アスクルの物流倉庫火災、業績拡大の影でリスク管理に死角はなかったか

2強に対抗、「物流を制するものがECを制する」(アスクル社長)

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アスクルの物流拠点「ALP首都圏」。付近は規制線が張られ立ち入り禁止。倉庫壁面は火災で焦げてめくれ、中から煙が立ち上っている(20日、10時)
 16日朝にアスクルの物流センター「ASKUL Logi PARK首都圏」(ALP首都圏、埼玉県三芳町)で発生した火災は発生から4日以上たった20日も鎮火のめどは立っていない。

 アスクルの物流倉庫火災は、あらためて日本の物流リスクマネジメントのあり方に警鐘を鳴らしている。この事故で、アスクルは調達先からの商材を物流倉庫に大量に集約し、受注に基づいて顧客別に出荷する物流方式が裏目に出た。

 出荷精度とリードタイム短縮でビジネスの成否が決まるネット通販の物流業務で総点検が求められるのは必須で、新たな課題に直面している。

 「火を扱わない物流倉庫でなぜ出火するのか」「コピー用紙といった燃えやすいものを扱う分、5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)は徹底されるはずだ」。業界関係者はこう首をかしげる。「消火器やスプリンクラーを設置していた」とアスクルは説明するが、在庫が積み上がった倉庫内で想定以上に早く火の手が広がった可能性が高い。
ALP首都圏はピッキングに産業用ロボットを導入、効率化を追求した(アスクル提供)

 業績拡大の影で物流のリスクマネジメントに死角はなかったのか。アスクルの岩田彰一郎社長は「物流を制するものがEC(電子商取引)を制する」と唱え、他社に先駆けて物流の効率化を進めてきた。

 EC市場はスマートフォンの普及などを背景に拡大が続き、受注拡大に比例して物流現場で取扱量増加への対応が求められた。「3交代の24時間体制」(アスクル)の物流現場で、負担が増していたのは確かだ。

 国内EC市場で2強の楽天とアマゾンに対抗すべく、アスクルは物流拠点にロボットを本格導入した。それまで作業者の背丈の高さしか倉庫に商品を置けなかったが、約3倍の5メートルの高さまで在庫が可能になった。物流の効率化を徹底した最新鋭拠点での火災だった。

 アスクルは火災復旧のため、岩田社長を本部長とする対策本部を設置。近隣住民向けの電話相談窓口を開設したほか、他拠点で防火管理体制の強化など対応を急いでいる。
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(文=山下絵梨)

日刊工業新聞2017年2月21日「深層断面」から抜粋

COMMENT

 取引先企業である資生堂の魚谷雅彦社長は20日、「最新の施設でこういったことが起こったのは大変ショッキング。ALP横浜に当社から緊急で商品を納品している」とし、アスクルを全面支援する意向を示した。今回の火災を受け、コーセーは小林一俊社長が各事業部長に自社の防災体制を確認するよう指示するなど、各社で物流倉庫の防火点検の動きが広がっている。  被災した物流倉庫は復旧までにかなりの時間を要するとみられる。経営にも現場にも効率を求めるあまり危機管理の認識に対する甘さがなかったのか、厳しい検証が求められる。 (日刊工業新聞第二産業部・山下絵梨)

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