MRJ「一部門だけでは難しかった」。社長交代で本当の背水の陣

新社長は三菱重工の防衛部門トップ

 【名古屋】三菱航空機(愛知県豊山町)は2日、三菱重工業の水谷久和常務(65)が4月1日付で社長に就任すると発表した。森本浩通社長(62)は3月31日付で退任し、三菱重工特別顧問に就く。開発中の国産小型ジェット旅客機「MRJ」の納入延期を受け、防衛・宇宙ドメイン長の水谷氏が社長に就き、三菱重工の主導体制が強まる。

 水谷氏は防衛・航空部門出身。総務、法務、人事などの経験が豊富で経営・管理体制を強化する。森本社長は就任2年で退任となる。

【略歴】水谷 久和氏(みずたに・ひさかず)75年(昭50)名大経卒、同年三菱重工業入社。10年執行役員、11年取締役、13年常務執行役員、14年防衛・宇宙ドメイン長。三重県出身。


日刊工業新聞2017年2月3日



新社長は潜水艦プロジェクトなどに関わってきた


 過去20年、物差しで引いたように事業規模4000億円で推移し、営業利益率は約6%で横ばい。国の防衛予算に沿う「防衛・宇宙ドメイン」の特殊性を物語る。「重工業で防衛だけを固めたメーカーはなく、内部の人間にも刺激的だ」と取締役常務執行役員防衛・宇宙ドメイン長の水谷久和は言う。

 新防衛大綱、中期防衛力整備計画が策定され、2014年4月に防衛装備移転三原則が閣議決定。第2次安倍政権になり、増え続ける防衛費は16年度に初めて5兆円を突破する。

 事業環境は悪くない。だが、オスプレイや空中給油機など輸入装備品が防衛費をかさ上げしており、日本企業は手放しで喜べない部分もある。海外移転も平和貢献や日本の安全保障に資することが前提。多くの手順を踏み、時間はかかる。

 それでも防衛装備庁の誕生など海外との技術協力や民生用に応用する「デュアルユース技術」の開発が推進されるのは確実。三菱重工は15年4月、新事業の芽出しを目的に先端技術事業部を発足した。デュアルユース、社内の技術シナジーの創出、海外移転への対応など新機軸を練る。15―17年度までの同ドメインの数値目標を横ばいとしたが、水谷は「いつの日か2倍にしたい」と飛躍的な成長を胸に秘める。

 豪州政府が進める次期潜水艦調達計画。最大12隻新造する4兆円を超える巨額プロジェクトだ。15年8月、アデレードで日本の官民派遣団が初めて開いた現地説明会に加わった水谷は、防衛省顧問で団長を務める斎藤隆らと現地新聞に写真入りで掲載された。

 現地建造を約束する仏、独に比べて劣勢とされていた日本。密約説も流れたが、記事はおおむね好意的で、日本の積極性を評価した。潜水艦は溶接など難易度が高く、部品の大半は国内。“超”ドメスティックだが「勉強を重ねてやるだけの価値は十分にある」(水谷)という。

日刊工業新聞2016年1月20日「挑戦する企業 三菱重工業」から抜粋

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
02月03日
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 5度目の納入延期を発表した1月下旬の記者会見の場に森本社長がいなかったため、交代の噂は流れていた。
 思えば森本さんは、15年4月の着任からわずか10日後には「初飛行延期」の発表の場に主催者として登壇しなければならなかった(当時は15年4~6月に飛ばす予定だった)。MRJはその年の11月になんとか初飛行に成功したものの、結局は初飛行後に納期を2度延期した。
 その前に社長を務めた川井昭陽さんも、さらにその前の江川豪雄さんも、三菱航空機の社長は歴代、開発遅延に頭を悩ませてきた。
 先日の会見で三菱重工の宮永社長は「これだけ大規模で複雑な開発ということになると、一航空機部門だけではやはり難しかった」と語った。まさにこれまでのMRJの境遇を示している言葉だと思う。
 MRJは昨年11月からついに宮永社長の直轄プロジェクトに"昇格"している。今回は本当に背水の陣だ。

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