老舗の塗装業者が火災事故で倒産。一点集中型の受注にリスク
太洋塗装工業、現場の工期が延び発注元からの支払い滞る
業歴50年超の塗装業者である太洋塗装工業が、1月11日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。現場で発生したトラブルが資金繰りを逼迫(ひっぱく)させ、倒産に至った。
同社は1960年8月に設立。大手石油販売業者の給油所の塗装工事を皮切りに、他の業者の給油所案件も担当。各社から貯水タンク、プラントなどの特殊塗装も数多く受注し、技術力が評価されるようになった。最盛期となる93年12月期に売上高約30億6800万円を計上。官公庁の案件を増やしながら、大阪や福岡にも支店を置くなど全国展開するまでに成長した。
しかし、景気不況や公共事業の減少とともに業容は縮小。近時は年商10億円規模だった。収益性は維持しながら経営を続けていたが他社が手がける工事現場での火災がきっかけとなり、資金繰りを逼迫させた。
火災が発生したのは首都高速道路。2014年3月に渋谷区、15年2月にも江戸川区の首都高で工事中の火災事故が発生した。太洋塗装工業の現場での火災ではなかったが、相次ぐ火災で仕様変更となり、同社の現場も工期延長となった。
結果、当初の全体工期は16カ月だったが、29カ月まで膨れ上がった。これに伴い、人件費など諸費用の負担が生じる。しかし、発注元から十分な支払いを受けられず、16年夏ごろから資金繰りが大きく狂った。
当面は、金融機関の支援を受けながら毎月10日と毎月末の支払いを乗り切っていたが、ジリ貧の状態が続き、限界を迎えた。16年12月末の支払いが不可能と判断し、同月28日に従業員を解雇し、翌17年1月4日付で自己破産を申し立てた。
倒産リスクの低い安定した取引先を有していると、一点集中型の受注状況に陥りがちだが、こうしたトラブルの発生リスクを考えると、複数の取引先を有することの重要性を改めて考えさせられる。
(文=帝国データバンク情報部)
太洋塗装工業(株)
住 所:東京都板橋区幸町51−4
代 表:片岡公生氏
資本金:5000万円
年売上高:約12億1900万円
(15年12月期)
負 債:約14億400万円>
同社は1960年8月に設立。大手石油販売業者の給油所の塗装工事を皮切りに、他の業者の給油所案件も担当。各社から貯水タンク、プラントなどの特殊塗装も数多く受注し、技術力が評価されるようになった。最盛期となる93年12月期に売上高約30億6800万円を計上。官公庁の案件を増やしながら、大阪や福岡にも支店を置くなど全国展開するまでに成長した。
しかし、景気不況や公共事業の減少とともに業容は縮小。近時は年商10億円規模だった。収益性は維持しながら経営を続けていたが他社が手がける工事現場での火災がきっかけとなり、資金繰りを逼迫させた。
火災が発生したのは首都高速道路。2014年3月に渋谷区、15年2月にも江戸川区の首都高で工事中の火災事故が発生した。太洋塗装工業の現場での火災ではなかったが、相次ぐ火災で仕様変更となり、同社の現場も工期延長となった。
結果、当初の全体工期は16カ月だったが、29カ月まで膨れ上がった。これに伴い、人件費など諸費用の負担が生じる。しかし、発注元から十分な支払いを受けられず、16年夏ごろから資金繰りが大きく狂った。
当面は、金融機関の支援を受けながら毎月10日と毎月末の支払いを乗り切っていたが、ジリ貧の状態が続き、限界を迎えた。16年12月末の支払いが不可能と判断し、同月28日に従業員を解雇し、翌17年1月4日付で自己破産を申し立てた。
倒産リスクの低い安定した取引先を有していると、一点集中型の受注状況に陥りがちだが、こうしたトラブルの発生リスクを考えると、複数の取引先を有することの重要性を改めて考えさせられる。
(文=帝国データバンク情報部)
住 所:東京都板橋区幸町51−4
代 表:片岡公生氏
資本金:5000万円
年売上高:約12億1900万円
(15年12月期)
負 債:約14億400万円>
日刊工業新聞2017年2月21日