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東芝は虎の子の半導体メモリー事業も手放してしまうのか

「あらゆる可能性を否定しない」(綱川社長)
東芝は虎の子の半導体メモリー事業も手放してしまうのか

14日に会見した綱川社長

 東芝が半導体メモリー事業と原子力発電事業の2枚看板を下ろす決断をした。2016年4―12月期に原子力発電事業で7125億円の損失を計上する見通しとなったことが引き金を引いた。資本増強のため半導体メモリー事業は完全売却を含めて手放す方針を打ち出し、原発事業では海外展開を大幅に縮小する。東芝は何の会社になるのか。将来像はみえない。

 東芝は半導体メモリー事業を分社し、外部から出資を受け入れる方針を1月27日に示した。その際、受け入れ比率は20%未満に抑えると説明していた。それが14日には過半以上の売却も検討する方向に転換。同日の会見で、完全売却の可能性を問われた綱川智社長は「あらゆる可能性を否定しない」と答えた。

 20%未満では出資元企業のうま味が少ないことから、特に金融機関からは受け入れ比率引き上げを求める声が高まっていた。東芝は十分な資金を調達し、3月末の債務超過を回避するため引き上げを決断したとみられる。

 一方、今回の損失発生源である原発事業。米原子力子会社のウエスチングハウス(WH)が15年12月に買収した原発建設・サービス企業「米CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)」の資産価値を見直した結果、損失が膨らんだ。米国の4機合計のコスト見積もりで61億ドル(約6920億円)の増加が主な要因だ。

 対応策として海外のプラント新設事業では土木建設から撤退し、機器供給やエンジニアリングなどに特化する方針を示した。また現在、東芝はWHの株式の87%を保有するが、「パートナーを探し、東芝の持ち分を50%以下に減らすことも考える」と綱川社長は説明した。

 東芝は不適切会計問題を契機としたリストラを経てエネルギー、社会インフラ、半導体を中核3部門とし、中でも半導体メモリーと原発を成長エンジンに据えた。綱川社長は「基本路線は変わらない」と説明したが、2本柱を失えば屋台骨が揺らぐ。今後の看板事業はみえず、経営再建に暗雲が立ち込める。
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日刊工業新聞2017年2月15日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
半導体メモリーも基本的にボラタリティーが高い。中途半端に保有するならすべて切り離すのもありだと思う。個人的には医療より半導体メモリーを売却する方が先ではなかったかと思ってしまう。半導体の切り出しで一定の資金を得ても、WHを手放さない限り根本的な問題は解決しない。

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