農家の期待を一身に背負ったクボタの直進キープ田植機

熟練作業者でもストレス、北海道から沖縄まで圃(ほ)場で試験を繰り返す

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直進キープ機能付き田植機の開発に携わった吉田氏㊧と石見氏
 全地球測位システム(GPS)を活用した農業機械の開発を進めるクボタが2016年9月に発売した田植機「EP8D―GS」。直進時に自動操舵(そうだ)できる機能を搭載し、未熟練者でもまっすぐに田植えが可能で熟練者も直進走行時のストレスや作業負担を軽減できる。13年に先行研究をはじめ、その後北海道から沖縄まで全国の圃(ほ)場で実証試験を繰り返した。

 現地での試験では農家が「(農作業の)シーズン外でも圃場に水を張ってくれた」(吉田和正農業機械総合事業部農機技術本部移植機技術部企画・基礎チーム長)という。直進走行による作業で苦労している農家は多く、新たな田植機への期待は大きかった。

 社内の試験とは異なり、圃場ではすべったり、タイヤに土が絡まったりして、土質により違いが出た。そこでハンドルを切るスピードやタイミングなど熟練者の動きをデータとして蓄積して機械に覚え込ませ、制御を改良して「人間的で滑らかな動きを可能にした」(石見憲一機械先端技術研究所機械研究第一部第一チーム長)。土質による違いも克服した。

 製品化の際は、半径数十センチメートル程度を検知可能で船に使われる安価な「DGPS」を採用し、慣性計測装置(IMU)との組み合わせで精度を確保。機能を絞り込み、操作は従来機に三つのスイッチを追加するだけとシンプルにし、価格を田植機本体の約10%増の範囲内に抑えた。GPSが測位不能な時やあぜへの接近時にはブザーが鳴るなど安全・安心にも配慮した。

 8条植え機のEP8D―GSは16年12月末時点で約500台を出荷。直進時の自動操舵機能を搭載しない同型田植機の15年9―12月との比較では3・75倍となった。

 反響を受けて16年11月に発売した6条植え機は約300台を出荷し、同機能のない現行機の15年11―12月の出荷実績に比べ4・8倍と出足は好調だ。今後もGPS搭載機の品ぞろえを増やし、海外展開も視野に入れる。
(文=大阪・窪田美沙)

日刊工業新聞2017年2月2日

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GPSを活用した農機「ファームパイロット」シリーズの第1弾。自動操舵による直進キープ機能により、高い精度が求められ熟練技術が必要な田植え作業の人手不足対策にも寄与する。「EP8D―GS」は苗を搭載する台を現行同型機比倍増し、苗補給時の省人化も可能にした。6条植え機投入で国内田植機市場のボリュームゾーンを攻略し地歩を固める。 (日刊工業新聞大阪支社・窪田美沙)

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