「桃の天然水」などサントリーブランドに? サントリー食品、ジャパンビバレッジ買収
業界1位の日本コカ・コーラ台数に肉薄。「鳥井社長」の手腕試される
サントリー食品インターナショナルは25日、日本たばこ産業(JT)の自動販売機子会社、ジャパンビバレッジホールディングス(東京都新宿区)の株式などをJTから約1500億円で買収すると発表した。これにより、サントリー食品は自社の自販機約49万台に、ジャパンビバレッジの26万台が加わり合計75万台体制となる。八十数万台を超える業界1位、日本コカ・コーラの台数に肉薄する。飲料自販機の中で2強体制が一段と強まりそうだ。
サントリー食品が買収するのはジャパンビバレッジ株式のJT持ち分(約70・5%)に加え、自販機会社のジェイティエースター(千葉市中央区)、ジャパンビバレッジエコロジー、缶コーヒーブランド「ルーツ」や「桃の天然水」ブランドが含まれる。
サントリー食品は2014年度に約1兆2500億円だった売上高を、20年度には2兆円に伸ばす経営目標を掲げている。会見で鳥井信宏社長は「飲料事業でざっと1000億円の売り上げ増加要因になる」と述べた上で、国内飲料事業が過当競争により売り上げ増が望みにくい実情を挙げ、“時間”のためにM&Aを実施したことを強調した。
加えて、JTの自販機はオフィスビル内の設置が多く、カップ機や給茶機、コーヒーマシンなど自販機以外も展開している。こうした強みを生かし、屋外自販機以外のオフィスビルや工場、学校などにルートを広げるとともに、サントリー食品が持つ濃縮飲料や容器技術を生かし、売り上げ増と高付加価値化を図る考え。
買収したルーツと桃の天然水ブランドは、JTが9月末で生産販売中止を決めている。サントリー食品の小郷三朗副社長は「両ブランドとも固有のファンが多くついている」とし、販売中止後なるべく早い時期にサントリーのブランドとして復活させる考えを示した。
【JTの強み、技術・宣伝力で活用】
サントリー食品インターナショナルが買収を決めたジャパンビバレッジの純資産は約580億円。売上高は14年3月期で1593億円、営業利益は28億円。「高い」と関係者が指摘する今回の買収の裏には、同業他社との買収合戦がある。
ジャパンビバレッジの買収にはアサヒグループホールディングスやキリンホールディングスなど競合飲料大手も関心を示していた。アサヒの自販機台数は約28万台で、キリンの台数は同25万台。ジャパンビバレッジの台数がこのどちらかに流れても買収企業が台数ベースでは2位に躍り出る。アサヒやキリンはサントリーや日本コカ・コーラとの差が開いたことで、今後は自販機ごとのパワーマシン化や物流合理化、商品戦略など軌道修正を迫られそうだ。3位グループの新たな再編につながる可能性もある。
買収を決めたサントリーは規模のメリットや買収効果を収益に早期に反映させていくことが求められる。飲料の自販機経由の売り上げは約3割を占めるが、特売が日常化するスーパーや、いれたてコーヒーがあるコンビニエンスストアとの競合もあり、円安・原料高の中で収益環境は厳しい。
業界1位の日本コカ・コーラとの差を縮めるとともにトップになるには、買収で手に入れたJTの多様な強みをサントリー食品の技術力と宣伝力で活用することが求められる。
【サントリーHD「鳥井社長」実現への試金石に!?】
昨年10月にローソン会長だった新浪剛史氏をサントリーホールディングス(HD)の社長として外部から招聘した。新浪氏は「50歳前とまだ若いサントリー食品インターナショナルの鳥井信宏社長への禅譲を円滑にするための中継ぎ役ではないか」との見方が関係者の間では強い。
鳥井信宏氏は鳥井信一郎前社長の長男。現会長の佐治信忠氏は自分を社長に引き上げた信一郎氏に恩義を感じていると言われ、鳥井信宏氏が50代前半になるころをめどに新浪氏からバトンを渡すシナリオが既定路線ともいわれている。
昨年には蒸留酒大手の米ビームを1兆6000億円で買収。佐治氏がM&Aを陣頭指揮した。2020年までに現在6000億円の蒸留酒売り上げを1兆円にするため、「新たなM&Aも辞さない」(佐治会長)。酒類は佐治・新浪コンビ、そして飲料の成長戦略は鳥井氏の役割になる。今回、その布石が打たれた。
サントリー食品が買収するのはジャパンビバレッジ株式のJT持ち分(約70・5%)に加え、自販機会社のジェイティエースター(千葉市中央区)、ジャパンビバレッジエコロジー、缶コーヒーブランド「ルーツ」や「桃の天然水」ブランドが含まれる。
サントリー食品は2014年度に約1兆2500億円だった売上高を、20年度には2兆円に伸ばす経営目標を掲げている。会見で鳥井信宏社長は「飲料事業でざっと1000億円の売り上げ増加要因になる」と述べた上で、国内飲料事業が過当競争により売り上げ増が望みにくい実情を挙げ、“時間”のためにM&Aを実施したことを強調した。
加えて、JTの自販機はオフィスビル内の設置が多く、カップ機や給茶機、コーヒーマシンなど自販機以外も展開している。こうした強みを生かし、屋外自販機以外のオフィスビルや工場、学校などにルートを広げるとともに、サントリー食品が持つ濃縮飲料や容器技術を生かし、売り上げ増と高付加価値化を図る考え。
買収したルーツと桃の天然水ブランドは、JTが9月末で生産販売中止を決めている。サントリー食品の小郷三朗副社長は「両ブランドとも固有のファンが多くついている」とし、販売中止後なるべく早い時期にサントリーのブランドとして復活させる考えを示した。
【JTの強み、技術・宣伝力で活用】
サントリー食品インターナショナルが買収を決めたジャパンビバレッジの純資産は約580億円。売上高は14年3月期で1593億円、営業利益は28億円。「高い」と関係者が指摘する今回の買収の裏には、同業他社との買収合戦がある。
ジャパンビバレッジの買収にはアサヒグループホールディングスやキリンホールディングスなど競合飲料大手も関心を示していた。アサヒの自販機台数は約28万台で、キリンの台数は同25万台。ジャパンビバレッジの台数がこのどちらかに流れても買収企業が台数ベースでは2位に躍り出る。アサヒやキリンはサントリーや日本コカ・コーラとの差が開いたことで、今後は自販機ごとのパワーマシン化や物流合理化、商品戦略など軌道修正を迫られそうだ。3位グループの新たな再編につながる可能性もある。
買収を決めたサントリーは規模のメリットや買収効果を収益に早期に反映させていくことが求められる。飲料の自販機経由の売り上げは約3割を占めるが、特売が日常化するスーパーや、いれたてコーヒーがあるコンビニエンスストアとの競合もあり、円安・原料高の中で収益環境は厳しい。
業界1位の日本コカ・コーラとの差を縮めるとともにトップになるには、買収で手に入れたJTの多様な強みをサントリー食品の技術力と宣伝力で活用することが求められる。
【サントリーHD「鳥井社長」実現への試金石に!?】
昨年10月にローソン会長だった新浪剛史氏をサントリーホールディングス(HD)の社長として外部から招聘した。新浪氏は「50歳前とまだ若いサントリー食品インターナショナルの鳥井信宏社長への禅譲を円滑にするための中継ぎ役ではないか」との見方が関係者の間では強い。
鳥井信宏氏は鳥井信一郎前社長の長男。現会長の佐治信忠氏は自分を社長に引き上げた信一郎氏に恩義を感じていると言われ、鳥井信宏氏が50代前半になるころをめどに新浪氏からバトンを渡すシナリオが既定路線ともいわれている。
昨年には蒸留酒大手の米ビームを1兆6000億円で買収。佐治氏がM&Aを陣頭指揮した。2020年までに現在6000億円の蒸留酒売り上げを1兆円にするため、「新たなM&Aも辞さない」(佐治会長)。酒類は佐治・新浪コンビ、そして飲料の成長戦略は鳥井氏の役割になる。今回、その布石が打たれた。
日刊工業新聞社2015年05月26日 3面に加筆