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日本の公的年金は米国のインフラ整備に回ってしまうのか

政府は関与を否定。受給者の利益になるGPIFの独立した判断を
 塩崎恭久厚生労働相は7日の閣議後の記者会見で、政府が米国への経済協力の一環として年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資金を活用するとの報道について、「GPIFは被保険者の利益のためだけに運用のことを考えるのが使命。政治判断が入ることはありえない」とし、改めて否定した。

 GPIFの運用先について、厚労相は「政府が指示することは法律上できない」と指摘。GPIFが「政府や外の人から言われ、影響を受けることは全くない」と強調した。

 安倍晋三首相も7日の衆院予算委で、「私はGPIFにそもそも指図できない」と発言。野党が政府の指示で年金資金を米国のインフラ整備に充てようとしていると批判したのに強く反論した。GPIFが独自の判断に基づいて米国のインフラに投資する可能性については「当然あり得る」と指摘した。

 一方、GPIFの高橋則広理事長は、「投資対象に契約上、米国を含むことはあり得る」と発言した。事業の採算を見極めたうえで米国にも投資する可能性があるとの認識を示した。

 10日に予定されている安倍首相とトランプ米大統領の首脳会談において、日本の公的年金を米国のインフラ投資に振り向けるプランが提案されるとの報道が先週から出ている。

 GPIFが海外のインフラ投資の案件に出資すること自体は、以前から検討が重ねられてきた。2014年10月に発表されたGPIFの運用見直し案では、全体の5%を上限に、インフラ投資を含むオルタナティブ投資(株式や債券など伝統的資産以外への投資)に資金を配分する方針が示されている。インフラ事業は安定した収益を得られやすく、実際には米国や欧州への投資が大半になるとみられる。

 
 
安東泰志
安東泰志 Ando Yasushi ニューホライズンキャピタル 会長
GPIFは受給者に対する受託者責任を全うする義務がある。海外の公的年金に比べて出遅れているインフラやPEなどオルタナティブ分野への運用を増やすのは、あるべき姿であるが、それはリスク対比リターンを上げて受給者の利益に資するためにGPIFの独立した判断でなされるのであり、政治の介入を否定した大臣答弁は極めて真っ当だ。また、仮に投資をする地域に若干のバイアスを持たせるとしたら、それは年金保険料を払う日本の労働者が働く日本経済や産業の発展に資するべきとの考え方もあり得るところだ。

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