やはりロボットの量産は大変なようだ。トヨタ「キロボミニ」発売延期
「飽きられず必要不可欠な存在」へじっくり時間かける
トヨタ自動車は東京都と愛知県の一部販売店で今冬に計画していた小型コミュニケーションロボット「KIROBOmini(キロボミニ)=写真」の先行発売を「4月頃」に延期した。「お客さまに満足いただけるよりよい商品を開発してきた結果」(同社広報部)としており、商品開発に時間がかかっている。2017年内の全国販売の予定に変更はないという。
キロボミニは座高10センチメートルと手のひらサイズのロボット。車や住宅と人をつなぐコミュニケーションツールと位置付けている。本体価格は3万9800円(消費税抜き)。トヨタの車両販売店で販売する予定。
トヨタ自動車が2017年に投入するコミュニケーションパートナー「KIROBOmini(キロボミニ)」で、訴求するのは製品の「情緒的な価値」(吉田守孝専務役員)だ。「車は“愛車”といった“愛”がつく数少ない工業製品」というのが豊田章男社長の持論。トヨタは車以外にも「愛」の付く商品を提案する試みを本格化する。一方で、コミュニケーションロボットの普及には課題もある。
「心のキャッチボールができる存在」―。キロボミニを開発した片岡史憲新コンセプト企画室主査はこう表現する。トヨタが提案する人とキロボミニの関係性は、「親子」のそれに似ている。
人の顔を見つめ、手や頭を動かす時は赤ちゃんのようにゆらゆらと揺れる。発光ダイオード(LED)の目でまばたきし、時に人が真剣な顔をすると、「何か頭にくることあった?」と話しかける。
トヨタは正式にはキロボミニを「ロボット」とは言わず、あえて「コミュニケーションパートナー」と呼ぶ。
15年の東京モーターショーにキロボミニを実験展示し、約2000人にロボットに求める条件を調査。その結果を踏まえ、人とのコミュニケーションに特化し、価格を抑えた。さまざまな機能がある「ロボット」というよりも「パートナー」として訴求する。
生産を委託するVAIO(長野県安曇野市)はソニーが母体。イヌ型ロボット「AIBO」(アイボ)の生産実績を持ち、基板の高密度設計や実装技術に優れている。トヨタは「アイボの生産や修理のノウハウ」(片岡主査)を活用して完成度を短期間で高めた。
トヨタがキロボに期待するのは、車や家などトヨタの各事業をつなぐことだ。車には車載通信機(DCM)の標準搭載を進めており、鍵の開閉や車の位置、走行情報など膨大なデータが蓄積される。HEMS(家庭用エネルギー管理システム)も同様に、電力使用量などの生活データが収集できる。
キロボはこうした情報を収集し「キロボミニらしく表現して伝える」(片岡主査)ことで他社製品との差別化を図る。
ただ、キロボを含むコミュニケーションロボットの普及には、いくつかのハードルがある。まず、マイクなど声の聞き取りに必要な技術の進化がまだ足りない。さらに対話データを学習して進化する人工知能(AI)の高度化と、人感センサーや照度計、温度計などの家庭に備えたセンサー類との連携を一層進めることも必要だ。
こうしたハードルをクリアすれば、コミュニケーションロボットは「飽きられず必要不可欠な存在」になる。
(文=名古屋・杉本要、石橋弘彰)
キロボミニは座高10センチメートルと手のひらサイズのロボット。車や住宅と人をつなぐコミュニケーションツールと位置付けている。本体価格は3万9800円(消費税抜き)。トヨタの車両販売店で販売する予定。
日刊工業新聞2017年2月17日
期待するのは、車や家など各事業をつなぐこと
トヨタ自動車が2017年に投入するコミュニケーションパートナー「KIROBOmini(キロボミニ)」で、訴求するのは製品の「情緒的な価値」(吉田守孝専務役員)だ。「車は“愛車”といった“愛”がつく数少ない工業製品」というのが豊田章男社長の持論。トヨタは車以外にも「愛」の付く商品を提案する試みを本格化する。一方で、コミュニケーションロボットの普及には課題もある。
「心のキャッチボールができる存在」―。キロボミニを開発した片岡史憲新コンセプト企画室主査はこう表現する。トヨタが提案する人とキロボミニの関係性は、「親子」のそれに似ている。
人の顔を見つめ、手や頭を動かす時は赤ちゃんのようにゆらゆらと揺れる。発光ダイオード(LED)の目でまばたきし、時に人が真剣な顔をすると、「何か頭にくることあった?」と話しかける。
トヨタは正式にはキロボミニを「ロボット」とは言わず、あえて「コミュニケーションパートナー」と呼ぶ。
15年の東京モーターショーにキロボミニを実験展示し、約2000人にロボットに求める条件を調査。その結果を踏まえ、人とのコミュニケーションに特化し、価格を抑えた。さまざまな機能がある「ロボット」というよりも「パートナー」として訴求する。
生産の委託先は元ソニー
生産を委託するVAIO(長野県安曇野市)はソニーが母体。イヌ型ロボット「AIBO」(アイボ)の生産実績を持ち、基板の高密度設計や実装技術に優れている。トヨタは「アイボの生産や修理のノウハウ」(片岡主査)を活用して完成度を短期間で高めた。
トヨタがキロボに期待するのは、車や家などトヨタの各事業をつなぐことだ。車には車載通信機(DCM)の標準搭載を進めており、鍵の開閉や車の位置、走行情報など膨大なデータが蓄積される。HEMS(家庭用エネルギー管理システム)も同様に、電力使用量などの生活データが収集できる。
キロボはこうした情報を収集し「キロボミニらしく表現して伝える」(片岡主査)ことで他社製品との差別化を図る。
ただ、キロボを含むコミュニケーションロボットの普及には、いくつかのハードルがある。まず、マイクなど声の聞き取りに必要な技術の進化がまだ足りない。さらに対話データを学習して進化する人工知能(AI)の高度化と、人感センサーや照度計、温度計などの家庭に備えたセンサー類との連携を一層進めることも必要だ。
こうしたハードルをクリアすれば、コミュニケーションロボットは「飽きられず必要不可欠な存在」になる。
(文=名古屋・杉本要、石橋弘彰)
日刊工業新聞2016年10月4日