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太陽光発電も責任を負う時代に。「安価」と「安定」を身につけられるか

これからはマーケティングが求められる
 再生可能エネルギーで作った電気の固定価格買い取り制度(FIT)の改正が4月に迫ってきた。太陽光発電に偏重した再生エネ普及を見直す改正となっており、太陽光発電業界は変革が迫られる。長年、太陽光発電産業の支援に携わり、政府の研究会などで委員を務める資源総合システム(東京都中央区)の一木修(いっき・おさむ)社長に、改正後の生き残りに必要な事業戦略を聞いた。
一木修社長

 ―FIT改正で電力会社との接続契約を結ばない未着工の事業計画は、政府からの認定が取り消されます。
 「制度の不備の見直しになる。認定が取り消されなかった事業は着工が促されるので、新規導入量は年500万キロワットの需要が5年は続くだろう(16年は860万キロワット)。太陽光発電も基幹エネルギーとして、責任を負う時代になる。今までと違い、一歩“上がった”世界になる」

 ―「責任」とは具体的に何でしょう。
 「再稼働が見通せない原子力発電所を補うのは再生エネだ。その責任を果たすために太陽光発電は『安価』と『安定』を身につける必要がある。部材コストが低下しており、安価は実現できるだろう。発電の変動を抑え、夜にも安定利用するためのエネルギー貯蔵を準備しておくべきだ」

 ―それでは「一歩上がった世界」とは。
 「今までは太陽電池があれば、使ってくれた。これからはマーケティングが求められる。建材に合わせた仕様、自動車に載せられる仕様など、ユーザー産業が主導する。また、蓄電池やICT(情報通信技術)との技術集約、水素製造や電力融通、仮想発電所など新サービスとの融合も出てくる」

 ―海外進出も課題では。
 「FITが開始され、バブル的に需要が生まれた国へ次々と進出していては、コスト競争に陥るだけ。500万キロワットの需要が続く日本で、新しいビジネスモデルを“何層”も作るべきだ。例えば下層階のビジネスは新興国へ、上層階のビジネスは先進国へと、市場性に応じた進出ができる」

 ―中国の太陽光バブルが終わりそうです。海外市場の見通しは。
 「人口5000万を超える国のうち、太陽光の導入を推進していない国がまだまだある。それだけ潜在需要があるということ。世界は年1億キロ、2億キロワット(16年は7500万キロワット)の市場に入ろうとしており、日本企業の将来像を考える時にきた」

【記者の目・事業変革への挑戦カギ】
 FIT改正後の見通しについて、業界からは悲観的な声が聞かれる。一木社長が提言するように、年500万キロワットの需要が続くうちに、いろいろな新規ビジネスを実証できそうだ。改正後、新規導入の需要は減る見通しだが、市場は消失しない。海外進出への機会と受け止め、事業変革に挑むメーカーや事業者が生き残るのだろう。
(文=松木喬)
日刊工業新聞2017年2月21日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
お金を稼ぐ道具では、原発を補う電源としての責任を果たせない。出番に備え準備をしておくべきとの意見に賛成です。「海外メーカーに太刀打ちできなくなったから日本メーカーは蓄電池などを組み合わせたシステム化に走っている」という声が聞かれますが、先にビジネスを作れば勝ちです。日本メーカーの海外進出を期待しています。

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