クラウドファンディングは地方創生の救世主になるか?
政府、「ふるさと投資」早期普及を促す
インターネットを通じて小口の資金を集めるクラウドファンディングの手法を地方創生に生かす「ふるさと投資」が動きだす。政府は早期普及を狙い、地方自治体や地域金融機関向けに法制度や先進事例をまとめたガイドラインを5月中旬に策定。地域活性化を促すツールとして活用してもらう。都市から地方へ、さらには地域内での新たな資金循環を促すこの仕組み―。地域資源を生かした町おこしの観点ばかりでなく、地域経済を支える中小企業の新たな資金調達手段として広がるか注目される。
【主な手段】
「ふるさと投資」の主な手段であるクラウドファンディングは、インターネットを通じて個人から少額の資金を調達する仕組み。資金提供者がリターンとして何を期待するかによっていくつかのバリエーションがある。
「投資型」の場合は投資した事業の売上高や利益が一定水準に達すれば分配金を受けることができる。
寄付型は、地方自治体への寄付を促す「ふるさと納税」の投資版であり、事業者が返礼として資金提供者に自社製品を贈りファンを増やしたり、マーケティングに活用したりすることもできる。いずれも銀行融資と異なり、すぐには元利支払いの義務が生じないため、収益が上がるまで時間がかかる新事業にじっくり取り組んだり、中長期的な視点で産業育成に活用できる利点がある。
政府が目指す「ふるさと投資」と一般的なクラウドファンディングとの最大の違いは、地域の実情に詳しい自治体や地域金融機関との連携・調和を重視している点だ。自治体はそれぞれの地域振興策との調和を図りながら、応援したい企業やプロジェクトのテーマを設定。普及のためのプロモーションを担うだけでなく、ファンド組成を後押ししたり、投資先の育成支援など直接、間接を問わず多様な関わりが期待されている。
【融資先の獲得】
他方、金融機関にとっては「ふるさと投資」を通じて、地元企業が育てば新たな融資先の獲得につながる。地方銀行の一部などでは、事業実績の乏しさやリスクの高さから融資に踏み切りにくい創業間もない企業に対する成長資金の一環として、クラウドファンディングを位置づける動きもある。政府は、金融検査マニュアルの運用明確化に伴い、一定の条件を満たす匿名組合出資方式の小口投資ファンドも「資本性借入金」とみなすことが可能となったことを引き合いに「クラウドファンディングとの協調融資が広がることを期待する」(内閣府)と話している。
「ふるさと投資」の旗振り役となる連絡会議には5月時点で地方自治体、金融機関など151団体が名を連ねている。今後は、資金を集めやすくするための税制改正をはじめ、施策充実を働きかけることにしている。
「ふるさと投資」は、事業者の「思い」に賛同して出資者が事業を応援する“意思あるおカネ”の側面が強いことから、地域住民のプロジェクトへの参画意識を高めるツールとして、すでに活用している自治体もある。
【兵庫県/起業支援に】
政府の動きに先駆けて、すでに「ふるさと投資」を県内中小企業の支援策に活用している兵庫県―。成長が見込まれる企業のビジネスプランに小口投資を募る事業を2014年度から始めている。公募で選ばれた9件のプロジェクトのうち、これまでに4件が「ふるさと投資」の枠組みで事業資金の調達を果たした。
プロジェクトは地域の農林水産資源を生かした商品開発が中心だが、モノづくりでの付加価値向上を目指す取り組みもある。その一つ、鞄(かばん)の生産地である豊岡市の老舗企業は、豪華鉄道車両「ななつ星」のデザイナーと組んで、世界一のキャリーバッグ作りに挑んでいる。
【熊本県/メガソーラー】
県民から出資を募りメガソーラーを運営する「県民発電所構想」を進める熊本県では、太陽光発電所の建設費用の一部に当たる5000万円をクラウドファンディングで調達。現在も募集中だ。また地元企業を支援する枠組みの中に、金融機関やベンチャーキャピタル(VC)と並び、クラウドファンディングの運営会社の参加を求めている。
地域資源を活用した事業の掘り起こしや商品の付加価値向上など、クラウドファンディングならではの特性が発揮される場合には積極的に活用する方針だ。熊本県の小野泰輔副知事は「直接投資の機会が少ない地方の中小企業にとって有望な手法。ふさわしい案件を発掘することが重要になる」と話している。
【岡山県/森林整備に】
森林整備にクラウドファンディングを活用するユニークな取り組みが注目されるのは岡山県の北東部にある西粟倉村―。市町村合併を選択せず小規模自治体として生きる独自路線を選んだ同村が目指すのは豊かな森林資源を生かした地域活性化。荒廃が進む人工林を効率的に整備するには、施業・管理面積の大規模化を進め効率的に行う必要があると考えた。
その際に必要となる高性能な林業機械の購入費用約5000万円をクラウドファンディングで調達した。投資対象となる事業者はこの設備を森林組合に貸し出し、そこから得られるレンタル収入や村からの販売支援報酬の一部を出資者に分配する仕組みだ。
当初は林業機械の購入にファンドを活用していいものか議論があったいう。だが単に資金を外部から調達するのではなく、小口出資に限定することで「全国から西粟倉村を知ってもらい、長く付き合ってもらえるファンを増やす」(上山隆浩西粟倉村産業観光課長)狙いで踏み切ったという。
実際、投資家ツアーなどを通じ「交流人口の増加に効果がみられる」(上山課長)いう。都市部からの移住や林業への新規参入につながれば、まさに政権が目指す「地方創生」と合致する。
【主な手段】
「ふるさと投資」の主な手段であるクラウドファンディングは、インターネットを通じて個人から少額の資金を調達する仕組み。資金提供者がリターンとして何を期待するかによっていくつかのバリエーションがある。
「投資型」の場合は投資した事業の売上高や利益が一定水準に達すれば分配金を受けることができる。
寄付型は、地方自治体への寄付を促す「ふるさと納税」の投資版であり、事業者が返礼として資金提供者に自社製品を贈りファンを増やしたり、マーケティングに活用したりすることもできる。いずれも銀行融資と異なり、すぐには元利支払いの義務が生じないため、収益が上がるまで時間がかかる新事業にじっくり取り組んだり、中長期的な視点で産業育成に活用できる利点がある。
政府が目指す「ふるさと投資」と一般的なクラウドファンディングとの最大の違いは、地域の実情に詳しい自治体や地域金融機関との連携・調和を重視している点だ。自治体はそれぞれの地域振興策との調和を図りながら、応援したい企業やプロジェクトのテーマを設定。普及のためのプロモーションを担うだけでなく、ファンド組成を後押ししたり、投資先の育成支援など直接、間接を問わず多様な関わりが期待されている。
【融資先の獲得】
他方、金融機関にとっては「ふるさと投資」を通じて、地元企業が育てば新たな融資先の獲得につながる。地方銀行の一部などでは、事業実績の乏しさやリスクの高さから融資に踏み切りにくい創業間もない企業に対する成長資金の一環として、クラウドファンディングを位置づける動きもある。政府は、金融検査マニュアルの運用明確化に伴い、一定の条件を満たす匿名組合出資方式の小口投資ファンドも「資本性借入金」とみなすことが可能となったことを引き合いに「クラウドファンディングとの協調融資が広がることを期待する」(内閣府)と話している。
「ふるさと投資」の旗振り役となる連絡会議には5月時点で地方自治体、金融機関など151団体が名を連ねている。今後は、資金を集めやすくするための税制改正をはじめ、施策充実を働きかけることにしている。
「ふるさと投資」は、事業者の「思い」に賛同して出資者が事業を応援する“意思あるおカネ”の側面が強いことから、地域住民のプロジェクトへの参画意識を高めるツールとして、すでに活用している自治体もある。
【兵庫県/起業支援に】
政府の動きに先駆けて、すでに「ふるさと投資」を県内中小企業の支援策に活用している兵庫県―。成長が見込まれる企業のビジネスプランに小口投資を募る事業を2014年度から始めている。公募で選ばれた9件のプロジェクトのうち、これまでに4件が「ふるさと投資」の枠組みで事業資金の調達を果たした。
プロジェクトは地域の農林水産資源を生かした商品開発が中心だが、モノづくりでの付加価値向上を目指す取り組みもある。その一つ、鞄(かばん)の生産地である豊岡市の老舗企業は、豪華鉄道車両「ななつ星」のデザイナーと組んで、世界一のキャリーバッグ作りに挑んでいる。
【熊本県/メガソーラー】
県民から出資を募りメガソーラーを運営する「県民発電所構想」を進める熊本県では、太陽光発電所の建設費用の一部に当たる5000万円をクラウドファンディングで調達。現在も募集中だ。また地元企業を支援する枠組みの中に、金融機関やベンチャーキャピタル(VC)と並び、クラウドファンディングの運営会社の参加を求めている。
地域資源を活用した事業の掘り起こしや商品の付加価値向上など、クラウドファンディングならではの特性が発揮される場合には積極的に活用する方針だ。熊本県の小野泰輔副知事は「直接投資の機会が少ない地方の中小企業にとって有望な手法。ふさわしい案件を発掘することが重要になる」と話している。
【岡山県/森林整備に】
森林整備にクラウドファンディングを活用するユニークな取り組みが注目されるのは岡山県の北東部にある西粟倉村―。市町村合併を選択せず小規模自治体として生きる独自路線を選んだ同村が目指すのは豊かな森林資源を生かした地域活性化。荒廃が進む人工林を効率的に整備するには、施業・管理面積の大規模化を進め効率的に行う必要があると考えた。
その際に必要となる高性能な林業機械の購入費用約5000万円をクラウドファンディングで調達した。投資対象となる事業者はこの設備を森林組合に貸し出し、そこから得られるレンタル収入や村からの販売支援報酬の一部を出資者に分配する仕組みだ。
当初は林業機械の購入にファンドを活用していいものか議論があったいう。だが単に資金を外部から調達するのではなく、小口出資に限定することで「全国から西粟倉村を知ってもらい、長く付き合ってもらえるファンを増やす」(上山隆浩西粟倉村産業観光課長)狙いで踏み切ったという。
実際、投資家ツアーなどを通じ「交流人口の増加に効果がみられる」(上山課長)いう。都市部からの移住や林業への新規参入につながれば、まさに政権が目指す「地方創生」と合致する。
日刊工業新聞 5月25日中小・ベンチャー・中小政策面