラットフォームも考えていきたい」
(聞き手=名古屋・今村博之)
日刊工業新聞2017年2月24日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
6月に就任から2年を迎える伊原社長が掲げたテーマは「守りから攻めへ」。国内外の300以上の拠点を自ら訪れ、課題の洗い出しと解決を進めてきたが、将来を見据えた成長戦略がいよいよ動きだす。VCは市場環境変化の中で積極化しているグループ連携の新たな枠組みであり、実行力が試されている。 (日刊工業新聞名古屋支社・今村博之)

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