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九州・沖縄の地銀9行、今期は4行が減益見通し。再編の足音近づく

10月には肥後銀と鹿児島銀が経営統合。金融庁の意向は再編と資本増強はセットで
 九州・沖縄の主要地銀9行の2016年3月期は、4行の実質業務純益が減益の見通しだ。低水準の市場金利と貸し出し競争で貸出金利息収入の伸び悩みが続くと見るため。多くの銀行は金利がさらに下がると予想。地域経済は緩やかに回復しているが銀行には引き続き厳しい経営環境となる。当期利益は7行が減益を見込む。

 貸し出し競争は県境を越えたものが続く。15年度は鹿児島銀行が那覇市内に営業拠点を開設予定で沖縄県内の競争活発化が予想される。一方、多くの銀行が期待する貸出先として個人向け住宅ローン、消費性ローン、医療介護、太陽光発電などの分野を挙げている。

 15年3月期の実質業務純益は5行が減益。理由は16年3月期見通しと同じ。貸出量を増やしても貸出金利息収入が減ったケースもある。当期利益は6行が増益。肥後は株式関係、鹿児島は経費削減で利益を確保した。

 今年10月1日には、肥後銀行と鹿児島銀行が経営統合し、「九州フィナンシャルグループ」が誕生する。グループ規模は14年12月末時点で、総資産8兆5982億円。預金残高7兆5908億円、貸出金残高5兆2595億円。地域活性化や広域化、国際化など五つの営業戦略を両行で展開する。20年度、預金残高9兆円以上、貸出金残高6兆5000億円以上、業務純益450億円以上を目指す。

 両行ともに経営は安定しているが、福岡県に本拠があるふくおかフィナンシャルグループ(FFG)が南九州でも攻勢を強めており、統合してFFGの南下を防ぐ狙いもある。福岡県と隣接する熊本県の第一地銀の肥後銀は、安定経営で知られている。だがFFG発足以後は預金獲得競争が激しく、対応に追われていた。また熊本と隣接する鹿児島県が本拠の鹿児島銀もその影響を受けており、2行は連携してFFGの南下を防ぎつつ、新商品開発を含めた業容拡大策に取り組むことにした。

 九州は福岡銀行(福岡市中央区)が2007年に、熊本銀行(旧熊本ファミリー銀行=熊本市中央区)と親和銀行(長崎県佐世保市)の2行を傘下に収め、持ち株会社のFFGを設立した。現在総資産は14兆円を超える巨大地銀グループとして、福岡、熊本、長崎各県の営業強化を図っている。

 FFGの柴戸隆成社長は「金融機関同士の競争はあるが地方創生では協力も重要。協調融資という形で連携していく。新しいことをやろうとすれば生みの苦しみはあるだろう。しかし試行錯誤を恐れず積極的に取り組んでいく」という。

 
日刊工業新聞2015年05月29日 列島ネット面に加筆
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
地銀一般に言えることだが、13年3月末に金融円滑化法の期限が切れ、第二地銀や信金などが無理して支えてきた取引先の経営が厳しくなってきている。金融機関は債務者区分を依然『正常先』にして引き当てを積んでいない。引き当てしようにも自己資本が足りない。大手地銀でも地場の有力企業に貸し込んでいるケースもある。金融庁の金融機関への資本増強は再編の中で行われる可能性が高く、各地銀に再編の青写真を描けということだろう。

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