コンデンサー商機は取り逃さない!太陽誘電、国内外の全19工場をIoT化
生産システムの刷新、電子部品業界で広がる
太陽誘電は2018年度までに、国内外の全19工場を対象にIoT(モノのインターネット)技術を導入する。投資額は生産設備の刷新を含め約300億円。IoTで設備の稼働状況を分析して無駄な作業や故障などを抑制し、生産効率を高める。電子部品は製品サイクルが短く、IoTを使った生産効率化の巧拙が競争力を上げる一助となりそうだ。
同社が主力とする積層セラミックコンデンサー(MLCC)は18年以降にアルミ電解コンデンサーの置き換え需要が本格化する見通し。この需要増に備え、国内外の生産体制を刷新し商機をつかむ。
まず国内にある四つの基幹工場に対し、IoTに対応した生産管理システムを構築する。数十億円を投じて、事業別だった生産管理システムを統合。全製品の工程の監視を可能にする。さらに、人的ミスの傾向や設備の故障の癖、生産のバラつきといった情報を集めて分析し効率化に生かす。
このシステムに対応した設備をマレーシアなど海外工場から順次導入する。18年までに全工場の設備をIoT対応に切り替え、生産管理システムと連動させて運用する。
同社のマレーシアや中国などの海外工場は設備が陳腐化して生産効率が低下していた。そこで需要増に備えて大規模な設備投資に踏み切る。
電子部品業界ではIoTの活用が広がりつつある。TDKは17年内に国内の基幹工場と海外拠点を一括管理できる生産システムを構築する計画を打ち出した。村田製作所も生産現場のIoT化を進めており、自社の無線通信技術などを応用し、現場から抽出する情報を精査している。
【第一電子部品事業部製造部長兼玉村工場長 青柳卓司氏】
太陽誘電は、製品のライフサイクル全体にわたる効率化やIoT(モノのインターネット)化を進めている。主力のコンデンサーを製造する玉村工場(群馬県玉村町)は、管理システムの強化のほか、製品ごとにラインを区分けするなど工夫を重ねている。今後はそうしたノウハウを海外工場への横展開し、人材育成などに生かす。第一電子部品事業部製造部長兼玉村工場長の青柳卓司氏に課題など聞いた。
―主力品を製造する工程の課題は。
「基本的には設備が12時間近く自動で稼働するなど、人が介在する工程は時間的には少ない。ただ電子部品の生産設備は、ミクロンオーダーで製品をつくるため、設備一つひとつの癖や誤差からも影響を受けてしまう。そのため、特注品や自社改造品なども多い。また、機械の設定や測定に関しては、機械の癖を踏まえて扱う必要があり、作業員の“職人の技”にどうしても依存してしまう」
「しかし、近年は着実に自動化も進み、検品作業は六つの方向に設置されたカメラが1分間で1000個単位で検査するようになっている。一層の高効率生産に向け、センサーの設置などの投資もしていきたい」
―設備と人材の配置バランスが重要です。
「民生用ライン、車載向け専用ラインは、設備も人材も完全に分けている。11年ごろから車載向け事業に本格参入し、車載向け専用ラインを設けることで、比較的早い段階で取引につなげた。今後も車載市場は20年までに30兆円へと伸びるとされている。期待は大きい」
―海外工場への横展開は。
「民生用のハイエンド製品や車載向け製品の製造ではまだまだ玉村工場が中心だ。横展開はまず人材育成から始めている。工程ごとに数十人ほど出向させている。それ以外にも1年で数回、60人ほどが出張し、タブレット端末で教えるなど対面で教育している」
―新しい取り組みは。
「新工法もいくつか生まれている。先端商品への対応も進んでいる。17年内には産機向けなどで1000マイクロファラッドの電解コンデンサーの量産化に着手する。フィルムコンデンサーに代わる新規創出需要は1000億円とされている。この分野への期待も大きい」
(文=渡辺光太)
同社が主力とする積層セラミックコンデンサー(MLCC)は18年以降にアルミ電解コンデンサーの置き換え需要が本格化する見通し。この需要増に備え、国内外の生産体制を刷新し商機をつかむ。
まず国内にある四つの基幹工場に対し、IoTに対応した生産管理システムを構築する。数十億円を投じて、事業別だった生産管理システムを統合。全製品の工程の監視を可能にする。さらに、人的ミスの傾向や設備の故障の癖、生産のバラつきといった情報を集めて分析し効率化に生かす。
このシステムに対応した設備をマレーシアなど海外工場から順次導入する。18年までに全工場の設備をIoT対応に切り替え、生産管理システムと連動させて運用する。
同社のマレーシアや中国などの海外工場は設備が陳腐化して生産効率が低下していた。そこで需要増に備えて大規模な設備投資に踏み切る。
電子部品業界ではIoTの活用が広がりつつある。TDKは17年内に国内の基幹工場と海外拠点を一括管理できる生産システムを構築する計画を打ち出した。村田製作所も生産現場のIoT化を進めており、自社の無線通信技術などを応用し、現場から抽出する情報を精査している。
日刊工業新聞2017年1月25日
「玉村工場」にみる生産現場の今
【第一電子部品事業部製造部長兼玉村工場長 青柳卓司氏】
太陽誘電は、製品のライフサイクル全体にわたる効率化やIoT(モノのインターネット)化を進めている。主力のコンデンサーを製造する玉村工場(群馬県玉村町)は、管理システムの強化のほか、製品ごとにラインを区分けするなど工夫を重ねている。今後はそうしたノウハウを海外工場への横展開し、人材育成などに生かす。第一電子部品事業部製造部長兼玉村工場長の青柳卓司氏に課題など聞いた。
―主力品を製造する工程の課題は。
「基本的には設備が12時間近く自動で稼働するなど、人が介在する工程は時間的には少ない。ただ電子部品の生産設備は、ミクロンオーダーで製品をつくるため、設備一つひとつの癖や誤差からも影響を受けてしまう。そのため、特注品や自社改造品なども多い。また、機械の設定や測定に関しては、機械の癖を踏まえて扱う必要があり、作業員の“職人の技”にどうしても依存してしまう」
「しかし、近年は着実に自動化も進み、検品作業は六つの方向に設置されたカメラが1分間で1000個単位で検査するようになっている。一層の高効率生産に向け、センサーの設置などの投資もしていきたい」
―設備と人材の配置バランスが重要です。
「民生用ライン、車載向け専用ラインは、設備も人材も完全に分けている。11年ごろから車載向け事業に本格参入し、車載向け専用ラインを設けることで、比較的早い段階で取引につなげた。今後も車載市場は20年までに30兆円へと伸びるとされている。期待は大きい」
―海外工場への横展開は。
「民生用のハイエンド製品や車載向け製品の製造ではまだまだ玉村工場が中心だ。横展開はまず人材育成から始めている。工程ごとに数十人ほど出向させている。それ以外にも1年で数回、60人ほどが出張し、タブレット端末で教えるなど対面で教育している」
―新しい取り組みは。
「新工法もいくつか生まれている。先端商品への対応も進んでいる。17年内には産機向けなどで1000マイクロファラッドの電解コンデンサーの量産化に着手する。フィルムコンデンサーに代わる新規創出需要は1000億円とされている。この分野への期待も大きい」
(文=渡辺光太)
日刊工業新聞2017年1月19日