「世界ふしぎ発見!」のリポーターが体得した“エシカル消費”とは?
末吉里花さんに聞く。環境、人・社会、地域に思いやりのあるお金の使い方
―エシカル(ethical)の意味は「倫理的」です。では、末吉さんが薦める「エシカル消費」とは。
「環境、人・社会、地域に思いやりのあるお金の使い方です。環境に負荷をかけないように作られた商品なのか、地域が元気になるモノづくりがされているのかを考えて商品を選ぶ。お金を使ってモノを買う力は微力ではない。一人ひとりの選択の積み重ねは、大きな変革の力になると信じている」
―10年以上前、テレビ番組『世界ふしぎ発見!』のリポーターを務めたことがきっかけで、エシカルに興味を持つようになったそうですが。
「収録で世界の秘境を旅し、環境破壊で生活が脅かされている人たちがいることを知った。途上国を訪れると、一部の企業の利益のために立場の弱い人たちが長時間、低賃金で働かされている構造も分かった」
「何かできないだろうかと悩んでいる時、フェアトレード(公正取引)に出会った。生産者の生活改善につながるフェアトレードを広げる活動に取り組みながら、環境、地域貢献にも枠を広げようと2014年、エシカル協会を設立した」
―では執筆のきっかけは。
「倫理的な調達方針を掲げ、世界から注目されている東京五輪・パラリンピックの開催が20年に迫ってきた。『今、エシカルを伝える時』と思い、教科書にエシカルを載せてもらいたくて出版社を訪ねた。そうしたら『ぜひ、入門書を書いて』と言われた」
―高温の環境で従業員を働かす「搾取工場」、農薬による健康被害で従業員の平均寿命が35歳の農園など、目を背けたくなる事例が紹介されています。
「洋服もお菓子も誰かの健康を犠牲にして作られているかもしれない。そういう事実を知ってもらいたかった。年齢を問わず読んでほしい。企業で働く男性にも興味を持つきっかけになればと思っている。おかげで発刊から1カ月で重版できた」
―エシカルな商品は価格が高いのではないでしょうか。価格競争にさらされている企業がエシカルに転換するのは難しいのでは。
「世界は確実にエシカルへ向かう。自由に使える資源が減っていくのだから、いずれ大量生産型のモノづくりは通用しなくなる。将来の社会を予想し、エシカルへの移行を進めておくと技術、人材、ノウハウが蓄積される。いざ、資源枯渇が起きても対処できる」
―中・長期の視点で考えることが必要ということでしょうか。
「モノへの欲求が低い若い世代が社会に出て、自分で自由にお金を使えるようになると消費の形は変わる。同じ性能の商品が並んでいたら、エシカルは選択基準になるだろう。企業の選ばれ方も変わる。社会に良いことをやっているのだから、社員のモチベーションも上がる。良い人材が集まり、企業も持続可能になる」
―商品を買って企業を応援することを「バイコット」と説明しています。では、バイコットされる企業になるには。
「モノづくりのストーリーをみせることだ。どんな人が作っているのか、どういう作り方なのか、知りたい消費者が多い。海外企業は動画サイトでストーリーを発信している」
(聞き手=松木喬)
【略歴】
末吉里花(すえよし・りか)エシカル協会代表理事。99年(平11)慶大総合政策学部卒。テレビ番組『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターを経験し、現在はフリーアナウンサー、エシカル協会代表理事。米ニューヨーク生まれ、鎌倉育ち、40歳。著書『はじめてのエシカル』(山川出版社)>
「環境、人・社会、地域に思いやりのあるお金の使い方です。環境に負荷をかけないように作られた商品なのか、地域が元気になるモノづくりがされているのかを考えて商品を選ぶ。お金を使ってモノを買う力は微力ではない。一人ひとりの選択の積み重ねは、大きな変革の力になると信じている」
―10年以上前、テレビ番組『世界ふしぎ発見!』のリポーターを務めたことがきっかけで、エシカルに興味を持つようになったそうですが。
「収録で世界の秘境を旅し、環境破壊で生活が脅かされている人たちがいることを知った。途上国を訪れると、一部の企業の利益のために立場の弱い人たちが長時間、低賃金で働かされている構造も分かった」
「何かできないだろうかと悩んでいる時、フェアトレード(公正取引)に出会った。生産者の生活改善につながるフェアトレードを広げる活動に取り組みながら、環境、地域貢献にも枠を広げようと2014年、エシカル協会を設立した」
―では執筆のきっかけは。
「倫理的な調達方針を掲げ、世界から注目されている東京五輪・パラリンピックの開催が20年に迫ってきた。『今、エシカルを伝える時』と思い、教科書にエシカルを載せてもらいたくて出版社を訪ねた。そうしたら『ぜひ、入門書を書いて』と言われた」
―高温の環境で従業員を働かす「搾取工場」、農薬による健康被害で従業員の平均寿命が35歳の農園など、目を背けたくなる事例が紹介されています。
「洋服もお菓子も誰かの健康を犠牲にして作られているかもしれない。そういう事実を知ってもらいたかった。年齢を問わず読んでほしい。企業で働く男性にも興味を持つきっかけになればと思っている。おかげで発刊から1カ月で重版できた」
―エシカルな商品は価格が高いのではないでしょうか。価格競争にさらされている企業がエシカルに転換するのは難しいのでは。
「世界は確実にエシカルへ向かう。自由に使える資源が減っていくのだから、いずれ大量生産型のモノづくりは通用しなくなる。将来の社会を予想し、エシカルへの移行を進めておくと技術、人材、ノウハウが蓄積される。いざ、資源枯渇が起きても対処できる」
―中・長期の視点で考えることが必要ということでしょうか。
「モノへの欲求が低い若い世代が社会に出て、自分で自由にお金を使えるようになると消費の形は変わる。同じ性能の商品が並んでいたら、エシカルは選択基準になるだろう。企業の選ばれ方も変わる。社会に良いことをやっているのだから、社員のモチベーションも上がる。良い人材が集まり、企業も持続可能になる」
―商品を買って企業を応援することを「バイコット」と説明しています。では、バイコットされる企業になるには。
「モノづくりのストーリーをみせることだ。どんな人が作っているのか、どういう作り方なのか、知りたい消費者が多い。海外企業は動画サイトでストーリーを発信している」
(聞き手=松木喬)
末吉里花(すえよし・りか)エシカル協会代表理事。99年(平11)慶大総合政策学部卒。テレビ番組『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターを経験し、現在はフリーアナウンサー、エシカル協会代表理事。米ニューヨーク生まれ、鎌倉育ち、40歳。著書『はじめてのエシカル』(山川出版社)>
日刊工業新聞2017年2月6日