止まらない円安、自動車業界は一転逆風!新興国の通貨安が減益要因に
トヨタは今期、営業益で450億円のマイナスインパクト。追い風は円ドルの影響を受けやすい富士重のみ
2016年3月期の乗用車7社合計の連結営業利益は前期比4・7%増の5兆1630億円となる見込みだ。各社は原価低減など体質改善を進めて稼ぐ力をつけつつある。しかし、円安を背景に、各社の利益を押し上げていた為替が16年3月期に一転、減益要因となる。各社円に対する米ドル想定レートはそれぞれ115―120円。前期と比べ、5―10円の円安に振れる見通しを立てている。円対米ドルだけでみれば引き続き追い風となるが、問題は新興国の通貨安だ。
トヨタ自動車(ダイハツ工業、日野自動車を含む)は15年3月期に2800億円の増益効果があったが、今期450億円の減益要因となる。例えばルーブル安だけで750億円のマイナス。日産自動車もルーブル、ペソなど通貨安で今期400億円の減益要因とみる。三菱自動車もルーブル安で為替が410億円の減益につながる。
調達網がグローバルで複雑化する中、“他通貨間”の負の影響も表面化してきた。「米ドルの独歩高でコストが膨らんでいる」と指摘するのは、ホンダの竹内弘平取締役常務執行役員。米国から部品を調達して、カナダやメキシコで生産すると、カナダドルやペソに対して米ドルが高くなっているため、調達コストがかさむ。
ホンダは米ドル対カナダドル、ペソ、レアルの為替影響が1060億円の減益要因となるとの見立てだ。円対米ドルの増益効果を打ち消して全体で850億円のマイナスになる。トヨタも他通貨間取引でマイナス900億円の影響が出るとみている。米州は自由貿易協定が進んでおり特に貿易が活発だ。部品調達だけでなく完成車の貿易も同様の影響を受ける。米ドル独歩高で各社の部品・完成車の貿易構造の弱点が露呈した格好だ。
結局、今期に為替がプラス要因となるのは、円対米ドルの影響を受けやすい富士重工業のみ。前期7社合計で5800億円あったプラス効果は一転1800億円の減益効果となる。
カルロス・ゴーン日産社長は「為替の対策はとにかく現地化だ。それが為替変動から身を守る唯一の手段」と話す。ホンダの岩村哲夫副社長は「地域間で生産能力を補完しあう体制づくりと、現地調達率の引き上げが課題」という。こうした対策は今に始まったことではない。新興国の通貨安によって、改めて為替に強い体制づくりが迫られている。
一方で国内生産の拡大には好影響が出てくる可能性もある。日産は米国向けで現地生産に移管した主力SUV「ローグ(日本名エクストレイル)」を、15年度後半から再び日本で生産する計画だ。「米国で供給が追いつかず円安を生かして日本から輸出する」(ゴーン社長)とし、年10万台規模を計画している。
ホンダも日本からメキシコに移した米国向け主力小型車「フィット」の生産を10月にも日本で行う。年3万台の輸出規模。グローバル生産の補完として国内の生産能力を活用するのが狙いだが円安も背景にある。余剰能力を抱えるサプライヤー間では「歓迎すべき動き」(日産系部品メーカー幹部)との声が多い。ただ完成車は生産現地化の姿勢は変えておらず、一過性で終わる可能性が高い。
トヨタ自動車(ダイハツ工業、日野自動車を含む)は15年3月期に2800億円の増益効果があったが、今期450億円の減益要因となる。例えばルーブル安だけで750億円のマイナス。日産自動車もルーブル、ペソなど通貨安で今期400億円の減益要因とみる。三菱自動車もルーブル安で為替が410億円の減益につながる。
調達網がグローバルで複雑化する中、“他通貨間”の負の影響も表面化してきた。「米ドルの独歩高でコストが膨らんでいる」と指摘するのは、ホンダの竹内弘平取締役常務執行役員。米国から部品を調達して、カナダやメキシコで生産すると、カナダドルやペソに対して米ドルが高くなっているため、調達コストがかさむ。
ホンダは米ドル対カナダドル、ペソ、レアルの為替影響が1060億円の減益要因となるとの見立てだ。円対米ドルの増益効果を打ち消して全体で850億円のマイナスになる。トヨタも他通貨間取引でマイナス900億円の影響が出るとみている。米州は自由貿易協定が進んでおり特に貿易が活発だ。部品調達だけでなく完成車の貿易も同様の影響を受ける。米ドル独歩高で各社の部品・完成車の貿易構造の弱点が露呈した格好だ。
結局、今期に為替がプラス要因となるのは、円対米ドルの影響を受けやすい富士重工業のみ。前期7社合計で5800億円あったプラス効果は一転1800億円の減益効果となる。
カルロス・ゴーン日産社長は「為替の対策はとにかく現地化だ。それが為替変動から身を守る唯一の手段」と話す。ホンダの岩村哲夫副社長は「地域間で生産能力を補完しあう体制づくりと、現地調達率の引き上げが課題」という。こうした対策は今に始まったことではない。新興国の通貨安によって、改めて為替に強い体制づくりが迫られている。
一方で国内生産の拡大には好影響が出てくる可能性もある。日産は米国向けで現地生産に移管した主力SUV「ローグ(日本名エクストレイル)」を、15年度後半から再び日本で生産する計画だ。「米国で供給が追いつかず円安を生かして日本から輸出する」(ゴーン社長)とし、年10万台規模を計画している。
ホンダも日本からメキシコに移した米国向け主力小型車「フィット」の生産を10月にも日本で行う。年3万台の輸出規模。グローバル生産の補完として国内の生産能力を活用するのが狙いだが円安も背景にある。余剰能力を抱えるサプライヤー間では「歓迎すべき動き」(日産系部品メーカー幹部)との声が多い。ただ完成車は生産現地化の姿勢は変えておらず、一過性で終わる可能性が高い。
日刊工業新聞2015年05月15日 自動車/05月28日 最終面を一部抜粋・修正