白物家電はIoTで成熟産業から抜け出せるか
販売復調も新たなイノベーションを模索
日本電機工業会(JEMA)が発表した2016年の白物家電の国内出荷額は、前年比4・5%増の2兆3028億円と3年ぶりのプラスとなった。夏の天候不順などのマイナス要因があったものの、高機能・高付加価値品が好調で、高い水準となった。
製品別の出荷金額はエアコンや冷蔵庫などがプラスに転じた。エアコンが同2・7%増の6809億円、洗濯機が同11・4%増の3191億円、冷蔵庫は同4・7%増の4273億円と前年実績を上回った。
製品別の出荷数では、洗濯機が同5・9%増の439万7000台と5年ぶりのプラスになった。エアコンは同3・1%増の835万2000台、冷蔵庫は同2・7%増の381万5000台と両製品とも3年ぶりのプラスとなった。また、電子レンジやIHクッキングヒーターなども堅調だった。
JEMAは好調の要因について、エアコンや冷蔵庫など主力の大型製品が好調だったと分析した。17年も高機能・高付加価値製品の需要増が続きそうだとみている。
家電同士や、家電と家具の機能を合わせた「合体家電」が注目されている。家電単品の多機能化が進んでいたが、他製品の機能の代替・吸収が始まった。さらに合体家電として一体化すれば、操作や管理の手間を軽減できる。その背景には人工知能(AI)技術の進化や、共働き世帯の増加など生活の変化がある。生活に変革を起こす合体家電の動向を追った。)
「掃除をしながら空気清浄はできないか」。三菱電機デザイン研究所の四津谷瞳さんは「掃除機をかけた時に舞うホコリで、空気が汚れてしまう」という悩みを聞いた。開発したのが三菱電機のコードレスクリーナー「インスティック」だ。
掃除機と空気清浄機を合体させることで、床面清掃だけでなく空気を浄化する。開発にあたっては製造設計メンバーと議論を重ね、掃除機の充電台に小型脱臭フィルターを搭載。室内に置いておいても違和感のないデザインに練り上げ、収納空間を不要にした。今後、室内装飾品としてもデザイン性の向上を図るという。
全自動洗濯物折り畳み機「ランドロイド」を3月に発売するセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ(7D、東京都港区)。2018年末にはパナソニックと共同で洗濯乾燥機と融合させる。
ランドロイドはAIを用い、持ち主別に衣類を分けて畳むなど超高機能な家電を目指してきた。洗濯・乾燥機との合体により、洗濯から折り畳みまでの一連の作業を自動化する。
将来はタンスなど家具との一体化が目標だ。大和ハウス工業と共同で、部屋へのビルトイン型「ランドロイド」を20年以降に開発する計画。家族構成などを登録すれば、折り畳み後にタンスへ収納した個人の衣類情報を蓄積できる。
さらに洗濯から収納までに蓄積した衣類の情報をIoT(モノのインターネット)でつなげる。衣類の購入時に「既に同じようなデニムがある」など手助けできる。
台頭し始めた合体家電は売り場でも好調だ。「機能が一体化した家電が売れ筋」とヨドバシカメラマルチメディア館(東京都新宿区)の五十島大祐家電アドバイザーはアピールする。特に扇風機や空気清浄機など部屋に置く家電は製品の合体が進んでいるという。
空気清浄機能以外に、扇風機とファンヒーターの機能を合体したダイソンの「ダイソンピュアホットアンドクールリンク」
英ダイソンが開発した空気清浄機「ダイソンピュアホットアンドクールリンク」は、空気清浄機能以外に、扇風機とファンヒーターの機能を合体させている。温風と冷風を放出でき、春夏秋冬を通じて使える。
また「除湿・加湿・集塵・脱臭」を1台でこなすダイキン工業の空気清浄機「クリアフォースZ」も販売は好調。冬の加湿と夏の除湿の機能を一体化したほか、まとめて手入れをできる利点がある。
五十島家電アドバイザーは「一年中置いておく家電になったことで製品の見栄えを気にする消費者が増えた。そのため、メーカー各社もデザイン性にこだわっている」と分析している。
<次ぎのページ、市場の食い合い懸念>
製品別の出荷金額はエアコンや冷蔵庫などがプラスに転じた。エアコンが同2・7%増の6809億円、洗濯機が同11・4%増の3191億円、冷蔵庫は同4・7%増の4273億円と前年実績を上回った。
製品別の出荷数では、洗濯機が同5・9%増の439万7000台と5年ぶりのプラスになった。エアコンは同3・1%増の835万2000台、冷蔵庫は同2・7%増の381万5000台と両製品とも3年ぶりのプラスとなった。また、電子レンジやIHクッキングヒーターなども堅調だった。
JEMAは好調の要因について、エアコンや冷蔵庫など主力の大型製品が好調だったと分析した。17年も高機能・高付加価値製品の需要増が続きそうだとみている。
日刊工業新聞2017年1月25日
「合体」する家電
家電同士や、家電と家具の機能を合わせた「合体家電」が注目されている。家電単品の多機能化が進んでいたが、他製品の機能の代替・吸収が始まった。さらに合体家電として一体化すれば、操作や管理の手間を軽減できる。その背景には人工知能(AI)技術の進化や、共働き世帯の増加など生活の変化がある。生活に変革を起こす合体家電の動向を追った。)
「掃除をしながら空気清浄はできないか」。三菱電機デザイン研究所の四津谷瞳さんは「掃除機をかけた時に舞うホコリで、空気が汚れてしまう」という悩みを聞いた。開発したのが三菱電機のコードレスクリーナー「インスティック」だ。
掃除機と空気清浄機を合体させることで、床面清掃だけでなく空気を浄化する。開発にあたっては製造設計メンバーと議論を重ね、掃除機の充電台に小型脱臭フィルターを搭載。室内に置いておいても違和感のないデザインに練り上げ、収納空間を不要にした。今後、室内装飾品としてもデザイン性の向上を図るという。
全自動洗濯物折り畳み機「ランドロイド」を3月に発売するセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ(7D、東京都港区)。2018年末にはパナソニックと共同で洗濯乾燥機と融合させる。
ランドロイドはAIを用い、持ち主別に衣類を分けて畳むなど超高機能な家電を目指してきた。洗濯・乾燥機との合体により、洗濯から折り畳みまでの一連の作業を自動化する。
将来はタンスなど家具との一体化が目標だ。大和ハウス工業と共同で、部屋へのビルトイン型「ランドロイド」を20年以降に開発する計画。家族構成などを登録すれば、折り畳み後にタンスへ収納した個人の衣類情報を蓄積できる。
さらに洗濯から収納までに蓄積した衣類の情報をIoT(モノのインターネット)でつなげる。衣類の購入時に「既に同じようなデニムがある」など手助けできる。
空気清浄機能+扇風機+ファンヒーター
台頭し始めた合体家電は売り場でも好調だ。「機能が一体化した家電が売れ筋」とヨドバシカメラマルチメディア館(東京都新宿区)の五十島大祐家電アドバイザーはアピールする。特に扇風機や空気清浄機など部屋に置く家電は製品の合体が進んでいるという。
空気清浄機能以外に、扇風機とファンヒーターの機能を合体したダイソンの「ダイソンピュアホットアンドクールリンク」
英ダイソンが開発した空気清浄機「ダイソンピュアホットアンドクールリンク」は、空気清浄機能以外に、扇風機とファンヒーターの機能を合体させている。温風と冷風を放出でき、春夏秋冬を通じて使える。
また「除湿・加湿・集塵・脱臭」を1台でこなすダイキン工業の空気清浄機「クリアフォースZ」も販売は好調。冬の加湿と夏の除湿の機能を一体化したほか、まとめて手入れをできる利点がある。
五十島家電アドバイザーは「一年中置いておく家電になったことで製品の見栄えを気にする消費者が増えた。そのため、メーカー各社もデザイン性にこだわっている」と分析している。
<次ぎのページ、市場の食い合い懸念>