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日本人の33%は二日酔いになりやすい理由

二つの酵素活性が影響、“悪者”には発がんリスクも
 「今日は寒いので帰りにちょっと一杯!」最高ですね。しかし翌日に“飲みすぎで体調がよくない”なんてことがありませんか? 

 お酒は中世まではクスリとして用いられており、「酒は百薬の長なり」と言われるゆえんです。お酒でいろいろな病気を治療してきた経緯から適度な量は健康に効果があると言われています。

 もちろん適量を超えると“クスリ”ならぬ、さまざまな“リスク”になることは、皆さんがご存じの通りです。

 適量は人によってさまざまです。この差はお酒の主成分エタノールの代謝に関係しています。エタノールは肝臓にあるADHという酵素でまずアセトアルデヒドに代謝され、さらにALDHという酵素で酢酸に代謝されます。

 エタノールは高揚感をもたらし、“気持ちいい状態を演出する物質”です。一方、アセトアルデヒドは頭痛や吐き気、胃痛、悪寒などの悪酔い症状を起こします。翌日もこの症状が残れば“二日酔い”です。つまり二つの酵素活性の程度で、酒を楽しく飲めるか否か、強いか弱いかが決まるわけです。

 両者が高活性の人は、分解速度が速く、飲んでもなかなか酔わないタイプで日本人の約50%を占めています。ADHが高活性、ALDHが低活性の人は最悪で、アセトアルデヒドが残りやすく少量でも二日酔いになりやすいタイプで、約33%います。

 その逆は約4%で少量のお酒で機嫌よく酔い、二日酔いが軽いお得な体質です。ただし、気付かぬうちに血中アルコール濃度が限界を超え、記憶を失いやすいのでご注意を。両活性とも低い人は約3%存在し、飲めると勘違いしやすいタイプです。ちなみにお酒が全く飲めないALDH非活性の人が日本人には約7%存在します。いわゆる下戸と言われる人です。

 “悪者”であるアセトアルデヒドは発がんにも関係していると言われています。例えば食道がんではALDH低活性型の人は、活性型の人と比べて食道がんリスクが3―16倍高く、飲酒量が多いほどその影響は強いという報告があります。

 飲酒後に顔が赤くなる人(フラッシング反応)は、このALDH活性が低いタイプなので要注意です。楽しく健康的なお酒は、血中濃度0・1%程度のほろ酔いまでです。例えば、体重65キログラムでアルコール度数5%のビール500ミリリットルを2本飲むと、血中濃度0・09%になります。酔いの進み方に個人差はありますが、いずれにしても適量が一番です。
(文=齋藤整・東京リバーサイド病院院長)
日刊工業新聞2015年10月30日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
自分は約7%の人に入ります。

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