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患者と医師の“依存関係”を変える時がきた

医療・介護の大改革に臨む
  わが国の保険医療は少子高齢・人口減少社会に臨んで持続困難なことから、2013年8月にまとめられた社会保障制度改革国民会議の報告書に則り、医療介護総合確保推進法などによって大胆な改革が進められています。

 また、13年6月に閣議決定された「日本再興戦略」では、健康・医療を成長戦略の中核とし、先端研究振興、新産業創出、国際展開、雇用創出などのけん引役として位置付け、医療を国民負担から成長の切り札へとパラダイムシフトさせています。

 民間活力で保健・医療を補完することによって保険医療の守備範囲や内容が大きく変わろうとする現在、医療機関の改革と併せて国民にも受療行動の変容が求められる時代です。

 国民会議報告書の最初には「医療は自助を基本としつつ自助および自助の共同化としての共助で対応できない場合に公助が補完する」とあります。

 医療の権利的側面が取り上げられることの多い今日、義務としての自助の確認は意義あることだと思います。生活習慣病のように発症・進展に自身の関与が大きく影響する疾病もありますし、そもそも自らの主体的関与なくしては医療は成り立ちません。

 また、報告書には医師業務をチーム医療によって分業化し、効率的な医療提供を求めています。病院は組織を介して継続的に医療提供できることが特徴ですが、実情は個人の職能や医師への依存が大きく、組織力を発揮できずに効率が悪いと言われています。

 医療提供者側は分業を推進する一方で、患者さんも受療行動を変えて医師だけに依存した医療からの脱却が求められています。

 さらに、病院の共助も必要でしょう。経営の異なる病院間で医療提供に必要な機器や運営の仕組みの共通化を図れば、医療連携の推進や病院経営の合理化は大きく進むと考えます。

 共通化の対象は、医薬品、診療材料、医療消耗器具、備品などの材料、医療機器から組織運営の諸規定まで多岐にわたります。電子カルテのようなシステムはその恩恵が大きいでしょうし、医療の質向上にも貢献すると思われます。

 医療はその公益性ゆえにさまざまな規制と独占があるのですから、経営の独立性と運営の共通化を両立することは可能だと思います。むしろその先の質向上や特徴を競うべきでしょう。

 医療を受ける人も医療を提供する側も、自助と共助に努めてわが国の医療を支えることが重要な時代です。
(文=野村幸史・医療法人財団慈生会 野村病院理事長) 
日刊工業新聞2017年1月27日
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
国の医療費は40兆円を突破し、膨張し続けている。患者が望む病院を自由に受診できるアクセス性の良さは日本の医療の良い点だが、何でもかんでも医者に頼るという発想は変えていかないといけない。医療機関の選別・淘汰も進めていかないといけないだろう。

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