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グリーの復活はゲームかVRか。田中社長インタビュー

グリーの復活はゲームかVRか。田中社長インタビュー

田中良和会長兼社長

 ―近年、スマートフォン向けゲームに力を注いでいます。
 「2014年から開発などの体制を整え、ウェブゲーム中心からシフトしてきた。16年の『ポケモンGO』の登場により、市場も明るい兆しが見えている。ポケモンGOをきっかけにスマホゲームを始めた人もおり、次にやるゲームを探しているというニーズは必ずある。新しい利用者の開拓よりも既存の利用者にアプローチする」

 ―具体的なアプローチ方法は。
 「ゲームに限らず、どんなものも手軽に始めて、利用するうちに、複雑さや高度さを求めていくという傾向があると思う。当社の強みはカジュアルなゲームよりも、少し複雑なロールプレーイングゲーム(RPG)だ。それが既存の利用者の取り込みにつながると考える」

 ―ゲーム以外の事業を続々と立ち上げました。
 「旅行やヘルスケアなどゲーム以外の分野向けにインターネットを活用したサービスを立ち上げたほか、広告事業も展開している。その中でも住宅関連の情報を提供するサービスと広告事業が好調で、注力していく領域。またインターネット動画が注目されているので、動画を生かした事業が展開できないか模索中だ。具体的な目標値はないが、ゲーム以外の事業で売り上げの半分を占める規模にしていきたい」

 ―16年に始めた仮想現実(VR)事業の状況は。
 「コンテンツ開発と、VR企業向けの投資ファンド、VRの認知度を高めるための訴求活動の三つの軸で進めている。ビジネスとして成り立つには、まだ時間はかかる。専用端末が普及しなければ希望が持てない。その普及には、もう少し機能が洗練されなければいけないと感じている。ただスマホは、対話アプリ『ライン』のようなキラーコンテンツが現れたことで一気に普及した。VRでも、こうした現象が起こる可能性はある。それに乗り遅れないように、しっかり準備する」

 ―海外のゲーム事業はいかがですか。
 「各国でニーズが違うので、専用スタジオで開発したアプリを提供している。17年からは、日本でヒットしたゲームをそのまま海外で提供するということに挑戦する。日本の漫画やアニメーションのファンが増えたように『日本のゲームが好き』というニーズが出てきた。欧米のこうしたニーズだけでも、ある程度の規模が期待できる。1タイトルをリリースし、状況を見ながら展開していく」

【記者の目・主力のゲーム事業復活を期待】
「釣りスタ」などウェブゲームで存在感を示してきたグリー。スマホアプリへのシフトが若干遅れたことで、12年6月期をピークに売上高減少が続く。VRなど新規事業を立ち上げたが、まずは主力のゲーム事業での復活を期待したいところだ。開発体制が整ったスマホアプリでどれだけヒット作を増やせるかがカギとなる。
(文=松沢紗枝)
日刊工業新聞2017年1月23日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
16年6月期の売上高はピークだった12年から約6割減ったグリー。一方でモバイルゲーム企業の中で最も積極的にVRに取り組んでいるのは確かだろう。ソーシャルゲームで共に先陣を切ったディー・エヌ・エーは一足早く業績の回復軌道に乗っていたが、キュレーションメディア事業で企業のブランドは大きく傷ついた。田中社長、グリーはこの数年、あまり派手なことはせずゲームやVRの基盤を強化してきた印象だが、このインタビュー自体からは次の成長への確信を感じるまでに至らなかった。

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