ドラッカーが提唱、「2枚目の名刺」の生かし方

日本で「パラレルキャリア」は広がるか

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情報サイトを運営する田中伶さんはインフォテリアの名刺も持つ
 「働き方改革」の一環として、企業の副業規定の緩和が俎上(そじょう)に乗っている。二足のわらじを履く働き方は今に始まったことではないが、デジタル変革の進展により、時間や場所にとらわれない新しい働き方が続々と登場。本業を持ちながら別の仕事や社会貢献を行うことで、スキル向上や使命感の達成を目指す「パラレルキャリア」という考え方も浸透しつつある。

 パラレルキャリアは経営学者のピーター・ドラッカー氏が提唱した概念。日本ではなじみにくかったが、終身雇用制が崩れる中で状況は一変。自由な働き方を好むIT業界ではパラレルキャリアが進行している。

 情報発信メディアを企画・運営する田中伶(れい)さんもその一人。「オンライン上で勉強会などを主催することもあるが、一番勉強になっているのは私。日々の仕事のすべてが自分の資産になっている」と語る。

 田中さんは大学時代に就職活動支援のコミュニティーを立ち上げ、卒業後に起業。現在は台湾関連の情報発信サイトを運営する一方で、有料制サイト向けに、学生時代から続けているビジネス書の紹介コンテンツを配信している。

経営者が請負契約


 こうした個人事業主としての仕事に加え、2016年夏からパラレルキャリアとして、インフォテリアの名刺を持つことになった。

 きっかけは「オウンドメディア(一般企業が運営する情報発信サイト)を立ち上げたい」という平野洋一郎インフォテリア社長からの相談だった。当時、インフォテリアではその道の専門家を探していたが、社員では適任者が見つからず、田中さんに白羽の矢を立てた。

 田中さんにとっては突然の申し出だったが、実は平野氏は田中さんのブログなどのファンで、腕前を知った上での依頼だった。そんな経緯もあって、話はトントン拍子で進み、契約上は「請け負い」という形でメディアプランナーとして籍を置くことになった。

 請負契約はソフトウエア開発では一般的だが、スタッフ系での契約は同社にとって初めて。「上場会社なので、学生や主婦など一般の人から、いろいろな問い合わせがある。オウンドメディアを通してファンを作りたいと思った」(インフォテリア広報担当)という。
インフォテリアでの出勤日程は自由


 オウンドメディアでは企業のホームページのように製品そのもののアピールではなく、身近な話題や興味をひくテーマを題材としてコンテンツを作る。独自案件を取材したり、著名人にインタビューしたりすることもある。

 「従来の情報提供では伝わっていなかった人に会社のビジョンに合ったメッセージを語りかけていく」(田中さん)。そこが腕の見せ所になる。インフォテリアとはページビュー(PV)至上主義ではなく、メッセージ性のあるものを発信することで合意し、準備に入っている。

 「新しい仕事で求められることは多いが、ストレッチし(背伸びをして)付いていけば、すごいものができていることがある」(同)とも。二足のわらじで全力疾走しながら、パラレルキャリアを楽しんでいる。

日刊工業新聞2017年1月20日

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

「パラレルキャリア」はそれがプラスになる人とマイナスにる人と極端にわかれるのではないか。それは個人だけに限らず会社側のプラスマイナスにも直結する。田中さんのような立場やキャリアならいくつも名刺を持つことはできるが、ごく一般の社員となるとまだまだハードルが高い。

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