映画「ミクロの決死圏」のように医師が人間の体内を歩き回る医療
VR技術を患者の体内観察・診断に活用
GEヘルスケアで働くエンジニア、リュドヴィク・アヴォとヤニック・ルベールの二人は大のビデオゲーム好き。そのうちのひとり、製品デザイナーのアヴォは、核戦争後のボストンの街を舞台とした没入感あるゲーム「Fallout 4」がお気に入り。
ある日のこと、彼はゲームを楽しみながら、ふとアイディアをひらめきました。それは、医師がビデオゲームのテクノロジーを利用して、映画『ミクロの決死圏』のように人体に入り込み、臓器や組織を調べたり病気を見つけたりできないか、というもの。
医療用画像のエンジニアであるルベールも、仮想現実(VR)を活用して、医師が人間の体内を歩き回る方法を開発したいと考えていた。そこで、いくつかの試作品を制作した後、ふたりは自分たちのアイディアを実行に移した。
米ゼネラル・エレクトリック(GE(には、製品デザイナー達が通常業務とは違うプロジェクトに取り組むことができる“ハックウィーク”というプログラムがある。
これを活用して、彼はフランスのビュクにある、GEヘルスケアの医療用画像ソフトウェア開発の中枢を担う施設を訪れた。
そこで、VRの設計ツールやゲームソフトを利用し、CTスキャナー(コンピュータ診断撮影装置)やMRIスキャナー(磁気共鳴断層撮影装置)の詳細な3D情報をもとに、完璧な色や質感、明るさを持たせたモデルをバーチャル上に創出したのだ。
これを使うと、医師は肺胸膜にかかる光や本来ピンクの脳が灰色になっているといった変化を観察できるほか、体の特定の部位に「潜入」して、ポリープや腫瘍、病変などを詳細に診察することが可能になる。
今回使用しているトラッキング・システムは極めて正確に動作を追跡するので、「ほかのVR環境のように、ユーザーがめまいを起こすこともありません」とルベール。
また、このプロトタイプではオキュラス・リフト(Oculus Rift®)のような市販のVRヘッドセットを使用でき、医師は医療用画像の新たな解釈が得られるほか、手術への入念な準備を行うことができるので、医療の世界の大きなターニングポイントとなる可能性も。
GEヘルスケアのグローバルUX(ユーザーエクスペリエンス)担当のゼネラルマネージャー、フランソワ・ランファンは「患者の脳を再現したバーチャルな部屋に入るとイメージしてみてください」と話す。
「詳しく見たい部分は拡大したり、脳細胞の中に入り込むようにして見たりすることができるんです。画像に没入することで、直感的に作業を進め、新たな視点を得ることができます」(フランソワ・ランファン)。
これまで、画像技術の最先端と言えば3D画像で、このフランスの施設はGE製スキャナーで撮影した画像から3D解剖モデルを構築する技術のパイオニアだった。
このモデルを利用すれば、医師は特定の臓器をピンポイントで確認できる。例えば、冠状動脈狭窄にフォーカスして、空洞部分を奥までのぞき込むこともできたりする。また、3Dプリンターで実際に手にとれる臓器モデルを作ることも可能だ。
その先を行くのが仮想現実である。ゲームの世界で一般的になってきているVRも産業的にはまだ未成熟な段階。アヴォとルベールは「オープンイノベーションとデザイン思考プロセス」を活用して、VRをヘルスケアや診察の新たな重要ツールにしようとしている。
2人は昨年パリで開催されたカンファレンスでこのVRのプロトタイプを発表した。プロトタイプを試した約200人の放射線科医や外科医から得られたフィードバックは、「すべてポジティブ」なものだった。
GEは今年中にフランスの顧客と一緒にVRシステムのテストを開始、その後、米国やアジアでも展開する予定。このプロトタイプはまず、医師が人体のさらに深い理解、病状のよりよい特定方法を見つけるための支援ツールとして活用されることになるだろう。
最終的には、診断だけでなく手術前の手順の確認や、手術後の経過のダブルチェックもできるようになるとアヴォは期待している。
ルベールとアヴォの頭の中には、すでに次なるアプローチの案がある。「拡張現実に注目している」というルベールは、「3D映像と技術情報を重ね合わせて、今見ている現実の世界に融合させるんです。このテクノロジーは(最終的に)、手術中の医師をガイドするために利用され、医師は患者の体内に入れたツールをリアルタイムに見ることができるようになるでしょう」という。
一方で、GEのエンジニアたちは人工知能の研究も進めている。その進歩によって、今後はマシンだけでガンを識別できるようになる日が来るかもしれない。
現時点ではまだ、人間による判断が重要な決め手となっている。ですから、ルベールとアヴォはプロトタイプをできる限りビデオゲームの感覚に近づけようと努力した。
アヴォは言う。「マルチプレーヤー機能を使うことで、ひとつの症例を複数の医師が確認できるようにしたいんです。このビデオゲーム、きっとどんな医師もプレーしたいと思ってくれるはずですよ」
ある日のこと、彼はゲームを楽しみながら、ふとアイディアをひらめきました。それは、医師がビデオゲームのテクノロジーを利用して、映画『ミクロの決死圏』のように人体に入り込み、臓器や組織を調べたり病気を見つけたりできないか、というもの。
医療用画像のエンジニアであるルベールも、仮想現実(VR)を活用して、医師が人間の体内を歩き回る方法を開発したいと考えていた。そこで、いくつかの試作品を制作した後、ふたりは自分たちのアイディアを実行に移した。
通常業務とは違うプロジェクトで
米ゼネラル・エレクトリック(GE(には、製品デザイナー達が通常業務とは違うプロジェクトに取り組むことができる“ハックウィーク”というプログラムがある。
これを活用して、彼はフランスのビュクにある、GEヘルスケアの医療用画像ソフトウェア開発の中枢を担う施設を訪れた。
そこで、VRの設計ツールやゲームソフトを利用し、CTスキャナー(コンピュータ診断撮影装置)やMRIスキャナー(磁気共鳴断層撮影装置)の詳細な3D情報をもとに、完璧な色や質感、明るさを持たせたモデルをバーチャル上に創出したのだ。
これを使うと、医師は肺胸膜にかかる光や本来ピンクの脳が灰色になっているといった変化を観察できるほか、体の特定の部位に「潜入」して、ポリープや腫瘍、病変などを詳細に診察することが可能になる。
今回使用しているトラッキング・システムは極めて正確に動作を追跡するので、「ほかのVR環境のように、ユーザーがめまいを起こすこともありません」とルベール。
また、このプロトタイプではオキュラス・リフト(Oculus Rift®)のような市販のVRヘッドセットを使用でき、医師は医療用画像の新たな解釈が得られるほか、手術への入念な準備を行うことができるので、医療の世界の大きなターニングポイントとなる可能性も。
GEヘルスケアのグローバルUX(ユーザーエクスペリエンス)担当のゼネラルマネージャー、フランソワ・ランファンは「患者の脳を再現したバーチャルな部屋に入るとイメージしてみてください」と話す。
「詳しく見たい部分は拡大したり、脳細胞の中に入り込むようにして見たりすることができるんです。画像に没入することで、直感的に作業を進め、新たな視点を得ることができます」(フランソワ・ランファン)。
これまで、画像技術の最先端と言えば3D画像で、このフランスの施設はGE製スキャナーで撮影した画像から3D解剖モデルを構築する技術のパイオニアだった。
このモデルを利用すれば、医師は特定の臓器をピンポイントで確認できる。例えば、冠状動脈狭窄にフォーカスして、空洞部分を奥までのぞき込むこともできたりする。また、3Dプリンターで実際に手にとれる臓器モデルを作ることも可能だ。
手術後の経過チェックも
その先を行くのが仮想現実である。ゲームの世界で一般的になってきているVRも産業的にはまだ未成熟な段階。アヴォとルベールは「オープンイノベーションとデザイン思考プロセス」を活用して、VRをヘルスケアや診察の新たな重要ツールにしようとしている。
2人は昨年パリで開催されたカンファレンスでこのVRのプロトタイプを発表した。プロトタイプを試した約200人の放射線科医や外科医から得られたフィードバックは、「すべてポジティブ」なものだった。
GEは今年中にフランスの顧客と一緒にVRシステムのテストを開始、その後、米国やアジアでも展開する予定。このプロトタイプはまず、医師が人体のさらに深い理解、病状のよりよい特定方法を見つけるための支援ツールとして活用されることになるだろう。
最終的には、診断だけでなく手術前の手順の確認や、手術後の経過のダブルチェックもできるようになるとアヴォは期待している。
ルベールとアヴォの頭の中には、すでに次なるアプローチの案がある。「拡張現実に注目している」というルベールは、「3D映像と技術情報を重ね合わせて、今見ている現実の世界に融合させるんです。このテクノロジーは(最終的に)、手術中の医師をガイドするために利用され、医師は患者の体内に入れたツールをリアルタイムに見ることができるようになるでしょう」という。
一方で、GEのエンジニアたちは人工知能の研究も進めている。その進歩によって、今後はマシンだけでガンを識別できるようになる日が来るかもしれない。
現時点ではまだ、人間による判断が重要な決め手となっている。ですから、ルベールとアヴォはプロトタイプをできる限りビデオゲームの感覚に近づけようと努力した。
アヴォは言う。「マルチプレーヤー機能を使うことで、ひとつの症例を複数の医師が確認できるようにしたいんです。このビデオゲーム、きっとどんな医師もプレーしたいと思ってくれるはずですよ」
この記事は開発段階の技術を取り上げたもので、現在取り組んでいる研究および開発について記載しています。このテクノロジーは現在、製品化されておらず、今後も製品の構成要素とならない可能性があります。また未販売であり、米食品医薬品局の許可や承認を受けたものではありません。