為替政策での日本批判。トランプの真の狙いは車の対米進出か
トヨタ、1月の米国販売は大幅マイナス。首脳会談でどんなコミットが?
自動車メーカー各社が1日発表した1月の米国販売台数は総じて減少した。特にトヨタ自動車とフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は大幅な落ち込み。一方、日系では日産自動車とホンダは増加した。
調査会社オートデータによると、1月の販売台数は前年同月比1.8%減の114万台。トヨタとフィアットの販売台数はいずれも前年同月比で約11%減少。2社が大幅に落ち込んだ理由は、ガソリン安を背景としたピックアップトラックや多目的スポーツ車(SUV)など「小型トラック」へのシフト。乗用車の品ぞろえが多いトヨタは苦戦を強いられた。
米国勢もゼネラル・モーターズ(GM)が3.8%減、フォード・モーターも0.6%減少した。
トランプ米大統領が為替政策をめぐり、中国とともに日本を名指しで批判している。日本は金融緩和により円安を誘導し、米国の対日貿易赤字が拡大しているとの論法だ。米自動車メーカーのドル高是正を後押しする異例の“口先介入”といえる。ただ為替相場をドル安基調にするだけでは、米国の貿易収支の改善は難しいとみられる。また貿易収支を口実に、日本の自動車メーカーに対米進出を促すことが真の狙いとの指摘も出てきている。
日米は対照的な金融政策を背景に金利差が拡大し、為替は日本の輸出に有利な円安基調で推移。トランプ米大統領は円安・ドル高が米国の貿易赤字を拡大させたとし、足元のドル高をけん制する。
だが米国の貿易収支は、ドル安基調になれば果たして改善するのだろうか―。
ニッセイ基礎研究所の窪谷浩主任研究員は「ドル安は米国の輸出品の価格競争力を引き上げる一方、輸入品が割高になる。貿易赤字は減る方向だが、そもそも貿易収支というのは国内経済の影響を大きく受ける。堅調な米国景気は輸入を促し、貿易収支を改善するのは難しい」とみる。
その上で「米国の貿易収支を改善させる手っ取り早い方法は、同国の景気を悪化させることだ」と指摘する。
また「ムニューチン財務長官は短期的なドル高是正を認めつつ、中長期的にはドル高が国益につながると見ている。外国企業による米国への投資がドル高を招いても仕方がないとの見方だ」とし、米国の「強いドル政策」は継続されると見通す。
日本総合研究所の井上恵理菜研究員も「米国は景気回復しており、輸入を抑えるのは難しい。むしろドル安で輸入品が割高になれば米国の個人消費が減衰する。米国の成長をけん引しているのは国内総生産(GDP)の約7割を占める個人消費で、輸出ではない。消費を増やすことが同国の景気の行方を大きく左右する」とし、ドル安は米国経済にはむしろマイナス面が少なくないとみる。
他方、第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「トランプ大統領の(日系)自動車(メーカー)批判は全くフェアでない。新しい通商摩擦は、自動車分野で日本メーカーの対米進出を促すための名目であると考えられる」と分析し、「自動車産業のみに絞って国内雇用を増やしたがっているようにみえる」と指摘する。
その上で「貿易赤字を減らしたければ、シェールオイルを日本に輸出する選択肢もあろう」と付け加える。
10日の日米首脳会談で為替や貿易問題にどこまで踏み込むのか。日本はトランプ政権の真の狙いを慎重に見極める必要がある。
調査会社オートデータによると、1月の販売台数は前年同月比1.8%減の114万台。トヨタとフィアットの販売台数はいずれも前年同月比で約11%減少。2社が大幅に落ち込んだ理由は、ガソリン安を背景としたピックアップトラックや多目的スポーツ車(SUV)など「小型トラック」へのシフト。乗用車の品ぞろえが多いトヨタは苦戦を強いられた。
米国勢もゼネラル・モーターズ(GM)が3.8%減、フォード・モーターも0.6%減少した。
輸入抑制は難しい
トランプ米大統領が為替政策をめぐり、中国とともに日本を名指しで批判している。日本は金融緩和により円安を誘導し、米国の対日貿易赤字が拡大しているとの論法だ。米自動車メーカーのドル高是正を後押しする異例の“口先介入”といえる。ただ為替相場をドル安基調にするだけでは、米国の貿易収支の改善は難しいとみられる。また貿易収支を口実に、日本の自動車メーカーに対米進出を促すことが真の狙いとの指摘も出てきている。
日米は対照的な金融政策を背景に金利差が拡大し、為替は日本の輸出に有利な円安基調で推移。トランプ米大統領は円安・ドル高が米国の貿易赤字を拡大させたとし、足元のドル高をけん制する。
だが米国の貿易収支は、ドル安基調になれば果たして改善するのだろうか―。
ニッセイ基礎研究所の窪谷浩主任研究員は「ドル安は米国の輸出品の価格競争力を引き上げる一方、輸入品が割高になる。貿易赤字は減る方向だが、そもそも貿易収支というのは国内経済の影響を大きく受ける。堅調な米国景気は輸入を促し、貿易収支を改善するのは難しい」とみる。
その上で「米国の貿易収支を改善させる手っ取り早い方法は、同国の景気を悪化させることだ」と指摘する。
また「ムニューチン財務長官は短期的なドル高是正を認めつつ、中長期的にはドル高が国益につながると見ている。外国企業による米国への投資がドル高を招いても仕方がないとの見方だ」とし、米国の「強いドル政策」は継続されると見通す。
日本総合研究所の井上恵理菜研究員も「米国は景気回復しており、輸入を抑えるのは難しい。むしろドル安で輸入品が割高になれば米国の個人消費が減衰する。米国の成長をけん引しているのは国内総生産(GDP)の約7割を占める個人消費で、輸出ではない。消費を増やすことが同国の景気の行方を大きく左右する」とし、ドル安は米国経済にはむしろマイナス面が少なくないとみる。
他方、第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「トランプ大統領の(日系)自動車(メーカー)批判は全くフェアでない。新しい通商摩擦は、自動車分野で日本メーカーの対米進出を促すための名目であると考えられる」と分析し、「自動車産業のみに絞って国内雇用を増やしたがっているようにみえる」と指摘する。
その上で「貿易赤字を減らしたければ、シェールオイルを日本に輸出する選択肢もあろう」と付け加える。
10日の日米首脳会談で為替や貿易問題にどこまで踏み込むのか。日本はトランプ政権の真の狙いを慎重に見極める必要がある。
日刊工業新聞2017年2月2日