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介護業界で倒産急増、人手不足が深刻に

昨年は4割増
 企業倒産の減少傾向が続く中、成長産業とされてきた介護業界で倒産が急増している。東京商工リサーチによると、2016年の老人福祉・介護事業者の倒産は前年比4割増の108件と、00年の調査開始以来、最も多かった。競争激化や人手不足、介護サービスの公定価格に当たる介護報酬の引き下げが背景にあり、今後も厳しい経営が続きそうだ。

 負債総額は5割増の94億円。倒産件数の7割は従業員5人未満で、小規模事業者が目立つ。

 介護サービス分野では、00年の介護保険法施行を機に、ビジネスチャンス拡大を見込んだ異業種からの新規参入が相次いだ。厚生労働省によると、訪問介護・通所介護の施設・事業所数は15年に7万8229カ所と、00年(1万7870カ所)の4倍以上。生き残り競争は厳しく、16年の倒産の8割が訪問介護や通所介護などの事業者だった。

 また体力・精神的にきつく給与水準も低いイメージの介護業界では人手不足が恒常化。サービス提供が困難になり経営が行き詰まったケースもある。

 介護報酬改定も経営悪化に拍車を掛けた。介護報酬は介護サービスの対価として事業者が受け取るお金のことで、国が3年ごとに見直す。前回の15年度改定は総額マイナス2・27%。公費支出や利用者の自己負担が減る一方で、介護事業者の収入は減った。

 東京商工リサーチは「景気が回復する中、働き手が他業種へ流出しており、人手不足は今後も続く。小規模デイサービスなどの競争も厳しく、介護事業者の倒産件数は高止まりする可能性がある」(関雅史情報本部経済研究室課長)とみている。
                  
日刊工業新聞2017年2月2日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
「老々介護」ならぬ「老々接客」という言葉も登場、介護業界でもシニア雇用が進みつつある。もちろん介護業界の倒産は人手不足だけが問題ではない。国のお金の使い方を変えていかないと、事業としても自走できない。

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