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小池都政半年、猪瀬直樹氏はどう見たか

「政策が良い意味で政局になっていくことはよい」
小池都政半年、猪瀬直樹氏はどう見たか

猪瀬氏

 東京都の小池百合子知事が2日で就任半年になる。就任直後から五輪会場見直し問題や築地市場の豊洲移転問題を手始めに、都庁職員の働き方など含め、さまざまな改革を進めてきた。2017年度予算編成を経て、小池カラーを打ち出した東京都中期計画『都民ファーストでつくる「新しい東京」―2020年に向けた実行プラン―』が始動する。元東京都知事で現在は大阪府・大阪市特別顧問なども務める猪瀬直樹氏に、これまでの小池都政について聞いた。

 ―半年間の小池知事の評価は。
 「今のところうまくいっている。当初は“都議会の冒頭解散”という言葉を出すぐらい不信任案を出されるかもと危機感があったが、それを乗り切ってきた。17年度予算案は都議会公明党の協力も得て通る。7月の都議選で勝てば政策をどんどん打ち出してやっていけるだろう。これからは政策が問われる」

 ―予算案の中で特に評価する点は。
 「総額1380億円を計上した待機児童対策は評価する。保育士不足解消に向けた給与引き上げは、国もやっているが都も人材確保することがまず重要だ。施設だけ建てても保育をする人がいないと意味がない。小規模保育をさらに展開することになったのもよかった」

 ―慣例だった政党復活予算(200億円)を廃止し、編成したことについては。
 「よくやったと思う。拙著『東京の敵』で指摘した通りだが、200億円のうち、かなりの部分が都議会自民党のドンによる働きかけで一度通らなかったものが通り、その積み重ねがドンの力の源泉になってきた。それを絶ったのだから」

 ―豊洲市場問題は。
 「地下水モニタリング調査で基準値の79倍のベンゼンが暫定値で検出されたからといって感情的になってはいけない。再調査結果が出る3月まで静観するしかないが、いずれどこかでピークアウトすると思う。政局と政策は矛盾してはいけない。政策が良い意味で政局になっていくことはよい。アンビバレンツだが、そこをどう越えていくかになる」

 ―小池知事に期待することは。
 「祝祭である3年半後の東京五輪・パラリンピック大会の成功。人間は祭りがあるから生きていける。近代合理主義だけでは語れない。交通体系は出勤のピークシフトなどいろんなやり方を考えてあるからそれをやっていけばいい。それより大事なのは救急車も入れないような木造住宅密集地域をどうするのか。無電柱化に絡めてやってもらいたい」
(聞き手=大塚久美)
日刊工業新聞2017年2月1日「深層断面」から一部抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
猪瀬氏が指摘しているように待機児童対策は最も評価されるべきだろう。東京都は「認可保育園」と「無認可保育園」の間に東京都独自の基準で「認証保育所」がある。「認証保育所」への補助を厚くして認可との保育料の差を埋めるようにした。保育業界は既得権益の塊で、そこに切り込んだのも小池さんとそのサポートメンバーだからできたこと。ニュースイッチのファシリテーターの安東さんや、鈴木亘氏(学習院大学経済学部教授)など都顧問の人たちが政策立案に関わっている。

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