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百貨店、6兆円割れの深刻。各社の改革はかけ声倒れ?

36年ぶり。「構造改革のスピードを進めないといけない。時間はない」
 日本チェーンストア協会が23日に発表した2016年の全国スーパーマーケットの売上高は13兆426億円で、既存店ベースでは前年比0・4%減と2年ぶりに前年を割った。食料品は相場高の影響で同1・1%増だったが、衣料品は同5・2%減、住関品は同2・0%減と季節商品の不調が響き、いずれもマイナスだった。

 井上淳専務理事は17年の消費動向について「節約志向は続いており、株価や為替などの要素が心理的影響を及ぼす可能性がある」と述べた。

 16年12月の既存店売上高は前年同月比2・0%減で、3カ月ぶりにマイナスだった。足元の17年1月は初売りの好調が寄与し、前年を上回る見通しだ。

 16年の百貨店の売上高は2年連続の前年割れとなる5兆9780億円で、36年ぶりに6兆円を割り込んだ。近内哲也日本百貨店協会専務理事は、足元の状況は株高が寄与して美術品などの高額品に動きが出ているとしたうえで、「構造改革のスピードを進めないといけない。時間はない」と危機感をにじませる。

 日本フランチャイズチェーン協会がまとめた16年のコンビニエンスストアの売上高は10兆5722億円で、既存店ベースでは前年比0・5%増だった。単身世帯や働く女性が増えたことで、個食や中食のニーズが高まっている点を反映している。
                 

日刊工業新聞2017年1月24日



百貨店はもはや「負の遺産」なのか?


 「百貨店市場の縮小は不可避」。セブン&アイ・ホールディングス(HD)の井阪隆一社長はこう断言する。同社はエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングに、そごう・西武(東京都千代田区)の関西3店舗を譲渡する。そごう・西武や三越伊勢丹ホールディングス(HD)は、店舗閉鎖を決めた。訪日外国人旅行者(インバウンド)による免税売上高が予想外に落ち込み、各社が2016年度の業績予想を相次いで下方修正するなど、急激な事業の見直しを迫られている。

売り上げピーク時の2割


 「今の段階では『負の遺産』と言われるかもしれないが、傘下に入れた(鈴木敏文前会長ら)前執行部が間違っているとは思わない」。百貨店事業について、井阪セブン&アイ・HD社長はこう話す。同社は06年に、ミレニアムリテイリング(現そごう・西武)を完全子会社化した。

 しかし、9月末に閉鎖したそごう柏店(千葉県柏市)では売り上げがピーク時の2割に落ち込むなど、百貨店事業の業績は低迷している。セブン&アイ・HDは店舗閉鎖や希望退職募集などの構造改革を急いでいる。百貨店事業の16年3―8月期営業損益は18億円の赤字で、前年同期より9億円悪化した。

 井阪社長は「他社の話で恐縮だが」と前置きした上で、「関東圏でナンバーワンブランドの三越伊勢丹も(三越の)千葉店を閉鎖せざるを得ない。一方、私どものそごう千葉店は営業利益率4%程度を上げている。小さなエリアでも一番店と二番店の差が出るのが百貨店業界」と評する。

“奇策”と“格式”


 大丸松坂屋百貨店(東京都江東区)を傘下に持つJ・フロントリテイリングの山本良一社長は「百貨店が『あるべき論』で成長できるなら、そうすべきだ。しかし過去50年間の成功体験が否定されている中、変えるべきものは変えていかないといけない」と語気を強める。同社は「新百貨店モデルの構築」を掲げており、東急ハンズやポケモンセンターなどのテナントを主力店に導入してきた。

 こうした“奇策”は来店喚起策とはいえ、百貨店の強みである“格式”が損なわれかねない。しかし、山本社長は「ミスマッチは起こしていない。ショッピングセンター(SC)と百貨店を区切ることへのこだわりはない」と言い切る。

 高島屋は連携に活路を見い出す。ロイヤリティマーケティング(東京都渋谷区)と提携し、19日に共通ポイント「ポンタ」のサービスを全国の店舗に導入した。1月にはNTTドコモと業務提携しており、高島屋の木本茂社長は「アライアンスを深掘りしている。カンフル剤としてやっていく」と説明する。百貨店が単独で飛躍を目指すのは困難だ、という現実もかい間見える。

高級路線は一等地限定モデル


 松屋は16年度に開始した中期3カ年計画で、「銀座を極める」を掲げている。銀座の旗艦店について、上質でデザイン性が高い商品をそろえるなど、「スペシャリティーストア」の構築を目指す。秋田正紀社長は「銀座といえば松屋、と想起される存在になる」と意気込む。ただ、高級路線の磨き上げは東京では銀座や新宿、大阪では心斎橋などの一等地にのみ通用するモデルともいえる。

 百貨店はもはや「負の遺産」なのか―。今、存在意義が問われている。
(文=江上佑美子)

日刊工業新聞2016年10月21日


日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
百貨店の6兆円割れは深刻。各社これではいけないと思いつつ改革が掛け声倒れになってしまったのでは。ほんとうにビジネスモデルを変える気でやらないと。もう時間はない。

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