「(他社と)原子力事業を統合するメリットはある」(東電社長)
「柏崎」再稼働の必要性も強調
東京電力ホールディングスの広瀬直己社長は31日会見し、原子力事業の再編・統合について「原子力事業を続けるための体制維持や、廃炉の取り組みは各社共通の悩みであり、統合するメリットがある」と強調した。具体化に向けた他社との協議は「まだやっていない」とした。
広瀬社長は、福島第一原子力発電所の事故処理にかかる費用を捻出するには「柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、同刈羽村)の再稼働が絶対に必要だ」と述べ、早期再稼働を目指す考えを示した。
経済産業省が、東京電力ホールディングス(HD)の経営改革の一環として、同社の原子力事業を分社化させる案を打ち出した。他社との事業連携や再編を促し、収益性を高めて福島第一原子力発電所の事故処理費用を捻出させる狙いだ。経産省はこの東電改革を、電力業界全体の原子力事業再編につなげる意向とみられる。電力小売り全面自由化後の競争環境下でも原発を安定的に運用できる仕組みを整えたいとの思惑が透けて見える。
東電の事業構造改革について検討する有識者会議「東京電力改革・1F問題委員会」が25日に開いた会合で経産省が示した案によると、4月に分社化した火力発電、電力・ガス小売り、送配電の各事業と同様に原子力事業部門を分社化し、東電HDの傘下に置く。福島第一原発の廃炉や除染、損害賠償にかかる費用が想定していた11兆円より大幅に膨らむ見通しの中で、外部との連携による原子力事業の効率化や再編を促し、事故処理の原資を捻出する狙いだ。
東電グループはすでに火力発電関連事業を中部電力と統合することを決め、2015年4月に設立した折半出資会社のJERA(東京都中央区)への事業移管を進めている。経産省はこれと同様な取り組みを期待する。
さらに経産省は電力業界全体の原子力事業再編も狙う。東電HDなど沸騰水型軽水炉(BWR)を保有するグループと、関西電力など加圧水型軽水炉(PWR)を保有するグループに集約する案が取り沙汰されている。
小売り全面自由化後の競争激化や、東日本大震災後の規制強化に伴う安全対策費用の増大といった逆風が吹く中でも、原発を安定して活用できる仕組みを整えるためだ。業界関係者の間では、東電HDの原子力事業分社化を「引き金にしようといった思惑がある」との見方が強い。
ただ、実質国有化されている東電グループとの事業連携には課題がある。利益の多くが配当として東電側に吸い上げられ、事故処理の費用に回されれば連携のうまみが減る。
中部電は火力発電関連の事業統合に際して「事故処理の負担を当方が負わないことで、東電側と合意した」(広報担当)が、同委員会から事故処理への協力を求められた場合、拒否すれば世論の反発を生みかねない。各社がこうしたリスクに直面する中での事業再編の先行きは不透明だ。
(文=宇田川智大)
広瀬社長は、福島第一原子力発電所の事故処理にかかる費用を捻出するには「柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、同刈羽村)の再稼働が絶対に必要だ」と述べ、早期再稼働を目指す考えを示した。
日刊工業新聞2017年2月1日
経産省、業界横断の事業再編に照準
経済産業省が、東京電力ホールディングス(HD)の経営改革の一環として、同社の原子力事業を分社化させる案を打ち出した。他社との事業連携や再編を促し、収益性を高めて福島第一原子力発電所の事故処理費用を捻出させる狙いだ。経産省はこの東電改革を、電力業界全体の原子力事業再編につなげる意向とみられる。電力小売り全面自由化後の競争環境下でも原発を安定的に運用できる仕組みを整えたいとの思惑が透けて見える。
東電の事業構造改革について検討する有識者会議「東京電力改革・1F問題委員会」が25日に開いた会合で経産省が示した案によると、4月に分社化した火力発電、電力・ガス小売り、送配電の各事業と同様に原子力事業部門を分社化し、東電HDの傘下に置く。福島第一原発の廃炉や除染、損害賠償にかかる費用が想定していた11兆円より大幅に膨らむ見通しの中で、外部との連携による原子力事業の効率化や再編を促し、事故処理の原資を捻出する狙いだ。
東電グループはすでに火力発電関連事業を中部電力と統合することを決め、2015年4月に設立した折半出資会社のJERA(東京都中央区)への事業移管を進めている。経産省はこれと同様な取り組みを期待する。
さらに経産省は電力業界全体の原子力事業再編も狙う。東電HDなど沸騰水型軽水炉(BWR)を保有するグループと、関西電力など加圧水型軽水炉(PWR)を保有するグループに集約する案が取り沙汰されている。
小売り全面自由化後の競争激化や、東日本大震災後の規制強化に伴う安全対策費用の増大といった逆風が吹く中でも、原発を安定して活用できる仕組みを整えるためだ。業界関係者の間では、東電HDの原子力事業分社化を「引き金にしようといった思惑がある」との見方が強い。
ただ、実質国有化されている東電グループとの事業連携には課題がある。利益の多くが配当として東電側に吸い上げられ、事故処理の費用に回されれば連携のうまみが減る。
中部電は火力発電関連の事業統合に際して「事故処理の負担を当方が負わないことで、東電側と合意した」(広報担当)が、同委員会から事故処理への協力を求められた場合、拒否すれば世論の反発を生みかねない。各社がこうしたリスクに直面する中での事業再編の先行きは不透明だ。
(文=宇田川智大)
日刊工業新聞2016年10月28日