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愛知県と名古屋市、大規模展示場の整備で対立続く

“華やかな舞台”はどっち?
愛知県と名古屋市、大規模展示場の整備で対立続く

中部国際空港(愛知県のホームページから)

 名古屋市が2017年度当初予算案に計上した新たな大規模展示場の調査費を巡り、愛知県と名古屋市の対立が深まっている。市は港区の既存展示場の拡張に加え、同区の空見ふ頭に新展示場の整備を目指す。県は数十キロメートル離れた常滑市の中部国際空港隣接地に展示場を建設する計画。県内で展示場整備構想が乱立する異例の展開になっている。

 空見ふ頭の建設予定地は現在は東邦ガスが所有する工業用地。展示場にするには用途変更の必要があるが、許認可権限は名古屋港管理組合(管理者=大村秀章愛知県知事)が持つ。

 大村知事と河村たかし名古屋市長は15日、それぞれ記者団の取材に応じた。大村知事は土壌汚染の恐れなどから「適地ではない。許認可しない」と明言。河村市長は3展示場で展示面積計15万平方メートルと日本最大級になると強調し、「産業の力を落とさないために新展示場は必要だ」と力説した。

日刊工業新聞2017年2月16日



「五輪後の稼働では意味がない」


 愛知県が中部国際空港(愛知県常滑市)の空港島の県有地に展示場を新設し、2019年秋に稼働する計画を打ち出した。展示面積6万平方メートルは中部地方最大のポートメッセなごや(名古屋市港区)の1・8倍。国内2位の幕張メッセ(千葉市美浜区)、3位のインテックス大阪(大阪市住之江区)と肩を並べる。

 愛知は製造出荷額で38年間連続日本一。自動車や航空機などで次世代技術・製品の開発も活発だ。しかし展示場という“華やかな舞台”は東西に譲ってきた。

 大村秀章知事は2020年の東京五輪を好機と見た。東京周辺の展示場には使用制限がかかる。会場に困った展示会に中部開催を試してもらう作戦だ。「五輪後の稼働では意味がない」と強調する。

 建設費は可能な限り抑えるとしても「相当がんばらなければならない」。4万平方メートル以上の展示会を毎月開催するのが採算確保の目安だが、中部ではこれまで経験したことのない水準だ。

 名古屋市は県に、共同でポートメッセなごやを拡張するよう求めていた。しかし用地確保に効果的な策が打てず、県側がしびれを切らした形。両施設は競合することになるのか。県の新展示場が、地方創生を願うあまりの“賭け”になることを恐れる。

日刊工業新聞2016年2月8日

三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
地図で見る限り、市側の「空見」はいずれリニアも通る名古屋駅からのアクセスは良さそう。一方の県側の「常滑」は、導線としては現実的に中部空港一本になりそう。景気のいい愛知・名古屋なら両方建ててもなんとかなりそう、というと楽観的すぎか。ただ、東京五輪前に需要を取り込むつもりなら、展示会などの誘致活動はすでに始めていなければ遅いと思うので、ゴタゴタしている暇はないはず。

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