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新幹線、最新の修繕工場はどうなってるの?

JR東海・浜松工場ルポ。「一筆書きの流れの効率的なライン」
新幹線、最新の修繕工場はどうなってるの?

新幹線の先頭車両の研ぎ作業へのロボット導入は日本初

 日本の交通の大動脈である東海道新幹線。時刻表通りの正確な運行を支えるのが、車両の適切な保守作業だ。浜松工場(浜松市中区)は東海道新幹線の車両を検査・修繕する唯一の工場。3年間または120万キロメートルの走行以内に実施する。

 JR東海は耐震化と検査ラインの効率化のため、2010年に大規模改修工事を始め、ほぼ完了した。田中雅彦工場長は従来のラインを「車両の流れが複雑で、作業性の向上に限界があった」と振り替える。

 新ラインでは建物の配置を見直し、「一筆書きの流れの効率的なラインが完成した」と胸を張る。

 修繕作業を自動化で効率化したことも特徴だ。一つが先頭車両の研ぎ作業へのロボットの導入だ。塗装前に塗料の密着性を高めるため、表面を粗くする作業で、従来は2人が3時間20分かけていた。6本のアームのロボットでは40分で済む。

 塗装作業にもロボットを導入した。環境負荷低減のため、油性塗料から水性塗料に移行。自動化で水性塗料の難点である温・湿度管理をクリアした。

 田中工場長は研ぎロボットについて「均一に作業でき、品質を向上できる」と利点を挙げる。自動化で技能伝承が難しくなる恐れについては「すべて機械が行うのではなく、仕上がりは人が判断する」と技能を引き継げると説く。

 各工程の作業環境も見直した。車体と台車を切り離す車体上げ作業では、天井クレーンからリフティングジャッキに手法を変更。作業者の適切な高さに調整できるため、作業効率や安全性が高まる。

 こうした改善の積み重ねもあり、検査・修繕の日数は、従来の15日から1日短縮した。新幹線の輸送体制のさらなる向上につながる。
(文=名古屋・戸村智幸)
日刊工業新聞2017年2月3日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
新幹線車両は3年間または120万キロメートルの走行以内に、浜松工場で検査・修繕される。先頭車両では、塗装しやすくするため表面を粗くする作業が必要になる。日本車両製造とパナソニック環境エンジニアリングが納入したロボットは、6本のアームが自動で研ぐため、時間短縮と品質の安定化につながっているという。

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