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米原発子会社「火のついたボールを誰が受け取ってくれるのか」(東芝幹部)

WHの米破産法申請を検討。出資比率の引き下げも狙うが・・
米原発子会社「火のついたボールを誰が受け取ってくれるのか」(東芝幹部)

建設コストが膨らんだ米スキャナ電力のVCサマー発電所

 東芝が原子力発電事業子会社の米ウエスチングハウス(WH)について、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用申請を検討していることが24日分かった。巨額損失の発生源となった米原発事業の今後の改革案について「右から左までプランを用意して議論する」(東芝幹部)とし選択肢の一つとして検討を進める。一方、東芝はWHに対して債務保証をしており、東芝幹部は「破産法の適用を申請するうえでの課題」と語った。

 東芝は原発事業で7125億円の損失を計上し、2017年3月期に債務超過に陥る公算が大きい。引き続き米原発事業が最大の経営課題となるため、幅広くリスク低減策を探る。

 「1兆円にもなったら会社は潰れちゃうでしょ」―。東芝が米原子力発電事業での巨額損失リスクを公表した16年12月末。幹部の口ぶりにはまだ余裕があった。しかし14日、発表した損失額見通しは7125億円に膨らんだ。

 原因となったのは米原発子会社のウエスチングハウス(WH)が15年12月に買収した米CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)。S&Wが手がける土木建設で労務費などが膨らみ、61億ドル(約6943億円)の追加コストが明らかになったことなどが、巨額損失につながった。

 原発事業の今後の方向性として海外展開の縮小を打ち出した。収益が安定している燃料・サービスや機器供給は継続の一方、リスクの高い土木建設からは撤退。証券アナリストは「現時点で打てる現実なリスク低減策としては妥当」と評する。

 ただリスクの芽はあちこちに残っている。例えば中国での原発プロジェクト。土木建設には携わっていないものの、「(顧客である)電力会社との契約内容について十分な説明がなされておらず、リスクが読みきれない」(証券アナリスト)。

 また15日には米プロジェクトを巡りWHが電力会社と完工時期延期に関する協議を始めた。今後ずるずると工期が延びれば当然、追加コストがのしかかる。

再建策への切り込み甘い


             

 東芝社外取締役の1人は原発事業の再建策について「切り込みが甘い」と指摘する。同事業を健全化していくためには、足を引っ張るWHとの関係を見直していけるかが最大の焦点となる。

 東芝は現在WHの株式の87%を保有している。東芝の綱川智社長は「良きパートナーを探し、保有比率を引き下げていく」と語ったが、実効性には疑問符が付く。

 世界的に原発ビジネスを取り巻く環境は厳しい。WHでは事業面でのリスクに加え、内部統制不備の疑いも発覚した。WHの切り離しは、海外原発リスクという底なし沼から脱する方策ではある。しかし東芝幹部は呟く。「火のついたボールを誰が受け取ってくれるのか」。
日刊工業新聞電子版2017年2月25日の記事に加筆
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
ベターな選択でしょう。ただこれで本当にリスクがこれで確定できるのか注意も必要。そしてWHの買い手は簡単に見つからない。半導体を切り離し、原発も大幅見直し。さて残った東芝をどうするかも、しっかり描かないといけない。

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